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ガチャ962回目:新種登場

「ここが3層かー」


 降りて来た場所は、縦幅2メートル、横幅3メートルの滅茶苦茶に狭い通路型の階層だった。幸い、降りてすぐの安全地帯はちょっとした広場になっているが、薄暗い洞窟のような見た目で足場も悪い。こんなゴツゴツとした見た目の場所ではテントもまともに建てられないだろうな。

 うん、上で拠点構えて正解だった。まあ、最初の広場に関しては天井も高いから、やりようによってはいけるだろうけど……見た目からじゃなく、この空間にいるだけで圧迫感を感じるこの感覚がある以上、この階層では休まった気にならないだろうな。

 この階層のコンセプトは、閉所恐怖症か? それに患っていなくても、圧迫感を常に感じるのは苦痛だな。


「ショウタ様、感じられますか?」

「ああ、狭いところに閉じ込められたかのような圧迫感を常に感じてる」

「この階層はそういうところなのです。ですが、これでも最初の頃に比べるとマシになりましたが」

「というと?」

「こちらの強さに応じて、感じる圧迫感も変化するようです。レベル50前後の冒険者では、呼吸も困難になるレベルで圧迫感を感じてしまうのです」

「そりゃまた……」


 酷いデバフだ。てことは、第一層や第二層でも、似たようなデバフを受けてたんだろうか? 暗闇が怖くなるだの、高所が怖くなるだのといった感じで……。


「こんなに狭いと、剣を振り回すのには向いてないな。かといって格闘も微妙だし、槍や戦槌といった長物もダメだ。となれば、弓か……」


 ああ、そういやアレがあったな。

 長らくの間武器庫で眠っていたソレを取り出した。


「ん。それ、懐かしいね」

「ああ。こういう狭い空間だと散弾銃は効果覿面だろ。何が相手かは知らないけども」


 名称:魔導銃クイーン・デトネーター

 品格:≪固有≫ユニーク

 種別:銃器

 武器レベル:45

 説明:女王の力が刻印されたダブルバレルのショットガン。使用者の魔力を10消費して専用の散弾が生成可能。また、魔力を100消費した場合、散弾数が3倍となる特殊弾も生成可能。装填は手動で行う必要がある。装備者の腕力と器用に大幅ボーナス。 


「『固有(ユニーク)』なのが玉に瑕ですが、性能面ではこの場所で一番真価を発揮しそうですわね」

「流石の判断ですね」

「以前に保管庫の中身は見せてもらいましたけど、勇者様がそれを使うの、初めて見ますっ!」

「『ハートダンジョン』産だっけ? レベルと格は低くても、優秀な性能してるわよね」


 第四層にいた女王アリの宝箱に入っていた逸品だったはず。性能は良いけど、そんなに言うほど使った事はなかったんだよな~。


『本体の格が低くても御主人が作る弾丸なら、強くなったりしないかの?』

『お姫様、それは『幻想(ファンタズマ)』に許された特権だと思われます』

『むむ、残念なのじゃ~』

「とりあえずこれで行こう。テレサ、ここは迷路式か?」

「はい、そうです」

「なら、左手沿いだなー。アズ、ここの所要攻略時間はどの程度になりそうだ?」

『3時間前後じゃないかしら♪』

「OK」


 早速攻略開始だ。


『ジュルルル……』

「おおっ!?」

『プル~!?』


*****

名前:アシッドスライム

レベル:78

腕力:320

器用:1100

頑丈:1200

俊敏:200

魔力:1000

知力:100

運:なし


(パッシブ)スキル】硬化Ⅱ、物理耐性Ⅱ、魔法耐性Ⅱ、斬撃耐性Lv2、貫通耐性Lv2、打撃耐性Lv2

★【(エクス)スキル】自動増殖、自動融合、強酸Ⅱ、フルイドスプレッド


装備:なし

ドロップ:アシッドスライムの核

魔石:大

*****


 俺たちの目の前に、たった1体で通路を半分くらい圧迫している緑色のスライムが現れた。大きさとしては俺のよく知るスライムと巨大スライムの中間くらいの大きさだが、この巨体にこのレベル、通常モンスターにしてはやけに強いな。

 しかし、ここに来て初めてのスライムだと!? うっわ、テンション上がるー!!


『ププルプル!?』

『……』

『プルーン……』

「話は通じないみたいだな。まあ、イリスはモンスターじゃないんだし、当然っちゃ当然か」

『プルル』


 スライム博士(自称)としては、新しいスライムの挙動は一挙手一投足見逃したくないところだが、今ここには遊びにではなく攻略に来てるんだよな。残り時間も少ない以上、とっとと狩りまくって時間を延長させなければならない。

 そう判断して銃口を相手に向けるが、スライムはプルプルと全身を震わせた。


「ん?」


 なんだ、知らない挙動だぞ。

 初めて見る行動に興味が勝ち、ついトリガーにかけた指の力を弱めてしまった。


「いけませんっ!」


 そう言ってテレサが俺とスライムとの間に入り、盾を構えた。


『ブルルルルル!』


 アシッドスライムは全身を震わせながら、ぐるんと回転をして自身の粘液を周囲にばら撒き始めた。その粘液に触れた壁や地面が焼け溶ける音とともに異臭を発したとこから見て、強酸をばら撒いたのか。

 そんな酸をテレサは盾で全て弾き飛ばし、一滴たりとも背後にいる俺たちには通さなかった。盾でカバーできない範囲もスキルによる応用で膜を張ったみたいだな。いやー流石うちのチームのメイン盾。頼りになるね。


「防御手段があるからといって、油断は禁物ですよ、ショウタ様」

「ああ、悪い。助かった」


 俺は早速、粘液をばら撒き小さくなったスライムに向け、銃弾をぶっ放した。そして核を失ったスライムは、煙となって消えていった。……核にさえ当たれば良いなら、弓の方が良いか? いやでも、核に当てずに散弾によるダメージで倒せるかどうかも、やっぱり知っておきたいよな~……。

 うん、早撃ちで誤魔化すか。

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