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ガチャ959回目:慢心厳禁

「んじゃ、コイツには新武器の試運転相手になってもらうかね」


 俺は武器庫から偽・四神装備の1つ『偽・白虎爪』を取り出した。レリックウルスラグナと違って、こっちには破損の心配はほとんど不要だからな。多少暴れても問題はないだろう。

 まあタマモがいるし、もし壊れても替えの武器を用意してもらう事はできるんだろうけど、どうにも何度か使っているうちにあの武器にも愛着が湧いちゃったからな。今までも使って来た武器群は部屋の武器ラックに飾っているし、本物が手に入ったらあのレリックも飾ってやりたいよなぁ。

 できる限り大事にしていきたいな。


「よし、来い!」

『グルルゥ……!』


 『マッドネスリザード』は槍を主体に尻尾攻撃を繰り出したり、距離が空けば即座に身体を丸めて突撃してきたりと、豊富な攻撃パターンで楽しませてくれた。その一つ一つに拳や足で対処し、丁寧に受け流し、時には反撃する。

 そうして一通り試運転に満足した俺は、思いついた技を試してみる。


「『神速・迅雷脚』」!


 雷の力を宿した蹴りを、神速で繰り出すという技だ。やってることは単純な話なのだが、その威力は絶大だった。この技を受けたリザードは、身体の半分が蹴り破られた事で巨大な穴が開き、その傷口の大半は黒く焼け焦げている。

 恐らく、纏った雷の力がその身を炭化するほどに焼いたんだろう。恐ろしい技を思いついてしまったものだ。


「拳より脚技の方が威力が高くなるという話をどこかで聞いたような気がするが、本当だったな」


【レベルアップ】

【レベルが148から152に上昇しました】


 強化されていたからか、ちょっとレベルの上り幅が大きめだったかな。

 そしてレアⅡも無しと。

 とりあえず宝箱は回収だな。


 名称:第二の罪(裏)

 品格:なし

 種類:宝箱

 説明:第二の罪が封じられた宝箱。開けることはできない。


 これも変わらずと。


「テレサ~」

「はい、ショウタ様」

「正直このダンジョン、ぬるいんだけど……俺の気のせい?」

「あはは……。実は私も、こんなに簡単で良いのかなって思っていました」


 まあテレサも、出会った当初はレベルが数百程度でしかなかったけど、今や1000を超える超越者だもんな。彼女としても昔は脅威を感じていた相手が、全く警戒の必要もないくらいヌルく感じるのは、当然かもしれない。


「勇者様にしてみれば、罠が罠として機能していませんし、モンスターも脅威ではないですもんね」

「せめてレアⅡやレアⅢが出て来てくれるのであれば、ショウタ様も張り合いがあるのでしょうけれど……。この調子では望めませんね」

「でも、テレサにとって本番はあの階層以降なんだよね? あたしとしてはあまり来てほしくはないけど……」

「そうですね。あの階層の先は全くの未知ですし、油断はしない方が良いかとは思います。ショウタ様もですよ?」

「ん。ショウタ、慢心ダメ。足元掬われちゃうよ」

「……そうだな。気を付けるよ」


 全員と順番にハグして気を落ち着ける。

 まあまだ浅層、たったの2層目だしな。2層目でレベル140のレアが来てる時点で、上澄みなのは間違いないし、絶望するにはまだ早い。てか、この地に来てから俺の中のテンション感のようなものが普段と違う気がするんだよな。天使顕現事件もそうだし、やっぱり何かしらの影響を受けているのは間違いない。こういうのは大体寝れば治るとは思うし……そうだな。


「この階層の攻略が終わったらさっさと休んでイチャついてから寝るか~」

「ん。それ大事」

「頑張りましょう!」

「残るはコンドルの宝箱と罠ね」

「というか、そもそもどうやって上に戻るの?」

「隠し階段くらいはありそうですわ」

「ん。岩壁の中とか?」

「手あたり次第は骨が折れますよ?」


 皆の視線がアズと俺を行き来した。まあ、ネタバレといえばネタバレだしな。

 俺のマップには地上に戻る階段らしきものは映っていない以上、隠されているか、そもそも存在しないかのどちらかなわけだが。とりあえず地元民に聞いてみるか。


「テレサ、そういうのは見つかってないんだよな?」

「はい」

「壁伝いに移動する事を余儀なくされる環境下で尚、見つかってないんだよな?」

「そうなります」

「ふむ。……アズ」

『なーに?』


 今までは避けてきたが、俺の体調が万全なのか俺自身よくわかっていない状態だからな。ちょっとだけ答えを聞くとするか。


「あるかないかだけ教えてくれ」

『んふ。在るわよ♪』

「それだけ聞ければ十分だ。エンリル」

『ポ~?』


 呼ばれたエンリルが腕にとまる。彼に地図を見せつつ、指示を出していく。


「こことここ、それからこことここ。計4カ所のこの壁一帯に風を放って、通過する壁が存在しないか調べて来てくれ。有無にかかわらず4カ所全て調べてから戻って来てくれ。雑魚は引き連れて構わん」

『ポ!』


 エンリルが勢いよく飛び出していくのを見送りつつ、アズが不思議そうに聞いて来た。


『マスター。どうしてそのポイントなの?』

「この階層、地上を外壁ギリギリに配置している関係上、遊びが無いんだよな。だから空間の余白もほとんどない。けど、4カ所存在する曲がりくねったポイントだけは、内部に通路を作る余裕があるんだよな。だからこの4つだ」

『ふ~ん♪』


 1人答えを知るアズがニマニマし、他の嫁達はドキドキと結果を待った。


『ポー!』


 そして十数分ほど経過したところで、エンリルは答えと一緒に無数のモンスターの群れを引き連れてやって来た。


『ポ! ポポ!』

「そうか。4カ所すべてにあったか」


 これは朗報だ。

 さて、まずは雑魚を殲滅するか。

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