Chapter1 - Episode 15
「んー、これで20回目。飽きてきましたね」
崩れていく蔦人形に目もくれず、私は手に入れた物の確認をした後にその場を後にした。
飽きた。流石に変わり映えのしない相手を20回も同じ方法で倒し続けているのだ。飽きもする。
……手に入ったオプションも同じ物。運もあるとは思いますけど、これはちょっと……。
まだ確率云々をしっかり確認するには試行回数は少ないだろう。
しかしながらこれ以上のやる気も起きない。
「あ、銃の調整でもしてみましょうか」
そう言えば、と【チュウイチ】でNPCと話した内容を思い出す。
確かマイルームで武具に設定されている円陣の調整が行えたはずだ。
気分転換にそれを試してみるのも良いだろう。
決まったならば善は急げ、ということで私はマイルームへと移動した。
マイルームに設置できる施設は複数存在する。
円陣の作成、調整を行える木の机を補助する『本棚』や、メアリーのようにアイテムを生産する為の作業台類。
NPCが言っていた、武具の調整を行う電子鉄床や食事を作る事ができるキッチンなど、やりようによっては自分好みのマイルームにする事も可能だろう。
私のマイルームに現在設置されているのは、初期から設置されている木の机と、再戦アイテムを作成するのに必要だった『簡易作業台』のみだ。
殺風景ではあるが、あまりハウジングに興味のない私にとってはこれで良い。
「さて、設置するのは……あぁこれですね。『武器用鉄床』」
マイルーム用のメニューを表示させ、その中から設置可能な施設を選び、ゲーム内通貨を支払う事で設置が完了する。
ここから追加でゲーム内通貨や素材を使う事で施設をアップグレード出来るようだが……まだ必要ないだろう。
無造作にマイルーム内に置かれた『武器用鉄床』は、白を基調とした長机に巨大な顕微鏡とキーボードが埋め込まれた物だった。
試しにそれに触ってみると、ウィンドウが出現し顕微鏡が軽い稼働音らしき音を発し始める。
「これに武器を乗せれば良い訳ですね」
ウィンドウの案内に従い、顕微鏡の物を乗せる部分……ステージの部分へと回転式拳銃を乗せた。
すると、
「おぉ、デフォルメされた銃が……成程。ここから色々弄れるわけですか」
ウィンドウにデフォルメされた銃が表示され、次いでスロットに入っている円陣の詳細が別枠で出現した。
銃が映っている側をメイン、円陣の詳細をサブとすると、メインの方では銃の外見や弾倉の切り替えなどが行え、サブの方では円陣の取り外しやセット登録など行えるようだ。
NPCが言っていた細かく調整できる、というのはスロット円陣の順番だろうか。
まだスロットが複数ある武器を扱った事が無い為分からないが、円陣の順番を弄らねば使い物にならない武器なども存在するのかもしれない。
まぁ今回はその円陣の設定を少し弄りたいために、そのままスロットから取り外すのだが。
「あ、これこのまま離れても大丈夫そうですね」
取り外した円陣は私の所持枠へと移動され、この状態になることでやっと机の方でカスタマイズする事が可能となる。
今回私が行う調整は主に2つ。
1つはオプション『アイビー』の追加、及び副効果『成長』の追加だ。
弾状で作り出された物に対して蔦の性質と、成長する余地を与えたらどうなるのか、という実験であり……正直そこまで期待しているわけではない。
オプションとしては恐らく『バード』を付けた方が分かりやすく強くなるだろう。ただ、試してみない事には始まらないものもある。
そして2つ目は……【寄生種】を【弾生成】の代わりにスロットにセットする事。
こちらは【弾生成】という円陣に対しての調整ではなく、武器全体として見た時の調整だ。
「もし問題なく使えるなら……まぁ強いですよね」
【寄生種】という円陣の性質上、相手に当たる数が多くなればなるほどに相手を蝕む種の数も増えていく。
同時にMPの消費量もとんでもない事になっていくものの……それでも試した方が良いだろう。
「試す事は大事です」
だが今回試す相手は蔦人形ではなく、1層目の階段前に居るゴブリンだ。
どこに居るのか分かり切っていて、尚且つ、いざとなれば【魔力弾】だけで打倒出来る存在というのはありがたい。
一応、マイルームに設置できる施設の中にはダメージ検証用のかかしなどがあるのを確認出来ている為、そこらへんが置けるようになるまでのサンドバッグではあるのだが。
「あー……成程」
結論、副効果である『成長』は意味がない……というよりも、効果が発揮しているのかどうかが分からなかった。
『アイビー』の追加された弾が相手に命中すると同時、命中箇所から蔦が伸び部分的に相手を拘束するのは良いのだ。しかしながらそこから周囲に伸びていく事がない。
【寄生種】の時とは違う挙動ではあるが……これはこれで良い結果だ。何せ、通常の弾が全て相手を部分的に拘束する事が出来る弾に変わるのだから。
そして、もう1つ。【寄生種】をスロットに登録してみた結果だが。
私の目の前には、手足から青白い蔦が伸び搾り滓のようになっていくゴブリンの姿があった。
弾ではなく、種であっても撃つ事が出来、尚且つ効果を発揮する。
但し、MPは据え置きである為に……ゴブリン1体を倒すのにMPが約半分ほど持っていかれてしまった。
使えなくはないが、この消費MPをどうにかしなければ回転式拳銃という形で使うのは難しいだろう。





