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天然の食料庫

 セモリナさんが地下の倉庫に駆けつけると、ソイルは地下倉庫の木箱を漁っていた。


 蓋を開け中を確認するソイル。


 セモリナさんはソイルに声を掛ける。


「なにか見つかった?」


「小麦がいくつかと大豆と……ダメか……。これは3年前のやつだな」


 ソイルは違う箱を漁り始める。


 セモリナさんは箱の中身を見ると粉になっていないので一安心した。


「小麦や大豆は粉にしなければ何年も持つってシェーマスが言ってたわ」


「そうなんだ。じゃあ、この辺りの箱は全部持って行こう」


 この倉庫は地下と言っても実際に地面の中にある訳じゃなくて地面から少し浮いた所にあって、むしろ集会場や寝室が倉庫の二階にある感じに近い。


 湿気対策や穀物が野盗やゴブリンに盗まれたりネズミに襲われないようにこんな感じの作りをしているんだと思う。


 ソイルが外にいるゴーレムに合図すると倉庫の壁をぶち破り全ての箱を運び出した。


 運び出した箱の中身はゴーレムの背中のバックパックに積み込む。


 その数は50体のゴーレムのバックパックが満タンになるほどだった。


「すごい量が残ってたわね」


「不作の時に出荷する穀物だったのかもしれないね。全然問題なく食べれそうだからこれもウッドストックの町に流そう」


 そして食料を回収したゴーレム軍団とセモリナさんとソイルはウッドストックに旅立つ。


 これを届けたら、やっとソイルと一緒にのんびり出来ると思ったセモリナさん。


 でも移動中にソイルは変な事を言い出す。


「よし、第一弾はこんな物かな?」


「第一弾って? もう倉庫の中には何もないわよ?」


「まだ、あの村にはまだまだ沢山の食料が残ってるから」


「本当にあるの?」


 あの村を見た感じ倉庫の中には木箱はもうなくて後は民家だけのはず。


 民家を漁っても大した量の食料は見つからないと思うし。


 それ以外に食料と言えるのは……まさか!


「ゴブリンの死体なんか食べたくないわよ!」


「ゴブリンなんて食べないって」


「そうよね」


 ソイルが笑うとセモリナさんもつられて笑った。


 *


 ウッドストックに着いたら町長のジョンさんに穀物を託す。


「リヒト村から持って来た食料です」


 ジョン町長はその量に驚く。


「こんなに沢山の穀物を持ってきてくれたんだ」


 表情を明るくしたジョン町長は続ける。


「肉はソイルくんたちのおかけで足りたんだけど、パン用の小麦が足りなくて困ってたところだったんだよ」


「まだまだあるのでこれはすぐに町の流通に卸しちゃってください」


「僕に任せてくれ」


 拳を掲げて力ずよく応えるジョンさんだった。


 *


 リヒト村にトンボ返りしたゴーレム軍団とソイルとセモリナさん。


 リヒト村に着くとソイルはゴーレムに指示を出す。


「ゴーレム! この村の周辺にある畑から食料を収穫してくれ」


「「「ゴレ! ゴレ!」」」


 すると蜘蛛の子を散らすように辺りに走り出すゴーレムたち。


 セモリナさんは感心していた。


「あー、秋だから畑にまだ収穫前の小麦の穂が残ってるんだね」


「そうそう。畑は天然の食料庫と言われてるぐらいだし、残して置くのはもったいないからね」


 このまま残していても運送ギルドの連中に燃やされるだけだから、回収しないのは勿体もったいないわよね。


 ソイルくんとお茶でもしながらゆっくり休憩して収穫が終わるまで待ってようかな?


 セモリナさんはそんなことを考えているとゴーレムがすぐに戻って来た。


「はや!」


 なんですぐに戻って来ちゃうの?


 休んでる暇もないじゃない!


 まさかゴーレムでは収穫出来なかったってオチ?


 と思っていたら……。


 バックパックは小麦の種もみで満タンになっていた。


 早すぎるわよ!


 セモリナさんは驚きまくりだ。


「この村の食料をあるだけ回収しまくります。これが運送ギルドへの大きなダメージになるはずだから」


 食料の回収が運送ギルドへのダメージ?


 ソイルが言ってることがいまいちピンとこないセモリナさんであった。


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