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Chapter1 - Episode 14


「よし……じゃあやりますか」


場所は【電脳樹のダンジョン】5層。

目の前には木製の扉があるものの6層に行くわけでは無い。

メアリーに言っていた通り、蔦人形との再戦だ。

インベントリ内から、あるアイテムを取り出すとそれを扉の前の地面に埋め、少し距離を取る。

すると、


「まるで「ジャックと豆の木」みたい……」


地面から蔦が伸び、徐々に人型になっていく。

埋めたアイテムの名は『寄蔦兵(きちょうへい)の種』。蔦人形から獲得したアイテムを使いマイルームで作成する事が出来る、再戦用アイテムだ。

一応、このアイテムのおかげで蔦人形のゲーム的正式名称、もしくは通り名が寄蔦兵である事が確定したわけだが……私とメアリーは、お互いが分かりやすいように蔦人形で通すだろう。


目の前で緑色の人型が出来上がり、頭から徐々に枯れていく。

それと同時にHPバーが出現し、その中身が溜まっていくのを見ながら私は銃を構えた。


……問題は、どれくらい早く鎧を砕けるか。

枯れ蔦の鎧は確かに脅威ではある。それこそ【魔力弾】を数発耐えるほどの性能を持った鎧だ。

現状の私にとって、気軽に使える攻撃手段を何発も耐えられる装甲は脅威以外の何物でもない。

しかしながら、今はそれよりも威力は劣るものの連射が出来る回転式拳銃を持っている。


「ここでもっと他の攻撃手段を作っておけば……とか考えるのは野暮ですよねぇ」


そういうのはこれから考えればいい。

今はそれよりも、新しく持った武器の練度を上げるべきだ。

その点において、蔦人形はかなり便利で戦い甲斐のあるモンスターだろう。


身体の成形が終わったのか、少し離れた位置にいる私に向かって蔦人形が迫ってくる。

周回の始まりだ。



「これで10回目……慣れましたね」


目の前で蔦人形が崩れ落ちていくのを見ながら、私は手に入れたものの確認をしていた。

ちなみに戦闘自体はかなり楽に終わらせる事が出来た。

というのも、やはりというかなんというか。回転式拳銃を約5発撃つ事で上半身の枯れ蔦の鎧が砕けてしまい、その後の1発で本体にダメージを与える事が出来てしまった為だ。


……もうちょっと新しい何かが『観察』出来るかと思ったんですけどね。

ソロで挑むにあたって、行動パターンの変化が起きるのかと思っていたのだが……そういう事もなく。

寧ろ、枯れ蔦の鎧を回転式拳銃で砕きつつ、空いた片手で【魔力弾】を放つ事で時短する……なんて事も出来てしまったくらい。


「オプションは……3種類だけ。その内1つは『アイビー』ですか」


ドロップアイテム自体に変化はなく、大体1回倒す毎に再戦アイテムを合計1.5個作れる程度の数がランダムに分配される形だ。

しかしながら、オプションは大体10回中3種類しかドロップしなかった。


「『バード』……これはメアリーが使ってる奴。もう1つは……『ウッド』。分かりやすく木の性質のオプション」


そして新たに手に入れたのは『ウッド』。

円陣に木の性質を付与できるオプションではあるが、正直木の性質といってもパッと予想が出来ない。

『アイビー』のようにモチーフがしっかり分かる物と、ジャンルというか大きな括りの『バード』や『ウッド』。

これらに何の違いがあるのだろうか、と思い掲示板で調べてみると……検証班と有志達が既に調べている内容だったらしい。


曰く、『ウッド』など大きな括りを指定しているオプションは、指定されているものの大まかな性質を付与するものであるらしい。

つまり、木の特徴である『根、茎から成長して太く強固となる』という性質を付与するのが『ウッド』。

対して『アイビー』は、蔦という植物の性質を付与する為に、他の植物で見られる性質はない。

『アイビー』を付けたからといって、食虫植物のようになるわけでも、サボテンなどのように高温乾燥状態に強くなるわけでもない。


特化するか否か。

付与する円陣にも依るが、オプション選びをする上では重要な情報だろう。


「……回復系は『ウッド』ですかね。『バード』は……使いませんし、メアリーにあげましょう」


回復、それも範囲指定の円陣に『ウッド』のオプションを付与すれば面白い事にはなるだろう。

本当ならば杉などの花粉を飛ばす木々のオプションの方が良いのだろうが……個人的に、杉のオプションが出たならば、攻撃系の円陣に使いたいと思ってしまう。

あるのかどうかは知らないが、あるのならば絶対に使う。ヘイトもその分内外から溜まりそうではあるが。


兎に角、私は一度帰還しマイルームで再戦アイテムを作成してから繰り返し蔦人形を狩り続ける事にした。

オプション品目当てではあるが、正直な話ここまで来たらどれくらいの確率でオプションがドロップするのかを確かめたい。

一応検証班達も調べているそうだが、ドロップ品なども含めて自分で調べるのも良いだろう。

今後を考えれば素材はどれだけあっても足りないだろうし、何ならメアリーに頼んでいるオプション探しの方でゲーム内通貨を使う可能性も高いのだ。

売れるものを大量に仕入れておく必要がある。


ちなみに、アイテムの他……獲得経験値の話にはなるが。

そちらは大幅な下方修正が入っているのか、初回討伐時と違って10分の1以下になっていた。

私のように周回する事でレベルを上げる事が出来てしまうからだろう。


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