Ending
最終話です
風が吹く。
まるで台風の日のような、突風が空間内に吹き荒れ、視界を更に白く染め上げていく。
光ではない。
瞬間的なものではなく、持続的に今も尚、私の視界を塞いでいるからだ。
「……これ、は……」
そして感じるのは、冷気。
先程までこの空間内は、ボス自身の炎上によって熱されており、サウナのような温度に近くなっていた。
しかしながら、今はその熱気は感じず……逆に肌を刺すような寒気と、それを乗せている風によって満たされていた。
原因は明らかだ。
私が発動した方陣、それが今もボスを中心に起動し続けているのだから。
当然ながら、仕様として方陣の詳細な効果自体は行使者である私自身把握していない。
私が選んだのは、単純な方向性……方陣がどのような効果を与えるかというものだけだ。
「さむっ!」
言っている間にも、方陣の中心に近い位置にいるボスの身体が凍りついていくのが目に見えた。
本来、植物というのは凍結に対して高い耐性をもつものだ。
細胞が凍れば、そこから死滅し最終的には枯れてしまう。だからこそ、自然界の植物にはそれをある程度防ぐような性質があるものも多い……のだが。
……これ、人とかに向けて良い威力じゃないでしょ。
空間内が、酸素自体が少なくなっているこの空洞内の空気が急速に冷え、凍結していく。
徐々に吐く息が白く染まっていくのを見ながら、私は一歩、ボスの方へと踏み出した。
まだ終わっていないから。
「……ティア?!」
「――あと、1発!」
後方から聞こえる声を置いて、私は凍っていくボスへと銃口を向けた。
円陣は使えない。方陣のデメリットで、まだ使えない。
だが、これは違う。
回転式拳銃に込められている円陣だけは、それに関係なく扱える。
銃弾の装填は完璧ではない。1発しか込められていない。だが、それで十分だ。
氷を砕く程度ならば、1発だけで――、
――銃声が空間内に響いた。
「……って、ことで、ね?」
「あぁ、はい」
「……聞いてた?」
「聞いてますよ。私はあの後、1発の弾を撃つと同時に、ボスの最後っ屁……本体から別れた蔦に貫かれてデスペナルティ。だけど、」
場所は変わり、【ネト】のカフェ内。
未だデスペナルティの影響でアバターを動かすのも違和感を感じる私と、ボロボロのまま……しかしながらボス戦を生き残ったメアリーは、事の顛末を報告しあっていた。
最後、私が撃った弾丸は確かにボスへと命中した。
しかしながら、
「……ティアが、撃った弾。ボスの身体にヒビを入れたの」
「でも、そこで終わらなかった」
「うん。……私が追加で、鳥さん撃って、そこで終わり」
私の攻撃は致命打にはならず、メアリーが最後まで押し切ってくれたのだ。
最後まで後方から支援をしてくれていたからこその結果だ。
「こっちには……討伐成功のログだけですね。報酬なしです。……これ、もしかして」
「私には、きてるよ?」
「はぁ……またアレと戦わないとですねー……」
だが、討伐しただけだ。
私には討伐成功の報酬らしきものは無く、メアリーの方では先の階層へと進めるようになったというログが出たらしい。
……面倒ですが、仕方ないですね。
「まぁ良いです。もうアレは観ましたしね」
「……1人で、いくの?」
「えぇ、足りないものも分かりましたし、少し準備したら挑みますよ」
席を立ち、今回の戦いで必要だったものを思い出す。
様々なものが足りなかった。
火力も、防御も、そして時間も。
だから、それを補えるものを手に入れる。
「じゃあ行きます。次は……それこそ、私がボスを倒した後にでも」
「分かった、よ。……呼んでね?」
「えぇ、無理そうだったら」
そう言って、私はカフェを後にした。
空を見上げ、少しだけ笑みを浮かべ歩き出す。
「先に進むために、頑張りましょう」
もっとこのゲームを楽しむために。
アレな話にはなるんですが、半分……というか、割とな感じでエタりかけていたので、一旦終わらせました。すいません。
気が向いたらとか、そういう感じで多分この話の続きは書く事は無いと思いますが、どこかで雫達をまた出してあげれたらいいなと思います。
次回作以降は新年を迎えたらくらいで考えています。
では、また。





