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ブレイブの意地

 息を吹き返したゴブリンチャンピオンは辺りを見回す。


「辺りには小僧一人か。死体番でもしてたんだろうが運が無かったな小僧よ」


 ゴブリンチャンピオンはにたりと笑う。


「俺の復活の生贄いけにえになるとはな」


「ほざけ! 俺の剣のさびになるのはお前の方だ!」


 ブレイブは槌を捨てて剣に持ち替える。


 ゴブリンチャンピオンはその槌を見逃さなかった。


「砦をぶっ壊したかたきは小僧だったのか!」


「それがどうした?」


 ゴブリンチャンピオンは喜びが隠しきれないようだ。


「なんという好機! 我が妻子を砦崩壊と共に落盤でダンジョンの奥底に葬り去ったこの恨みを晴らせるとは! 獣神様は俺を見捨てていなかった!」


 どうやらブレイブの一撃でゴブリンが住んでいた地下ダンジョンを砦ごと崩壊させたのがゴブリンチャンピオンに恨みを買った原因らしい。


「やられるのはてめーの方だ!」


「小僧は剣士だろうが?」


「それがどうした?」


「剣士の格好をしながら魔法使いだった搦め手を使う奴には油断し遅れを取ったが、こぶしと拳の真っ向勝負なら負けはせん!」


「それは俺の剣を受けてからもう一度言うんだな!」


 ブレイブはいきなり切りかかった。


「ラピッドチャージ! おら、おら、おら、おらあああ!」


 斬撃がゴブリンチャンピオンに無数の切り傷を刻み込む。


 ゴブリンチャンピオンは無意識に受け身を取ってしまい防戦一方だ。


「口だけでは無いようだな。ならば必殺の……」


「嘘を吐くな。お前はもう必殺技を使えないはずだ」


 ソイルとの戦いで必殺技の『剛力解放』を使ったのでもう必殺技を使う程の体力は残ってないはずだ。


 だがゴブリンチャンピオンは必殺技を発動した。


「金剛開放!」


「なっ!」


 防御力激増の金剛開放によりゴブリンの身体が鋼のように固くなり黒光りをする。


「なぜ必殺技が使える?」


「なんの考えも無しに地面に突っ伏していた訳ではない。気絶から復帰した後も体力回復をしていたのだ。とっとと首を跳ねておけば良かったな」


 ゴブリンチャンピオンが言う通り、殆ど体力を回復したようであれだけ深かった胸の傷も塞がりかかっていた。


 上位のゴブリンになると様々な技を使え、魔法を使えたり、人間と話せたり、時間と共に体力が回復できる技などを使えるという。


 ゴブリンチャンピオンはブレイブの攻撃を跳ねのけ、一方的に攻撃し始めた。


 ゴブリンチャンピオンは目の前の小僧が恐れおののくかと思いきや、笑い出してる姿に逆に動揺する。


「あははははは!」


「恐怖で気でも狂ったか?」


「ソイルと同じく万全な状態のゴブリンチャンピオンと戦えると思うと嬉しくてな。いくぞ! おら、おら、おらあああ!」


 ブレイブが切りかかるが傷は浅い。


「身体を鋼のように固くする技だ。小僧の剣はもう効かん」


「そのようだな。でも俺にも必殺技がある」


「なんだと!」


 ブレイブは必殺技を発動した。


「剛力開放!」


 それはソイルとの戦いでゴブリンチャンピオンが使った必殺技だった。


「小僧もその必殺技を使えるのか?」


「こんなもの火事場の糞力だろうが! 誰でも使えるわ!」


 それは見様見真似の必殺技の真似事。


 しかし効果は本物だった。


「どりゃどりゃどりゃどりゃああああ!」


「うごうごうごおおお!」


 鮮血に染まり始めるゴブリン。


「確かに効くが、その技では俺には勝てん」


「いや勝てる!」


 ブレイブがとどめを決めようとした時、村長が乱入してきた。


「やめい!」


 ゴブリンチャンピオンは村長ブランの一撃を顔面に受けてお空の星になった。


「村長、なんで俺とゴブリンのガチの勝負に割り込んでくる。答えによっては村長でも許さねーぞ!」


「ブレイブてめぇ、剛力解放を使っただろ?」


「すげーだろ」


「バカ野郎!」


 ブレイブはぶっ飛ばされた。


「その技はな、生命力と引き換えに大技を繰り出す必殺技だ。ゴブリンの上位種みたいな体力バカなら普通に使えるが、人間が使ったら攻撃の度に生命力を削り、終いには生命力を使い果たして死ぬぞ!」


「な、なんて技なんだよ……」


 ブレイブは自分が使っていた技が生命力を削り取る技だったと知り愕然がくぜんとする。


 そしてポツリと呟いた。


「ソイルに負けたくなかったんだよ」


 村長はブレイブを抱きしめる。


「その為の修行だろうが。明日から頑張れよ」


「おう」


 ブレイブは翌日から本気で修行を始めることとなった。

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