ガチャ955回目:カウントプラス
「さて、どうするかだが……その前に、今現地時間で何時だ?」
「20時頃ですね」
まだバチカンに到着して3時間しか経ってないのか。飯もくったばっかだしなぁ。
「皆まだ眠くないだろうし、この階層は今日中に終わらせちゃうか」
皆がこくりと頷くのを見届けていると、見知らぬ人間達が視界に入った。装備の感じからして、例の聖者教育局の人達かな? 向こうも俺の視線に気付くと、慌てて膝をついてきた。初対面なのに。
……ああ、そういえば神職関係者には常時後光というかオーラが視えていて、それで跪きたくなるんだったな。さっきの御使いアピール事件で忘れてたけど、俺ってデフォルトでそうせざるを得ない空気感を纏ってるんだった。。
そう思っていると、テレサが彼らに率先して近付いた。
「あなた方がここの担当員なのですね。お勤めご苦労様です」
「テレサ様、おかえりなさいませ。こちらがお預かりしていたものです」
「はい、確かに」
テレサが受け取ったものは、俺も見覚えのあるものだった。
そう、『ダンジョンカウンター』だ。
「直近で使用されたのはいつ頃ですか?」
「2時間ほど前です。その際の残り時間は、5時間22分でした」
「なるほど。では改めて使用してみましょう。ショウタ様、お使いになられますか?」
「いやー、ゲットしたは良いけど使い方がよく分からないんだよねー」
入手直後は起動していたから残り時間が見えたけど、遊ぶことなくしまっちゃったからな。『機械ダンジョン』クリア後の記者会見が終わった後も、アイラ経由ですぐにサクヤさんに送ったし、結局使い方を覚える間もなく俺の手を離れた。まあ、適当に触ってれば分かるだろうけど。
『ダンジョンカウンター』の見た目は、簡単に言えば円柱型の小さな機械だ。1リットル程度の黒い水筒みたいな感じかな。そこにボタンがいくつかついていて、それをなんかすればなんとかなるんだろうけど……。別にそこまで使い方に興味は無いしな。
「というわけで、慣れてるであろうあなた方にお願いしますよ」
「使徒様の命とあらば!」
信心深いなぁ。聖者教育局の人達って皆こうなんだとしたら、さっきは本当にやりすぎたかもしれないな。
そして彼らは『ダンジョンカウンター』を地面に設置すると、本体についてるボタンをぽちりと押した。すると機械から光が発射され、ダンジョンの壁に激突。光が戻り、機械の内部に収納されると数字が浮かび上がった。
【ダンジョンNo.666】
【残り:008:33:56】
「8時間33分……。伸びています!」
「第一層のモンスターを150ずつ程度と、レアモンスターも倒したからなぁ。でもそんなもんか」
「それでも、私達の行動だけで5時間ほど伸びているのは凄い事ですよ、勇者様!」
「ん。一眠りするくらいの時間は確保できてる」
ミスティは相変わらずだな。さっき起きたばかりじゃないか。
『でも、休む時間の確保は重要よ、マスター♪』
『そうですそうです。こんな変なダンジョンで長く戦っていては、心が疲れちゃいます。マスター様が気を休める時間くらいは、あってしかるべきですっ』
『御主人は働き過ぎなのじゃ~』
「まあでも、8時間じゃ心休まらないし、このままこの階層は終わらせちまおう。『ダンジョンカウンター』は、どうする?」
「私が責任もって預かっておきます。ここにも電波塔は設置させて頂きましたから、残り時間の共有も可能ですっ」
「そうか。じゃあその役目は任せたぞ」
「はいっ!」
さて。
改めて第二層を見渡してみる。左右に続く狭い道と、空飛ぶモンスター。そして崖道の先は霧によってか先が見渡せず、対岸の様子は分からない。そして崖下にも大地らしきものが広がっているが、あれは果たして存在する空間なのかどうか。
「……一発入れれば分かるか。10倍マジックミサイルーっと」
『……ドゴォ!』
発射されたミサイルが着弾すると、崖下の大地が爆ぜる様子が見て取れた。ちゃんと爆発した以上、当たり判定はちゃんとあって、行き来を防ぐ境界線バリアのようなものも張られてない訳だ。
となれば、あの下にも何かあると見て良いだろう。
「テレサ、あの下って降りた人いる?」
「はい。降りようとした者ならいますが、いずれも帰ってきませんでした」
「あらま」
「それに、10メートルほど降り始めたところで、飛翔するモンスター達の感知範囲に入るのか、強襲を受けてしまうのです。そして命綱などを集中的に攻撃するといった報告もあります」
「なるほど、行かせたくない訳だ」
モンスターって基本的に単一の行動しか果たせない連中が多いのに、そこまで指示できるのか。……それができる特殊なボスが支配している可能性もあるが、もしかしたらこのダンジョンに、『知恵の実』があったりするのかもな。
『グァ!』
『グァ!!』
などと考えていると、先程の爆発を聞き付けたのか周囲のモンスターが集まって来ているようだ。その数は100を優に超えているが……問題は、こいつらの対処ではなくて、このままではドロップが崖下に落ちそうなところだよな~。
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