ガチャ947回目:フライト
沢山のフラッシュが焚かれる中、俺は手を振って自家用ジェットに乗り込む。それと同時にドアが閉まり、機内アナウンスが流れ始めた。
『これより日本からローマにあるフィウミチーノ空港へと向かいます。到着予定時刻は10時間後。現在時刻は14時ですが、あちらとの時差は7時間ですので、到着予定時刻は17時頃を予定しています。それまでどうか、ごゆるりとなさって下さい』
機内を進んでいくと、エンキ達は一斉に窓に張り付き外の様子を眺め始めた。時折手を振ったりしているのは、カメラサービスだろうか。このまま彼らはジェット機が空を飛ぶまで窓にかじりつく事だろう。今までもずっとそうだったし。
「まあエンキ達は良いとしてだ。……早速やってんなー」
横長のソファに腰掛けた俺は、機内に特別に用意されたバーテンコーナーへと目を向けた。そこではすでに酒盛りが始まっていた。
「えへへ、勇者様も一杯どうですか~?」
「おいおい、もう出来上がってんのかよ」
俺より先に乗り込んで何してるのかと思いきや、もうへべれけ状態とは。流石マリーだな。
「度は?」
「軽い奴ですよ~」
「じゃあ貰う」
グラスに注いでもらい、仰ぐようにして飲む。マリーがうちに来てからというもの、お酒を飲む機会が増えたせいもあって、酒の味が分かるようになってきた。だからこのお酒も、割とそこそこ良い値段がするんだろうなと何となく予想がついた。
「えへへ、良い飲みっぷりですね~」
「そんなに『弱体化』が嬉しかったんだな」
「そりゃもう~! 酔いに身を任せても、勇者様に会う前までの加減さえしっかりしていれば、ビンもグラスも割る心配はありませんから~!」
そんなに喜んでくれるとはな。
うちの嫁達の中でも『弱体化』の存在は本当にありがたがられてはいたが、一番喜んでいるのは彼女かもしれないな。
「テレサもクリスも、あんまり羽目を外し過ぎるなよ」
「「はい、ショウタ様♡」」
この2人はよくマリーの酒道楽に付き合っていたから、彼女の悲しみもこの喜びもよくわかるんだろう。だからこの酒盛りを止める事もしなかったんだろうけど……。ま、彼女達もプロだ。明日に影響を遺す事はしないだろう。
さて、同行メンバーの中で問題があるとすれば……。
「シャルは今から緊張してるのか?」
「う、うん。バチカンのダンジョンは精神的苦痛が大きいダンジョンって噂は聞いてたけど、実際の内容を聞いたら怖くなっちゃって」
「ふむ」
今から行くダンジョンがどんなところなのか。俺以外は当然テレサから共有されている。されてないのは俺くらいのものだ。これはハブられてる訳じゃなくて、いつも通り俺に配慮してくれた結果なのだろう。
本当に必要ならネタバレなんて度外視してちゃんと教えてくれるんだろうし、それが無いって事は俺なら何とかできると皆が信じてくれているからだ。
「シャル的には、俺はどうだ? そのダンジョンで心が折れそうに見えるか?」
「……全然見えないかな」
「けどシャルは自分が折れる可能性を考えていると」
「……うん」
「じゃあ逆に聞くけど、平然としている俺が隣にいる状況でも、心は折れるか?」
「え? ……どうだろう。分からないけど、1人でいるよりは平気かも」
「だろ? それに近くにいるのは俺だけじゃない。他の皆もいるんだ。心が折れる心配はいらないと思うぞ」
シャルはいざという時はちゃんと戦える女性だ。だから本番になれば、心配はほとんどいらないと思うんだよな。
「……うん、そうだね。ありがとうショウタ」
「おう、辛くなったらいつでも甘えに来い」
軽くハグをすると、彼女はそのままマリーの酒盛りに参加し始めた。お酒で残った不安を掻き消すつもりだろう。彼女はあれで良しと。
残りのメンバーを探して奥のベッドルームに行くと、案の定の光景が広がっていた。
「ん。ショウタ、やっほ」
『やっほなのじゃ~』
『マスター様、いらっしゃいませ♡』
『マスター、こっちこっち~♪』
布団にくるまった芋虫状態のミスティはいつも通りとして、アズはドエロいネグリジェ姿で手招きしているし、その両隣にはモフモフパラダイスを展開しているキュビラとタマモがいた。
あ、これ完全に俺を狙い撃ちするために待機してたなこれ。
「なんでまた? いや嬉しいけどさ」
『んふー。だって、次のダンジョンは中々意地の悪い仕掛けみたいだし、こうやってマスターの幸せ度を上げとかなきゃな~って思ったのよ』
『そうです。マスター様に今足りないのは、即興の幸福度だと思うのですっ』
『わっちらに包まれれば、御主人は幸せの絶頂なのじゃ~』
「ん。これに包まれると天に昇れる。私もさっき、ちょっと試させてもらった」
「ミスティ的には布団に包まれるのとどっちがいいんだ?」
「ん。悩ましい。……けど、この布団に引けを取らないかも」
布団にくるまれるのが大好きなミスティがそう言うって事は、相当だな。
まあ、見た目からしてとんでもない威力を秘めているのは考えなくても分かるが。
「まあ、俺に必要ってことなら甘んじて受け入れるか」
『はーい、服も全部脱ぎ脱ぎしましょうね~♪』
『素肌でじっくり感じてくださいませ♡』
『思う存分もふるのじゃ~』
「ん。私はこのまま寝る」
そうして俺は、少し早い時間だったが、彼女達の柔らかさに包まれ意識を手放すのだった。
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