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ソイルの妙案

 翌朝、日の出とともにハーベスタ村に大急ぎで引き返すことにしたソイルたち。


 帰路はブランさんの早馬に乗っている。


「ソイル、お前はウッドストックの食料事情をたった三日で改善できると言ったが、どんな手を使うつもりなんだ?」


「食べ物が無いなら、ハーベスタ村から運べばいいんですよ」


 ハーベスタ村からの物資輸送ならブランも考えた事だが、道路がまともに整備されていないので大量の荷物を載せての荷馬車の走行は無理に近い。


 ソイルの妙案はその程度の事だったのかと、ブランはガックリと肩を落とす。


「ソイルの言いたいことはわかるが、この荒れた道に荷馬車を走らせるのは無理だろう。それにウッドストックの馬車運送は運送ギルドが牛耳ってるから町の周辺まで乗り入れが出来ないんじゃないのか?」


「運送手段に馬車が使えないなら、馬車ではなくゴーレムを使えばいいんです」


「ゴーレムをか?」


 ブランはソイルから思いもしなかったゴーレムという言葉を聞いて一気に興味を惹かれた。


「ゴーレムは馬よりも足は遅いですけど、馬車と違って魔力さえつぎ込めば不眠不休で歩き続けられるのでウッドストック迄1日で運送出来ます。運搬には積載用の専用アタッチメントが必要ですが力は大木を運べるほどでお墨付きです」


「面白いアイデアだな。でも普通の馬車も走れない穴ぼこだらけのこの道をゴーレムで運搬出来るものなのか?」


 荷馬車でこの道を走る場合は悪路走行用のサスペンションの付いた荷台でないと走れない。


 馬車が走れない道をゴーレムが歩けばすぐに転倒してしまうだろう。


「多分今のままでは無理でしょうね」


 でもソイルには策があった。


「舗装した完璧な道路を短期間で作ることは無理ですが、穴を埋め立てて平らにならす事ぐらいはゴーレムでも出来ます。事実、防壁の建設では穴掘りをしてもらいました」


「道を均せるのか。ゴーレムはなんでも出来るんだな」


 俺よりも使えるじゃねーかとブランさんは笑ってる。


「むしろゴーレムが出来ること以外で村の皆さんに手伝って貰いたいことが沢山あります」


「どんなことだ?」


「一番にしてもらいたいことはシェーマスさんに食料を作ってもらいたいです。当面は魔獣の肉を食料として運搬するつもりですが、さすがにウッドストックの住人2000人分の肉を送り続けたらさすがの魔の森の魔獣も絶滅してしまいます。農作物を作るか、牧場を作るか、なにか策を考えないといけないと思います」


「まあそう言うことになるな。俺はなにをすればいい?」


「ブランさんには護衛をお願いします」


「護衛か? まさかゴーレムの護衛をしろとか言うんじゃないだろうな?」


 ソイルは笑いかける。


「そのまさかですよ。絶対に運送ギルドからの妨害が入ると思うので、ブランさんとブレイブたちにはゴーレム輸送団の護衛をして貰いたいです。さっき言ったようにゴーレムは足場が悪いと歩けなくなるので、道に穴を空けられたらそれで終わりです。なので道の監視が必要です。またゴーレムから食料を盗まれるかもしれないのでゴーレムの監視も必要です」


「わかった。ゴーレムの護衛は任せてくれ」


 話が耳に入ったのか隣を走っていたセモリナさんが聞いてくる。


「わたしはなにをすればいい?」


「セモリナさんには魔法での協力をお願いします」


「魔法で攻撃すればいいの?」


「いえ、攻撃ではありません。ウッドストック迄1日掛けて魔獣の肉を運搬するので普通に運ぶと肉が傷んでしまいます。そこで氷魔法で冷やして肉を運んで欲しいんです」


「凍結運搬ね。わかったわ」


 ケイトさんも聞いて来た。


「わたしはなにをすればいい? ソイルくん専用の抱き枕?」


「そんな訳ないでしょ!」


 毎度のブレないケイトさんにソイルが苦笑いをする。


「ケイトさんには色々お願いしないといけません。まずはゴーレム召喚用の魔法陣を追加で10枚は描いて欲しいです」


「10枚? あれは一枚描くのも結構な重労働なのよ」


「そこは何とか頑張ってください。ケイトさんしか頼れる人はいないんです」


「10枚はきっついなー」


 ブランさんもケイトにお願いする。


「ケイトさん、すまないがソイルの無茶ぶりに付き合ってくれないか? 必ずそれに見合う報酬は払うから……俺からの頼みだ。聞いてくれ」


「そこまで言われて断ったら女がすたるわね。いいわよ頑張るわ」


「ありがとう、姉ちゃん」


「ケイトさんには魔法陣だけじゃなく、ゴーレム輸送団のメンテナンスもお願いしたいんですが、いいですか?」


「メ、メンテ迄?」


「無理ですか?」


「本当は魔法陣描くので精いっぱいなんだけど、ソイルくんからの頼みならやってやるわよ。ケイトおねえちゃんに任せなさい!」


「ありがとうございます」


「他にも村のおばちゃんたちにも手伝いをお願いしたいんですが、ブランさん協力して貰えるようにお願いできますか?」


「村の皆に協力してもらうように頼んでおく。お前だけが頼りだ、頼むぜソイル!」


「任せて下さい!」


「前と違って男らしいいい返事が出来るようになったじゃねーか」


 ソイルはブランさんに男として認められて誇らしい。


 やがて早馬はウッドストックを救うという希望をのせて、ハーベスタ村に到着するのであった。

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