ガチャ949回目:聖者教育局
天使の輪っか、天使の翼、完全なる神の後光。それらを兼ね備えた男は困惑していた。
いや、それは俺な上に、これは全部俺のせいではあるんだけど。どうしたものかな。
「ショウタ様、あれだけ否定しておきながら、やってしまいましたわね」
「いやー、何故か分からないけど、つい衝動的にやってしまったというか、気が昂っちゃって」
「ん。ショウタはつい思い付きでとんでもない事をする。よくある事ではあるけど……もしかしたらダンジョンのせいかも?」
「ダンジョンのせい?」
なにそれ?
どう考えても俺のやらかでしかないと思ってたんだけど、他責にしちゃえる余地があったの? いや、俺が悪いと思うんだけど。
「それについては、私がお話ししましょう」
「あ、マルコ先生……」
そう日本語で話しかけて来たのは、先日も結婚式にやって来てくれた人物で、教皇と一緒にいた地位の高い人だったように思う。確か『聖者教育局』の大司教だったか……? ここは冒険者を育成する場所だって話だし、先生という呼び名からしてこの施設の管理者でもあるんだろう。つまりは日本で言うところの支部長ってことだな。
挨拶をしたあの時は終始笑顔だったが、今は緊張に満ちた顔をしている。これはダンジョンのせいか、俺の後光のせいか。
「たぶん後光のせいですよ、勇者様」
「やっぱり?」
「ショウタ様、そろそろ解除しませんか?」
「……すまん。やってるつもりなんだが、解き方が分からなくなった」
何故かはわからない。俺なりに力を抑えたり、解除しようとしてるはずなんだが、うまくいかない。まるで命令系統の配線が、途中で寸断されているかのような感覚だ。
『じゃあマスター、『克己』してみて』
「ん? おう……喝ッ!!」
『ブワッ!』
俺を中心に空気が振動し、周囲一帯に状態異常を強制解除させる波動が行き渡る。その瞬間俺の中で残り続けていた聖属性のエネルギーが消失し、輪っかも翼も後光も全て消失。俺に信仰を見出していた者達も、正気を取り戻したかのようにハッとなった。
「お見事です。流石は世界を救える唯一の御方だ」
「いやー、俺1人だと解決策は見つかりませんでしたよ。アズのおかげですね」
『ふふーん♪』
自慢げに胸を張るアズ。そんな彼女の反応は普通であれば男女問わず彼女の胸に集約されがちだが、ここの者達は違うようだ。視線はない事はないのだが、俺が思っていたよりもその総数は少ない。流石は聖職者の総本山と思うべきか、それとも悪魔だから別枠だと思われてるのか。前者なら尊敬できるんだが、どうかな~。
……テレサも俺の思考を読んでか、微妙そうな顔してる。ある意味それが答えか。
「えーっと大司教」
「どうかマルコと」
「じゃあマルコさん。話を始める前に1つだけ良いですか?」
「なんなりと」
「ここに連れて来ている女は全員、国も種族も問わず俺の嫁です。テレサの故郷だから救いには来ましたが、彼女達に失礼な態度を取る相手にまで手を差し伸べ続ける事はありません。そこはご理解ください」
それを聞いたマルコ大司教は頷くと、振り返りその場にいる者達に向けて声を響かせた。
「……みなさん、アマチ様のお言葉を聞きましたね。今日この場にいない者達にもこのことを通達し、以後誤りのないように!」
『はい、先生!!』
おお。……これなら安心かも。
「ではアマチ様。この国に来てまもない中申し訳ないのですが、早速ダンジョンに入って頂きたいのです」
「テレサから事情は大体聞いています。今、残り時間はどの程度ですか?」
「……5時間とちょっとです」
おっと、結構減ってんな。
「申し訳ありません。戦えるものは全て消耗しきっておりまして、もはや最初の入口で戦える者すらいない状況なのです」
「なるほど、そりゃ深刻だ。分かりました、とりあえずこの後すぐ第一層に当たってみますよ」
「助かります。それで先ほどのお話なのですが……」
「あー……。皆、聞いておいた方が良い?」
皆は顔を見合わせたが、首を横に振ったり、肩をすくめたりする子達ばかりで、縦に振る子はいなかった。どうやら、俺に委ねはするが聞いておかなければならないと思ってる嫁は誰一人としていないようだ。
「というわけなんで、中に入って自分で確認しますよ」
「宜しいのですか?」
「良いの良いの。ダンジョン周辺にいる人間の意識にまで影響を及ぼすとか、面白そう以外の何物でもないし」
その言葉に大司教は鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をし、嫁達はニコニコだった。
「テレサ、ダンジョン内ってキャンプを張れる場所は有るの?」
「ありはしますが、気が休まらないやもしれません」
「でも、それも『妖怪ダンジョン』みたいなもんでしょ。仕掛けを解けばそういうデバフも解けると思うんだよな~」
「ふふ、そうかもしれませんね」
まあそれとは違う類のギミックだったとしても、このメンツなら何とかなると思うんだよな。どんなギミックが仕掛けられたダンジョンなのか、今から楽しみだ。
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