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櫓のゴブリン

 突如櫓の方角から煙が上がる。


「あれはなんだ?」


「まだ敵でも残っていたのか?」


「行ってみよう」


 ソイルが砂山に突っ込み砂煙を上げたことで異変に気が付く村人たち。


 続々と村人が櫓の周りに集まりだす。


 するとそこには巨大なゴブリンがいた。


「なんだ、あれは?」


「なんて巨大なゴブリンなんだ」


 村人が口々に呟く。


 ブランはその正体を知っていた。


「こいつはゴブリンチャンピオン。前回の砦の討伐の時の生き残りだ」


 この村が出来る前、占拠された砦の討伐をブランたちが行った。


 砦は完全に制圧したはずなのにゴブリンたちは半年も経たずに元通りの数まで復活した。


 村が出来た後も数度砦を制圧するもののゴブリンたちは同じように復活する。


 別の場所にボスが隠れ生き残っていたんではと噂されていたが、姿は見えず。


 ゴブリン自体危険度の低い敵だから最近は放置していたけど、まさかそのボスが目の前に現れるとは……。


 おばちゃんたちが気炎きえんを吐く。


「村長、砦のボスが現れましたよ。やっちゃいましょう」


「これで目障りなゴブリンに悩まされることはなくなります」


 だがブランは自分では倒す気はなく、ソイルに任せるようだ。


「こいつはソイルの嫁になるセモリナに手を出したからソイルの獲物えものだ。手を出すことは許さん!」


 村民たちが人垣を作りソイルとゴブリンチャンピオンを取り囲む。


 これだけの数の村民が集まればゴブリン最強のゴブリンチャンピオンと言えど余裕で倒せる戦闘力なのでこの時点でゴブリンの命運は尽きた。


 ブランはソイルに指示を出す。


「お前も男なら好いた女ぐらい守ってみせろ」


 ソイルは無言で頷く。


 背中で語る姿を見てセモリナさんはソイルに更に惚れた。


「ソイルくん……」


 それを見ていたゴブリンチャンピオンはいい気分がしない。


 なにしろゴブリンにとったら自分の家族や仲間を殺したかたきだ。


「いいだろう、お前ら全員ぶっ殺してやる!」


 チャンピオンは転がっていた丸太のような物を拾うと棍棒のように振り回しソイルに打ち込む。


「死ね! 死ね! 死ねい!」


 だがソイルは涼しい顔をして剣で受け流す。


「なぬっ!」


 ひょろっとした男に自分の攻撃が全く効かずチャンピオンの顔に焦りが見える。


 チャンピオンは覚悟を決め、村人相手に放つつもりだった技を使う。


「ならば……剛力解放!」


 突如ゴブリンの筋肉が盛り上がる。


 特に腕が大きく膨れ上がり、腕と拳が元の10倍ぐらいの大きさに跳ね上がる。


 その技の正体をブランは知っていた。


「生命力を筋力に変換する技だな。火事場の糞力って奴だ」


 チャンピオンは丸太を捨てて巨大な拳でソイルに殴りかかった。


「粉々に殴り潰されろ!」


 巨大な拳が途轍もない質量をもってソイルに襲い掛かる。


 ソイルはその巨大な拳を自らの手のひらで受け止めた。


「俺の必殺の拳を? 手のひらで? あり得ん!」


 ソイルはその種明かしをした。


 レンガだ。


 ソイルは魔法でレンガを生成、それを手のひらに持っていた。


 ブレイブたちなら破壊可能だったレンガもゴブリンチャンピオンでは傷を付けることも出来なかった。


「俺の恋人に手を出した報いを受けろ!」


 ソイルはそのままゴブリンチャンピオンを袈裟切りにする。


「ぐはぁ!」


 地面に突っ伏すチャンピオン。


 ソイルはゴブリンチャンピオンを倒した。


 *


 ブレイブはソイルを見て悔しくて震えが止まらない。


「野郎、一人でゴブリンのボスを倒しやがった」


 悔しがるブレイブを見たブランが声を掛ける。


「悔しいか?」


「あったり前だろ。チャンピオンが二匹いれば俺にも倒す機会があったのに……」


「お前の震えが一番わかっているはずだ。お前にはゴブリンチャンピオンを倒せる実力はなかった」


 村長に指摘されて震えの意味を意味を知る。


 悔しくて震えていたのではなく恐怖で震えていたことに……。


「どうすればあそこまで強くなれる?」


「さあな……」


「はぐらかすんじゃねぇ!」


 ブランの胸倉に掴み掛るブレイブだがブランに腕を振り払われた。


 ブランは腕を組み考え込む。


「ソイルは母親の剣聖の血を引いているせいで強いからな。お前には敵わん」


「でもソイルを超える方法はあるんだろ?」


「俺にはソイルを超える方法はわからんが修行をするしかねーな」


「修行か……」


 ブレイブはその時から剣の修行にのめり込み始めた。


 *


 村人がソイルの歓迎会をしに村長宅の庭に集まりだしたころ、取り残されたブレイブとケビンの前でむくりとゴブリンチャンピオンが立ち上がった。


 なんとゴブリンチャンピオンが生き返ったのだ。


「なっ! 死んだんじゃないのかよ?」


 一番早く気が付いたのはケビンだった。


「ソイルの馬鹿野郎、首を落とさなかったんだな!」


「村長を呼びに行こう」


 ケビンが村長を呼びに行こうとするとブレイブが止める。


「まて、あいつは俺がやる」


「倒せるのかよ?」


「ソイルに倒せたんだから俺にも倒せるはずだ」


「あんな強そうなのを一人で倒すなんて無理だろ?」


「いや、俺一人で倒せる!」


 そしてブレイブは続ける。


「ケビンは村長を呼んで来い。チャンピオンの死体を見るだけになるだろうがな」


 ブレイブはゴブリンチャンピオンと戦うことになった。

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