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ガチャ951回目:最初の闇

「おお……?」


 ダンジョンに入って最初に抱いた感想は、暗闇だった。いや、これは暗闇なんて生易しいものではない。完全な闇だ。『暗視』のスキルは発動しているはずなのに、何も見えないということは、光が存在できない空間なのだろう。

 『全感知』をフル稼働させてみれば、そこに組み込まれているスキルの内の半分である『気配感知』『生体感知』『魔力感知』『魔力定位』はしっかりと反応し、俺の近くにある仲間達の気配はしっかりと感じられるし、ちゃんと呼吸音も聞こえてくる。


「テレサ、この階層は視界を奪ってくるんだな?」

「はい、その通りです」

「初手から視界を奪ってくるとは、中々にいやらしいな……。けど、残念な事に俺には効かないんだよな」


 俺は今までの修業の中で、目を瞑って戦うなんて真似もこなして来たし、スキルに頼らない気配を読む方法もマスターしてきた。今更視界が潰されたところでどうってことはないし、こんな空間でも視界が奪われただけで、眼の機能そのものが奪われた訳ではない以上、活路は他にもあった。


「『解析の魔眼』。これのおかげで、暗闇だろうとこのエリアの存在が数字という形でしっかりと表現されるんだよな。……まあ、この数字の羅列は、どれが何なのかは、ちょっと慣れる必要があるけども。アズも使えるな?」

『ええ♪』


 ここに来る前、アズとイズミ、それからシルヴィにはあり余った共有ポイントを使って色々と分け与えてみた。その結果がこれだ。


・ショウタ:魔力超回復LvMAX(4P)、魔力超回復LvMAX(4P)、スキル生成(7P)

・アズ:アトラスの縮図(7P)、視界共有Ⅱ(5P)、解析の魔眼Ⅲ(6P)、魔力超回復LvMAX(4P)

・イズミ:アトラスの縮図(7P)、硬化Ⅹ(1P)、テイムX(3P)、魔力超回復LvMAX(4P)、天罰の剣Ⅴ(6P)、解析の魔眼Ⅲ(6P)

・シルヴィ:アトラスの縮図(7P)、天罰の剣Ⅴ(6P)、解析の魔眼Ⅲ(6P)、魔力超回復LvMAX(4P)

 合計87P

 余り3P


 俺は『魔力極回復』を覚える事になったので、念のためアズとイズミの2人から『魔力超回復』をコピーし、3人には『解析の魔眼Ⅲ』と、イズミとシルヴィには『天罰の剣Ⅴ』を付与。更にアズとシルヴィに『魔力超回復』を付与しておいた。

 『天罰の剣Ⅴ』の使用には魔力を5000も使用するんだし、これがあればガス切れの心配はほぼないはずだろう。


「皆、ちょっとその辺で座っててくれ。俺とアズで入口近辺の情報をちょっと取って来るから」

「はい、お気をつけて!」

『んふ、マスターとデートね♪』


 アズは器用にも、闇の中俺の腕を抱きしめて胸を押し付けてくる。いや、魔力の流れが見えるんだし、俺の姿もほとんど視えているようなものか。

 そうしてアズに片腕を取られながらしばらく前進すると、ここの最初の構成が何となく見て取れた。広さとしてはそこまで大きくはなく、野球場程度のもので、フィールドの形状も円形っぽい感じがする。そして奥には通路のようなものがあり、その奥はどうなっているか見えない。

 逆に背後の、仲間達がいる所はコの字に切り取られており、モンスターが湧かない安全地帯のようになっていた。


「……んで、ここのうろつくモンスターはあれか」

『そのようね。『解析の魔眼』で姿が見えているおかげか、この状態でも『真鑑定』が通るみたいね』


*****

名前:ブラッドサースティウルフ

レベル:32

腕力:270

器用:440

頑丈:160

俊敏:420

魔力:500

知力:300

運:なし


(パッシブ)スキル】身体強化Lv1、獣爪術Lv1

PB(パッシブブースト)スキル】リーダーシップLv1

(アーツ)スキル】吸血Lv2

★【(エクス)スキル】狼の嗅覚、血の衝動、飢餓衝動


装備:なし

ドロップ:血の牙

魔石:中

*****


 この血に飢えた狼が、フィールドに約50体ほど。『狼の嗅覚』なんてスキルがあるって事は、匂いで寄ってくるんだろうし、ほんの少しでも怪我をしようものなら、遠くからでも血の匂いを嗅いで襲ってきそうだな。

 にしても最初から32レベルか。第一層からしてだいぶ強いが……もしかしてここ、最上級のダンジョンなのか?


「そもそも俺、ここのダンジョンがナンバーいくつかしらねーな」

『♪』

「アズ、教えてー」

『良いわよ~。ここはねー、No.666よ♪』

「ああ、それで……」


 『悪魔のダンジョン』な訳ね。


『この世界では666って数字は悪魔の数字って忌み嫌われてるんでしょう? 恐らくこのダンジョンを作った奴も支配してる奴も、それを理解した上でこの土地にダンジョンを出現させたんでしょうね』

「ダンジョンの出現場所って、狙ってできるもんなのか?」

『ある程度はね。ほら、タマモの時もそうだったでしょ』


 そういやそうだ。


『本来、ファーストナンバーでもエンドナンバーでもないダンジョンは、特別な力を持たないわ。けど、この世界にとって意味のあるナンバーだと、特別な力を持ちやすいみたいね。マスターやイリス先輩の根っこにあるダンジョンも、きっとその手のタイプよ』

「てことは、他のゾロ目ダンジョンも……」

『ええ。きっと普通のダンジョンでは無いわね。ちなみにマスター、ワールドマップでこのダンジョンがどんな風に表記されてたか知ってる?』

「……そこまで見ていなかったな」

『んふふ。赤、黄金、白、黒、虹色だったわよ♪』


 赤は出現中。

 黄金は秘宝。

 白は『幻想武器(ファンタズマウェポン)』。

 黒は『幻想(ファンタズマ)』スキル。

 虹色は異界の住人だったはず。

 そんなものがてんこ盛りってことは、ここは相当レベルの高いダンジョンみたいだな!

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