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メタルゴーレム

 セモリナさんはケイトさんがなんで驚いているのか理由がわからなかった。


「身体が石から金属になって見た目は凄くなったけど、それだけじゃないの?」


 ケイトさんはメタルゴーレムについて興奮気味に力説を続ける。


「ボディが金属製になったので耐久力が上がってそれだけでも凄いんだけど、駆動力が爆上がりで移動がめちゃくちゃ速いの」


「金属になって重くなったのに速くなったの?」


 イマイチ理解できないセモリナさんにケイトさんがゴーレムに実演させる。


「ゴーちゃん、セモリナが信じてないからちょっとそこら辺を走ってみて」


「ゴレ!」


 するとゴーレムは足を上げて歩きもしないのに土煙を上げて地面を滑るように走り出し、身体を前に傾けるとさらに加速を始める。


 その姿はまるでスケート、速度は今までの荷馬車ぐらいの速度じゃなく早馬並みの速度だった。


 おまけに地面に多少の凹凸があっても全く気にせず走りまくってる。


「速えぇ!」


「なによ、これ。なんでゴーレムなのにこんなに速いのよ」


「わたしもメタルゴーレムは王都の祭典で遠目に見ただけで間近に見るのは初めてなんだからわかる訳ないわよ」


 ソイルもセモリナさんもケイトさんもビックリだ。


 既に町長の屋敷からギルド関係者や流通関係者が帰った後で良かった。


 こんなもの見られたら大騒ぎになっていたはずだ。


 ゴレちゃんは足を上げてケイトさんに足の裏を見せると見たことないベルト状の物が回っていた。


「ゴレ!」


「これが走る仕掛けと言うの?」


「ゴレ!」


「なんだかわかんないけど、凄い仕掛けね」


 ケイトさんが本格的に調査し始めようとしてるけど、ソイルは大切なことを思い出した。


「調べるのは後にしてブレイブの加勢に行かないと!」


「そうだったわね。ここにメタルゴーレムの集団を置いておく訳にも行かないからリヒト村に行きましょう!」


 ソイルたちとメタルゴーレムの集団はリヒト村を目指す。


 *


 ブレイブとローズは早馬に乗り、リヒト村を目指していた。


「ローズ飛ばすぞ! ソイルの野郎が来るまでにケリをつけてやる」


「修行しまくりで、もうソイルくんよりブレイブの方が強いもんね」


「無駄口叩くなら仕事が終ってからにしてくれ」


「そだね」


「しっかりと俺に掴まっておけよ!」


「うん!」


 ブレイブたちは街道を疾走する。


 *


 途中、黒ずくめの男がリヒト村へ走っていくのを見つけた。


 ローズが声を潜める。


「どう見ても怪しいよね」


「多分、俺たちがウッドストックに到着するのを報告する伝令だ」


「足止めしてみるね」


「頼む」


 ローズは伝令の足元に矢を打ち込むと反応がすぐにあった。


「なに奴?」


 伝令は振り向きざまにナイフを3本投げてくる。


「あぶねえ!」


 ナイフは風を切り馬を目掛けて放たれたが、ブレイブの剣捌きによって避けることが出来た。


 だが男の攻撃はそれだけでは済まない。


 今度は大きなジャンプをして街道横の大木に飛び乗ると、再びナイフを投げて来て高笑いをする。


「ふははは! 伝令途中に邪魔をしてくるとはウッドストック町長の手の者か? だが森でこの俺様に喧嘩を売るとは自殺行為! 俺の強さと己の弱さを認識できなかった未熟さをあの世で悔いろ!」


