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Chapter1 - Episode 19


ダンジョンが森のように変わってから、次の階層に移る為の階段は、階段の形を成さなくなった。

階層の何処か……この場合は、森の何処かに存在する洞窟の入り口が今はそれに当たる。

代わりに、その入り口以外に洞窟は存在しない。だからこそ、探し易いと言える……のだが。

森というフィールドが、木々が生い茂るこの場所自体が探索自体の難度を上げているのだ。

所々薄暗く、周囲は植物によって視認性を下げ、それらに隠れるようにモンスターが寄ってくる。

序盤だから良かったものの、これが後半……敵のレベルが相応に高かった場合は地獄を見ていた事だろう。


「見つけました。洞窟です」

「でも……」

「えぇ、見えるだけでウツボカズラが2体居ますね」


メアリーに目線を向けると、3本の指を立ててくれる。見えている以外に3体のモンスターが別に居るのだ。

当然、追われている状況でも洞窟内に入る事は可能ではある。あるのだが……その後もモンスターは普通に追撃をしようとしてくる。

当然、迎撃をしないといけないのだが……洞窟という場所の性質上、それが意外と難しい。


今までのような灯りは存在せず、完全に天然の洞窟のように、中に入って次の階層に出るまではほぼ真っ暗。

その状態で襲ってくるモンスターを迎撃するのは、今の私達には少し荷が重い。


「……先制します。3体の位置は?」

「ウツボカズラから3時方向、固まってるよ」

「分かりました。仕掛けると同時に飛び出るので、ウツボカズラを速攻で倒しましょう。全力で良いです」


そう言って、私は言われた方向に右手を向け、左手に回転式拳銃を握りしめる。

効いてくれ、そう願いながら【臆病な花畑】を発動すると同時、私は駆け出した。


『――!』

『――ッ!!』

「律儀な威嚇、ありがとうッ!」


ウツボカズラの行動パターンは分かりやすい。

自身が視認されている状態で、敵……プレイヤーが目の前に来た時、まず蔦を身体から出し、上に広げる事でシルエットを大きく見せながら威嚇行動を行うのだ。


奇襲に重きを置いているのだろう、真正面から戦うようには出来ていない。

そして、脆い。

威嚇をしている2体の内、1体に向け左手の銃の引き金を連続して4回。消化液の溜まっている袋へ向けて撃ち、瀕死へと追い込むと、そのまま3時の方向へと切り返す。

瞬間、背後から飛んできていた複数の青白い鳥が、ウツボカズラ達へと突っ込み爆発した。


「次ッ!」


倒せたかの確認はしない。

わざわざ私がしなくても、後方から全体を把握出来ているメアリーが見ているのだ。もしも私の背後から迫ってきたとしても、彼女の鳥の矢の方が早く相手に命中する。

だから、少し離れた位置……青白いフィールドの上で蹲るように動けなくなっていた蔦人形3体に照準と右手を向けた。


「BANG」


弾倉に残った2発、そして右手で発動した【魔力弾】が蔦人形の1体に命中する。

既に2度目の強化が入っていたのか、回避しようとして更に体勢を崩す蔦人形達を冷静に観察しつつ、【臆病な花畑】の効果範囲ギリギリで足を止める。


【臆病な花畑】のデバフ強化は4段階。

その内、2段階までは私が食らった通り光が強まり脈を打つだけだ。しかしながら3段階目になると、まばらに青白い花が咲き始める。

オシロイバナを模したそれらに触れるとデバフが強まり、最終的に4段階目になった時、効果範囲内には花畑が完成するのだ。


慣れて動こうとしても、3段階目に至った時点で範囲内に転がり、逃げる術がなければ毒でじわじわHPが削られていく。

……強いですが、MP消費がやっぱり激しいですね。

リロードされた回転式拳銃を使い、蔦人形を1体倒しつつ簡易ステータスを確認すれば、今も目に見える速度でMPが消費されていっていた。

【寄生種】程ではないものの、やはり消費は多く個体相手に使うには勿体無いと思うレベル。

強いは強いが、安全と引き換えに消費を犠牲にしているのには悩み所だろう。


「ティア」

「ん、メアリー。追いつきましたか」

「やろうか?」

「大丈夫です。丁度リロードが挟まっただけで」


そんなことを考えつつ、リロードしていると。

メアリーが弓を持ちながら、こちらに合流した。

しっかりと目線は目の前の蔦人形に向きつつも、彼女の肩には青白い鳥……恐らく【範囲索敵】の円陣が発動中だ。


「ちょっとだけ補給しておいてください。残数は大丈夫ですか?」

「ん、問題無い……よ」


その後、4段階に至った【臆病な花畑】の毒によって死にかけとなっていた蔦人形2体を倒した後、私達は洞窟の入り口へと向かった。

目標までは、あと2層。


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