伐採
「男なんだからもっと景気よく飲みなさいよ」
「うちの旦那なんて樽ごとワインを飲むわよ」
「あんたはそのあと激怒して三日ぐらい旦那を家から閉め出したんじゃなかったっけ?」
「そうだったかしら? おほほほ」
あれからソイルの歓迎会が行われた。
おばちゃんたちにおもちゃにされて飲めない酒を飲まされまくるソイル。
当然ヘロヘロになって一人じゃ歩けず寝室まで運んでもらったんだけど、朝になると下着姿のセモリナさんとケイトさんがソイルを挟んで添い寝してる。
ケイトさんは胸の開けた下着を着ているので大事な胸の膨らみが完全に丸見えになってるし!
ソイルが飛び起きたその拍子にセモリナさんも目を擦りながら起きたので聞いてみる。
「ぼ、僕、昨日の夜になにかとんでもない事やらかしました?」
下着姿の女の人が添い寝してるなんて状況的には完全にエッチなことをした事後で、酔ってる間に破廉恥行為をしたのかとソイルはパニック状態だ。
するとセモリナさんがケイトの頭を鷲掴み。
「こいつがソイルくんが寝てるのをいい事にとんでもない事をしようとしてたのよ」
「いたい、いたい。頭われちゃう、中身出ちゃう。ご、ごめん、反省しています。もうしませんから許して下さい」
セモリナさんに頭を鷲掴みにされたのが余程痛かったのか泣き叫ぶケイトさん。
なにをされようとしてたのは結局分からず終いだ。
*
二日酔いで痛む頭を押さえつつ朝ごはんを食べ終えると、セモリナさん、ケイトさん、ソイルの三人で今後の開拓方針を話し合う。
ソイルは議長のケイトさんに相談する。
「大きな問題だったゴブリン砦の問題は片付いたんですが、これからどうします?」
「防護壁を作らないといけないのは第一の重要課題と解ってるけど、その前にこれをどうにかしないとね」
ケイトさんは庭の外に鬱蒼と生えている木を指さす。
この森には魔獣が潜んでいて、先に防御壁を作ってしまうと厄介な事になりそうとのこと。
「木を切り倒して、岩をどかして平地にするのが最初の仕事かな」
と言うことで第一の仕事は伐採になった。
セモリナさんと魔の森に生えている木の伐採をすることになったんだけど……。
「この木は妙に固いわね。100回ぐらい斧を振るわないと切り倒せないし、倒した木を防御壁の建築予定地の外まで持って行くのも大変よ」
木を切り倒すのはともかく、枝を払って材木置き場まで運びに行くのがかなりの重労働だった。
一時間に3本運ぶのがいい所だ。
「これじゃいつまで経っても終わらないわよ。火魔法で森ごと燃やしちゃおうかしら?」
杖を構えるセモリナさんをソイルは必死に止める。
「止めて下さい! 山火事になって森だけじゃなく村まで丸焦げになります!」
「じゃあどうすればいいのよ? 朝からずっと伐採してるのに、倒した木はたったの10本。もう疲れ果てたわ。ソイルくんなんとかして」
「土魔法じゃどうにもなりませんよ。地道に切り倒して運ぶしかありません」
進まない作業にセモリナさんが駄々をこね始めた。
最初は清楚なお嬢さんと思ったのに、ソイルの前では年相応の女の子の姿を見せてくれるのが嬉しい。
そんな二人の前に今までどこに行ってたのかわからなかったケイトさんが現れた。
しかも凄く誇らしげであった。
「諸君のその問題を解決しよう」
手には見慣れた紙の束を持っている。
ゴーレムの魔法陣だった。
「これでゴーレムを作って、伐採をやらせるの」
「そんないいものあるなら最初から出しなさいよ」
「昨日ソイルくんに夜這いを掛けた時にセモリナに半殺しにされて描く時間がなかったというか、なんというか」
ケイトさんはごにょごにょと語尾を濁している。
早速ゴーレムが呼び出されて8体が召喚。
ゴーレム1号と2号をリーダーにして作業をさせることにした。
ゴーレムの作業はソイルたちと速度的には変わらなかったけど、ケイトさんが魔法陣を追加して100体にゴーレムを増やしたのと昼夜を問わず黙々と不眠不休で作業をしたので一週間ほどで伐採作業は終る。
村の周りから木々や岩がなくなりやたら見通しが良くなった。
まるで平原にぽつんと佇む村のようだ。
「ゴンちゃんたちありがとう!」
ちなみに『ゴンちゃん』というのは1号のあだ名である。
ご褒美にソイルがゴーレムたちに魔力を補充すると黒光りする。
――魔力の注入を確認しました。魔力が満タンです。これよりレベルアップの判定を開始します。
――ゴーレム1号の作業経験値が溜まりましたのでレベルが121上がりました。
――ゴーレム1号のレベルは100を超えました。ロックゴーレムからダークゴーレムに進化します。
――ゴーレム2号の作業経験値が溜まりましたのでレベルが120上がりました。
――ゴーレム2号のレベルは100を超えました。ロックゴーレムからダークゴーレムに進化します。
――ゴーレム3号の作業経験値が溜まりましたのでレベルが101上がりました。
――ゴーレム3号のレベルは100を超えました。ロックゴーレムからダークゴーレムに進化します。
――ゴーレム4号の作業経験値が溜まりましたのでレベルが100上がりました。
――ゴーレム4号のレベルは100を超えました。ロックゴーレムからダークゴーレムに進化します。
――ゴーレム5号の作業経験値が溜まりましたのでレベルが100上がりました。
――ゴーレム5号のレベルは100を超えました。ロックゴーレムからダークゴーレムに進化します。
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ゴーレムのボディが赤茶色いレンガ色の岩から固そうな黒光りする岩に変わって見た目だけはすさまじく強くなったように見える。
伐採作業でレベルが上がりまくるゴーレムたちであった。