 そう言って更にナイフを5本投げてくるが……。


 すぐに大木から男は落ちた。


「あいつ話が長いから、あいつの投げて来たナイフを投げ返したら当たって落ちたな」


「口動かすなら手と足を動かせばいいのに。わたしもボウガン3発撃ったら全部当たってた」


 ブランとの訓練で伝令相手なら圧倒出来る実力を手に入れた二人である。


 伝令役の悪党を倒したローズはほっと一息をく。


「これで人質となっている村人の命は安心だね」


 一安心しリヒト村に着いたブレイブたちを待っていたのは静寂だった。


 村には住民どころか悪党の姿も見えない。


「まさか村人が皆殺しにあった後なのか?」


 もう少し急げば良かったという気持ちと、最初から悪党が人質の命を守る気なんてなかったんだろうという気持ちが入り混じる。


 でもローズはまだ村人は生きているんじゃないかという。


「だって、死体が一つも転がってないじゃない」


「確かにおかしいな」


「わたしが調べてくるから、ここで待ってて」


 ローズはきっと村人はどこかの家の中に囚われてるはずだといって、一軒ずつ家探しを始めた。


 こんな時は狩人のスキルである気配遮断の『隠匿』スキルを持っているローズの出番だ。


 村長の家らしき一番大きな家を調べたローズは口を押さえながら手を振った。


 どうやら人質は村長の家に囚われているようで、声を出すなと言うことらしい。


 ローズは早足で戻ってくると村の入り口で待っていたブレイブに報告する。


「で、どうだった」


「見つけたよ。悪党10人で村人30人が村長の家の大広間に拘束されていた」


「そうか。俺は正面から乗り込むから、ローズは援護を頼む」


「わかった。わたしは天井裏から援護するね」


 ブレイブは注意が全て自分に向かうようにわざと大きな音を立てて大広間に乗り込む。


 悪党が人質に手を掛けようとしたらローズが視界外の梁からボウガンで射貫く作戦だ。


「みんな助けに来たぜ! 悪党ども! てめーら全員ぶっ殺してやる!」


 悪党は突然ブレイブが乗り込んで来たことで慌てふためく。


「敵襲か? ぐはあぁぁ!」


 一番に気が付いた男は剣を構える暇もなくブレイブに切り捨てられた。


 人質を取ろうとした悪党は次々にローズに射貫かれる。


 村人は次々に逃げ、悪党3人だけが大広間に残った。


「外の警備はどうなっている? まさかお前一人で片付けたのか?」


「そんなもの最初からいねーよ。やられるのが嫌で逃げたんじゃねーのか?」


「くそっ! ものども、掛かれ!」


 でも返事は無い。


「あれ? あるえ?」


 3人いた悪党はボスを残して2人ともローズに頭を射貫かれて床に転がっていた。


 一人になった悪党は焼け糞になってブレイブに切りかかった。


「て、てめー! 元Bランク冒険者の俺様の斬撃を受けてみろ! デススラッシュ!」


 デススラッシュとは一点集中一撃必殺の会心狙いの大技。


 当たれば鎧も盾も剣も全て砕かれ危険だが、避けてしまえばなんともない。


 ブランの暴風のような剛剣に比べれは悪党の剣技などそよ風の様なもので避けるのも容易い。


 悪党の剣を避けて間合いを詰めるとブレイブは大上段から剣を振り降ろした。


 すると悪党はなにも言えずにブレイブの剣で真っ二つにされる。


 あっけない結末だった。


「ローズ、悪党は全て片付けたぞ。ソイルが来る前になんとかなったな」


 既にローズは村人を連れて屋敷を出たのか返事は無い。


「あいつはいつも仕事が早いな」


 ブレイブが屋敷を出ようとすると入り口には救出された村人の人だかりが出来ていて、嫌な予感しかしない。


 ブレイブは村人たちに聞く。


「何があった?」


「わたしたちを助けてくれた女の子が……」


 ブレイブが扉を出るとそこには……。


「よう、久しぶりだな!」


 そこには捕まったローズと、以前ゴブリン砦で死闘を繰り広げたゴブリンチャンピオンがいて、屋敷は無数のゴブリンたちに取り囲まれていた。

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