ガチャ953回目:殺意トラップ
「まあ謎が多いが……とりあえず開けられないみたいだし、アズ。仕舞っておいて」
『はーい♪』
そうして俺達は電車ごっこの続きをしながら最初のホールを抜け、次の空間へとやって来た。
「ふーむ……。ここも似たような造り、というか全く同じっぽいな。モンスターが違うだけで」
「そうなのですね」
「バチカン的にこの階層はどういう風に認識されてたんだ?」
「真っ暗闇の中、四方からモンスターが襲ってくるため、不慣れな者は左手の壁沿いに進むようにしています。帰りも同じようにしているので、行きと帰りの人員で衝突事故が起こる事もありませんから」
「なるほどな。こうも暗いと、気配が読めなきゃ敵か味方か判断し辛いもんな」
「それに騒いでしまうと、それだけでモンスターをおびき寄せてしまいますから。そこで戦闘になれば更にモンスターを連鎖的に呼んでしまいます。なるべく静かに行動を起こす必要があったんです」
「あれ、じゃあこのエリアって、普段もそうだけどあんまり狩りはされてない感じ?」
「はい。以前からもそうだったのですが、『ダンジョンカウンター』の登場以降、この階層は特にカウントへの影響が少ない事が判明したため、余計に避けられるようになりました」
「なるほど」
費用対効果が薄いし危険も伴う以上、ここで消耗するより第二層以降に行った方が良いと判断した訳か。
「じゃあ、第二層以降って、こういう暗闇とかはないんだ?」
「はい。ですがそれも、私が辿り着いた階層までは……と注釈が付きますが」
「なるほどね」
彼女の話に納得し、改めて次のモンスターを視てみる。ここにいるのは、形状からして人型っぽいが……。さっきの犬と同様に鼻息が荒い気がする。二足歩行なだけで、犬系のモンスターか?
*****
名前:ワイルドコボルト
レベル:32
腕力:270
器用:440
頑丈:420
俊敏:160
魔力:500
知力:300
運:なし
【Pスキル】身体強化Lv1、剣術Lv1、盾術Lv1
【Aスキル】吸血Lv2
★【Eスキル】狼の嗅覚、血の衝動、飢餓衝動
装備:コボルトの剣、コボルトの盾
ドロップ:血の牙
魔石:中
*****
ステータスは『頑丈』と『俊敏』が入れ替わってるだけで、ほとんど狼と一緒だが、スキル構成が武具持ち用の物にカスタマイズされてるな。んで、嗅覚は健在だから絡まれ方も対処方法も同じと。
皆にも口頭で共有の上、指示を出す。
「さっき同様に蹴散らそう」
そうしてコボルトを蹴散らし100体討伐を完了させると、今度は出口近辺にそれは現れた。
「宝箱っぽいな。けど、相変わらずその周辺に罠っぽい何かがあるなぁ」
『御主人、それはどういう反応なのじゃ?』
「んー……。なんというか、踏んだら発動する系のトラップって感じだろうか。それが宝箱の周囲を取り囲んでる。宝箱はさっきみたいに回収すればいいけど、あの位置にあると邪魔でしょうがないんだよな」
「ねえショウタ。それ、あたしのブラマダッタで破壊しようか?」
「ああ、そういや罠破壊能力があるんだっけ」
シャルは自分とこのダンジョンの罠もそれでぶっ壊したって話をしていたな。結果、シャルがブラマダッタを取得したダンジョンは、今や危険なんてほとんど残ってないハリボテダンジョンと化しているそうだが。
「罠を壊すのも視てみたいけど、それはそれとして発動したらどうなるかも気になるよな」
「ふふっ、ショウタならそういうと思ってたわ」
「はは。じゃあまずはエンリル、回収を頼む」
『ポ!』
エンリルが回収し、飛んでくる宝箱を視る。
名称:第一の罪(裏)
品格:なし
種類:宝箱
説明:第一の罪が封じられた宝箱。開けることはできない。
「書いてることは同じと。んじゃ……シャル、ミスティ。隣においで」
「分かったわ」
「ん」
両隣に来た2人の腰を抱き、2人には目を閉じてもらいつつ『視界共有』を掛ける。これで2人とも、俺と同じように罠を直視できるようになったはずだ。
「ん。あれが罠? 円形だね」
「宝箱を中心に、二重にトラップ? 卑劣な罠ね」
「とりあえずミスティ、外側の罠に一発銃弾ぶちかまして。シャルはもしも発動後に常時起動するタイプの面倒な罠だった場合に備えて、用意しておいて」
「ん、分かった」
「了解よ。ちなみにモンスターが湧くタイプだったら?」
「狼やコボルトだったら即時破壊、レアモンスターっぽいなら10体くらいまでに留めといて」
「OK」
「んじゃ、やっちゃって」
『パンッ!』
乾いた銃声が鳴り、俺の視えている罠に寸分の狂いもなく着弾する。隣に立っているとはいえ、高さも射角も違う俺の視線に合わせて射撃できるのは本当に凄いな。俺もたぶんできるだろうけど、ここまで狙った位置に当てられる自信はちょっとないかも。
そして罠はしっかりと発動したようで、宝箱があった場所を取り囲むように無数の棘が地面から出現。棘は2メートルくらいの高さにまで伸び、一帯を串刺しにした。
「はー……。だいぶ殺意高めの罠だな」
あれは確かに嫌な予感がするのも仕方がない。
「ん。でもショウタなら大丈夫そうに思えるけど、嫌な予感したの?」
「ああ、あの棘を見てると背筋がゾワッとするというか、多分ダメージ通ってたんじゃないかな」
『……マスター。あれ、恐らくだけどここのダンジョンボスによる遠隔攻撃みたいな扱いだと思うわ。あれからはそれくらいの力の波動を感じるもの』
「マジで?」
ダンジョンボスからの、階層を跨いだ遠隔攻撃か……。それはまた、俺が嫌な予感をするのも頷けるな。あの威力と警戒度からして、そのダンジョンボスとやらは、最低でもレベル500くらいはありそうな気がするぞ。
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