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Chapter1 - Episode 1


電子魔導都市【モトトコヨ】。

その名の通り、電子空間に存在する箱庭都市。

全四層で構成されているその都市は、それぞれの階層によって大きく特色が異なっている。

私が降り立った交流特区……【ネト】は、その第壱層であり、他に第弍層商業特区【チュウイチ】、第参層挑戦特区【インガイ】が基本的にプレイヤーが活動するエリアとなっている、らしい。

では四つ目の層はと言えば、


「ここが第零層……」


私はメニューを開きネトから四つ目の層へと移動した。

そこは言ってしまえば簡素な一人部屋であり、木の机や大きな宝箱、ベッドなど質素でありながら最低限寛げる環境が用意されている。


第零層、名もなき層。

強いて呼ぶならプレイベート特区、プレイヤーのマイルームと言うべき部屋が存在する区画であり、ここで色々な事が行える……らしい。

ネトに降り立ったと同時に出現したチュートリアルに従って移動したものの、詳しい詳細は載っていなかった為、その所は曖昧なのだが。


「えぇっと、これですかね」


入ったと同時、木の机の上に緑色のピンのようなものが出現した為近付くと。

私の目の前に半透明のウィンドウが出現した。

新たなチュートリアルの開始だ。


「『円陣作成チュートリアル』」


『Eden of Annulus』……EoAにはサービス開始前からある特徴的なシステムが存在すると謳われていた。

それがサークル(Circle)マジック(Magic)システム(System)と呼ばれる、所謂魔法のようなコンテンツのことだ。


プログラムのように発動させたい効果を組み上げ、それを魔法陣という形で所持、行使する。

EoAではこのコンテンツを使う事によって、戦闘から生産、はたまた生活水準を上げるなど様々な事が行える……とチュートリアルウィンドウには書いてあるのだが。


「これ、エンドコンテンツに片足突っ込んでないです?」


よくよく読んでみると、のめり込むと酷い事になりそうな事が書かれている。

例えば、ただ火を熾すにしても『火花を発生させて火を熾す』のか、『温度を上げて火を熾す』のかという違いがあるし、それぞれのプログラムを組むのにモンスターのドロップ品が要求されるとの事。


初級……今の私のような、チュートリアルを受けていたりゲームを開始して少し経った程度で使える円陣には特定の素材を必要としないようだが、上を目指せば目指すほどに特定モンスターの特定素材が必要になっていく。


「今回作るのは、通常攻撃……MPを弾の形にして撃ち出すもの……」


とまぁ、先のことを考えても仕方がない。

その時が来たら頭を悩ませる事にして、私は椅子に座って目の前の机に向かった。

それと同時に、新たなウィンドウが出現する。

中心に円が描かれ、その周囲にはファンタジーに出てきそうな言語のようなものが散らばって配置されている。


「ふんふん……プログラミングって言っても、本格的なものじゃなくてパズルみたいなものですか」


どうやら、これらを組み合わせて魔法陣を作るらしい。

試しに目についた単語を1つ指でドラッグしてみると、円の一部が発光し始めた。

現在私は円陣を作成するチュートリアル中。

つまりこれはシステムアシストなのだろう。


「まぁ従わない理由はないし、初めて作るものは説明書(レシピ)付きでっと」


発光している箇所に単語を近づけてみると、まるで引力が生じているかのように単語が引き寄せられ嵌る。

これを繰り返していけば円陣が完成するのだろう。

ならばさっさと完成させて、他の事をした方が有意義であるというものだ。



「これで完成ですね」


最後の単語を円に嵌める。


『【魔力弾】を作成しました』


―――――

【魔力弾】

種別:攻撃

主効果:魔力物質化

∟副効果:弾状化

∟副効果:射出

∟オプション:なし

―――――


それと同時、魔法陣としか言いようのない図形がウィンドウ内に完成し、今しがた作った【魔力弾】の内容が別ウィンドウで出現した。

主効果がこの円陣の主力となる効果、副効果は主効果を自ら望む形にするためのモノだろう。

オプションは……今はまだ分からない。恐らく何かしらの意味はあるのだろうが、Tipsも何も出てこない事から今考えるのはやめておいた。


「へぇ、この画面から更に円陣をカスタマイズできると……」


それよりも問題は、更なる拡張が出来る事だろう。

作ったものをテンプレートとして保存でき、それに追加で能力を付与できる……ようなのだが。

私が始めたてだからか否か、今表示されている画面にはどんなカスタマイズが出来るなどとは表示されていない。

素材周回をかなりの数こなさなければ、自身の思い通りの円陣を創るのには難しいのかもしれない。


……じゃあ次は早速行ってみましょうか。

攻撃手段を手に入れたならば、次は勿論、ゲームの醍醐味の1つでもある戦闘を体験するべきだろう。

本当ならば回復アイテムなどを手に入れてからにした方が良いのだろうが、それでも一度戦闘を体験して、どれくらいこちらへとダメージを与えてくるかを確認してから買い貯めるのもまた良いはずだ。

そう考え、私はマイルームから第参層……この箱庭都市で唯一敵性モブが出現するエリアへと繋がる区画、挑戦特区【インガイ】へと移動した。


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