Chapter1 - Episode 4
「メアリーはここで露店を?」
「ぅん……こういうの、好きだから……」
「それは良いですね。好きな事をやるのがゲームですから」
……メアリーはこういう、物を作ったり売ったりするのが好きですしね。
私の友人関係の中で、EoAをやるような友人がいるとは思っていなかった為、こうして出会えたのは素直に喜ばしい事だろう。
その中でも、今回出会えたメアリーは所謂生産勢。
ゲーム内で物を作り、それを通じて他プレイヤーと交流するタイプのプレイヤーだ。
アクション系のゲームはあまりやっていなかったように思う為、少しだけ意外だった。
「ダンジョンには潜りましたか?」
「うぅん。まだ。……先に、ここ、見ちゃって」
「まぁ、貴女ならそうするでしょうね。この後一緒に行きますか?」
「良いの……?」
「良いですよ。私も1人でやるより複数人でやる方が楽しいですし」
そう言いつつ、私がこの区画に来た理由を説明すると、彼女は目を輝かせながらもこちらの必要としているアイテムを用意してくれた。
HPとMPが回復出来る2種類のポーションに、一応取り扱っている包帯。
そして素材さえあれば、一応服飾系の防具を作る事も出来るかもしれない……らしい。
「そこらへんの生産系ってどうなってるんです?」
「一応、簡単?かな……マイルーム、でやる、感じ……」
「成程……詳しく確かめてなかった私の落ち度ですねコレ」
聞けば、ある程度の設備は初期からマイルームに設置する事が可能なのだそうだ。
服飾系や鍛冶系、はたまた調薬系から錬金系など、その生産設備は多岐に渉るものの……やはりサービス開始初期。
マイルームを拡張できるのか否かすらも分かっていない為、それらの設備を置きすぎると他に支障を来たすとメアリーは考えたらしく、とりあえずで服飾系の装備が作れる設備だけを設置したらしい。
……あとで私も何かしらの設備を設置しておきましょうか。
「そういえば服飾系と鍛冶系の装備で何か変わるんです?……まぁ移動速度とかに影響は出そうですけど」
「近接か、遠距離?その違い、みたい」
「あぁ……そういう補正ですか」
メアリーが手元にウィンドウを表示させ、こちらへと見せてくれる。
そこにはゲーム内掲示板が表示されており、丁度今私がした話をプレイヤー達が検証している会話が載っていた。
その結果によれば、ある程度近接攻撃に強いのが鍛冶系であり、デメリットは移動速度の低下や円陣の効力が気持ち下がっているように感じる事。
服飾系はその逆であり、移動速度が低下せず円陣の効力が僅かに向上するものの、近接攻撃には滅法弱い。
私は別に近接戦闘をするつもりは無い為、恐らく服飾系を装備する事になるのだろう。
そう考えるとアリスがその設備を設置してくれているのは大変ありがたい。
「ちなみに装備を作るのに必要なのは?」
「モンスターの素材、だね……一番、下でも、5個くらい」
「集めますか……」
「手伝う、よ?」
「ありがとうございます」
この区画に来た目的をある程度果たした私は、パーティを組んだ上で【インガイ】へと移動した。
初期も初期であるが故に、お互い持っている円陣も全く同じ。
前衛後衛の概念もクソもないが、まぁそれぞれの特色がハッキリ出るまではそんなものだろうと、私達はダンジョンへと向かって階段を降りて行った。
「今ッ!」
私の掛け声に、後方にいるメアリーの方から青白い弾が目の前のゴブリンへと飛来し、着弾する。
その衝撃で怯んだゴブリンに対し、私は追撃として【魔力弾】を発動しトドメをさした。戦闘終了だ。
「良いですね。相手がゴブリンならこの動きでいきましょう」
「ぅん!」
2階層へと続く階段、その前にまたも立っていたゴブリンに対して、私とメアリーは連携が取れるかどうかの確認をしていた。
といっても、ある程度相手の動きを覚えた私が回避盾のようにヘイトを稼ぎつつ、隙が出来た瞬間にメアリーに射撃してもらうというだけのもの。
簡単なものではあるが、現状コレが一番効率も勝率もいいだろうという判断だ。
問題は初見の相手が出てきた場合だが……その時は、頑張ってメアリーには逃げ回ってもらう事になるだろう。
元気が有り余る所か、今の戦闘では消耗という消耗をしていないため、私とメアリーはそのまま第2階層へと突入する事にした。
お互い回復アイテムは持っている為、早々危険な場面に出くわす事もないだろう。
【電脳樹のダンジョン 2層目】
階層数が変わったのを視界の隅で確認しつつ、私は周囲の警戒をする。
少なくとも、階層が変わった直後に襲い掛かってくるようなモンスターは現状居ない……らしい。
「とりあえず虱潰しに探索で良いですか?」
頷いてくれた為、そのまま探索を開始した。
ほぼほぼ1階層の焼き増しのような2階層の探索ではあるものの、違う点もしっかり存在している。それは、
「ゴブリン。それも複数ですね」
2体のゴブリンが通路を歩いている事だろう。
1階層では1体だったからこそ、私が1人で余裕をもって相手をする事が出来ていたモンスターではあるものの。
それが複数となった場合、どうなるかは分からない。
どうするかとメアリーに視線を送れば、彼女は薄く微笑んで首を縦に振った。
「……行きます」
「任せて」
メアリーのその言葉を信じ、私は2体の前へと躍り出た。
面白いと思ったら、下の☆を☆☆☆☆☆までしてもらえると嬉しいです
レビューなどもしてもらえるとモチベに直結します
これからも応援よろしくお願いします





