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大ムカデ

 ソイルはシェーマスに畑の整備をお願いする。


「シェーマスさん、新たに畑を作るのをお願いしたいのですが。第二防壁の辺りに土地はいくらでもあるので、畑を耕して大急ぎでジャガイモを作って貰えませんか?」


 ソイルは二つ返事で了解を貰えると思ったんだけど、シェーマスはそんな感じではなく返事を渋っている。


「開墾するのは構わないけど、荒れ地から畑を作るには切り株を引っこ抜いて、石や岩を片付けて、土を掘り返して、ソイル魔法を使って作物を植えられる土にしないといけないからな。結構時間がかかるべ。この村の住民用の野菜を作ってると開墾迄したら時間が足りないべな」


「当面、ウッドストックへはボアを食料として持って行きますから、1か月ぐらいで開墾をお願いできないでしょうか? もちろん、ゴーレムを力仕事の作業要員として貸し出します」


 ゴーレムを貸し出してくれると聞いて、一安心のシェーマス。


 ソイルとはソイル魔法のライバルと認める間柄あいだがらなので弱みを見せるわけにはいけない。


「わかった。畑作りはハーベスタ一番の土魔法使いのシェーマスにまかせるべ」


 シェーマスは自信満々のようだ。


 *


 ジャガイモの事はシェーマスに任せたので、ボア肉を氷魔法で冷凍して運ぶ時のバックパックの耐冷試験をセモリナさんとしようと思ったらケビンとジャズが穴埋めから戻って来た。


 いくらなんでも帰ってくるのが早すぎるだろう。


 ゴーレムになにかトラブルでも起こったのか?と思って聞いてみる。


「ゴーレムにトラブルでもありました?」


「うんにゃ、なんの問題もなく終わったぞ」


「うむ」


 ゴーレムをみると故障してないのをソイルにアピールしてるのかシャベルを振り回して踊っている。


「それにしては帰りが早いような……」


「俺が手を抜いたっていうのかよ?」


「真面目にやった」


「そこまで言うなら、ちゃんと仕事をしたか現場を見に来いよ」


 ケビンに連れられて作業現場に来たソイルとケイトさんとセモリナさん。


 作業はちゃんとやられていた。


「どうだ? 文句ないぐらい完璧な仕上がりだろ」


「完璧」


 ケビンもジャズも仕上がりには自信があるらしい。


 しかし問題はそこではなかった。


 ソイルは作業量を大きく見誤っていた。


 この道路は考えていた以上に穴ぼこだらけだったのだ。


 2~3メトル置きに結構大きく深い穴が開いている。


 平らな部分よりも凹みの方が多いんじゃないかと思えるほどだ。


 ケイトさんも思ったよりも道路が穴だらけであきれている。


「酷い道だと思ったけど、ここまで酷いとは……」


 当然、穴埋め用の砂利の消費も半端なく、ケビンとジャズの道路補修は50メトルもしないで終わっていた。


 まだ、ハーベスタ村に近い個所ならば砂利の補充も簡単に出来るが、先に行けば先に行くほど砂利の補充は厳しくなる。


 やはりソイルが先頭に立って砂利グラベルの魔法を使いながら道路補修をしないとダメなのかもしれない。


「想定外の穴ぼこの多さですね」


「そうね。これはちゃんとした道を作った方が早いレベルかもしれないわ」


 でも、のんびりと道路を作ったりしてたらウッドストックの住人が飢えてしまう。


 道路を作る案は今は却下だ。


「なにかいい案を考えないと……」


 出来れば穴の開いた道路をそのまま走る方法は無いか?


 馬車ではサスペンションが無いとこの道を走るのは厳しい。


 ゴーレムならなおさらだ。


 ゴーレムでこの穴ぼこを克服するにはどうすればいいだろうか?


 新たに召喚するには魔法陣が必要なので出来れば今のゴーレムそのままでいく方法は無いものか?


 ソイルが必死に考えていると後ろからケイトさんの叫び声が聞こえる。


「ソ、ソイルくん! ム、ムカデよ!」


 目の前には大蛇のような体長10メトルを超える巨大なムカデが鎌首を持ち上げ無数の足をうごめかせて考え事をしていたソイルに急接近し食らいつこうとしてた。


 気が付いたセモリナさんが飛び込む。


 セモリナさんが強烈な蹴りを放つと大ムカデの頭はひしゃげその場に倒れ込んだ。


 頭を切り落とすと、道路わきに大ムカデの残骸を放り投げる。


「ここは村の外だからぼーっとしてたらダメよ。この大ムカデは弱いけど毒持ちだから噛まれたら毒で苦しむことになるわ。さ、村に戻りましょ」


「は、はい。でも、今のムカデのお陰で解決策が思い浮かびました」


 ソイルは大ムカデからこの悪路をものともしない運搬方法を思いついたようだ。

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