ローズとブレイブ
「ブレイブ。好きだよ」
「お前は幼馴染だから好きだとかそういうのは……」
「うっさい! 女の子が好きだって言ってるんだから素直に受け入れなさいよ!」
「は、はい」
「もう離れないから。好きだよブレイブ」
「お、おう」
「ブレイブもわたしの事を好き?」
「お、おう」
「はっきりと言いなさい」
「好きです、ローズ」
村人の前でローズに抱きしめられるブレイブ。
村人からは既に尻に敷かれているブレイブを見て笑いが起こっていた。
そんな二人を見てソイルも二人をからかう。
「仲いいことで……」
ブレイブは顔を真っ赤にして怒りだした。
「うっせーな、ソイルはセモリナと仲良くしてやがれ」
ゴブリンの退治もあらかた済んだようで、おばちゃんたちによって服を脱がされ薬を塗りたくられブレイブの治療が始まった。
そういえばセモリナさんを櫓の上に待たせたままだったなと思い出すソイル。
櫓に戻るととんでもない光景が待ち構えていた。
櫓を強引に登った巨大なゴブリンにセモリナさんが鷲掴みにされて気絶している。
「セモリナさん!」
ゴブリンが憎しみの籠った声を絞り出す。
「お前ら、よくも俺の大切な妻や子どもを手に掛けたな……この娘も同じ目に遭わせてやる!」
「ま、まて! 話を聞いてくれ!」
ゴブリンを説得し時間を稼ごうとしたソイルだけど、ゴブリンの怒りはソイルの説得が耳に入らない程高まっていた。
いきなり地面にセモリナさんを投げつける!
「嘘だろ!?」
地面へと凄まじい速度で突進するセモリナさん。
このままの勢いで突進したら……想像したくもない。
ソイルが渾身の力を振り絞りダッシュをしセモリナさんを受け止めようとするがどう考えても間に合わない。
このままでは……。
「セモリナさん!」
その時、疾風を超える速度で人影がソイルに追いつく。
村長だった。
「なにしてやがる!」
「すいません。目を離してた隙にセモリナさんがゴブリンに襲われました」
「細けえことは後だ。セモリナを受け止めてこい!」
ブランはソイルを抱えると、セモリナさんに投げつける。
「どりゃあああ!」
すさまじい勢いで投げられセモリナさんへと突進するソイル。
「セモリナさん!」
その声で気が付くセモリナさん。
「え? なになに? ど、どうなってるの?」
セモリナさんは状況がつかめていなかったがソイルは落下するセモリナさんを抱きかかえる。
助け出せた!
間一髪、難を逃れたセモリナさん。
だが、今度はソイルが大木に激突する番だ。
放り投げられた勢いのせいで大木が凄まじい勢いで迫っていた。
やばい!
一難去ってまた一難。
今度はセモリナさん共々大木に叩きつけられてしまう。
なんとかしないと!
必死に考えて頭の中に浮かんだのは砂山の魔法によるクッション。
でも、そんなもので防げるのか?
いや考えている暇はない。
やることをやらないと!
ソイルは魔法を唱えまくってた。
「サンズ! サンズ! サンズ!! ササササンンンンンズズズズズズズ!」
大木の前に巨大な砂山が現れた。
「セモリナさん、不時着するよ。目をつぶってね」
「目をつぶるの? つぶればいいのね」
意味がよくわからなかったけどセモリナさんだけどソイルに従う。
受け身はうまく取れなかったけど、砂山に無事着地。
ソイルは砂山で背中を打ち付けたがセモリナさんは怪我がなくほっと安堵した。
「大丈夫かい?」
「大丈夫だけど、ソイルくんの方こそ大丈夫?」
「しばらくは身動きが出来ないかも」
「じゃあ、わたしの膝枕で寝て。すぐに回復魔法で治すね」
「休む前にしないといけないことがあります」
休むように促すセモリナさんを振り払って、ソイルはよろよろと立ち上がる。
「てめーら糞人間ども、まだ生きていやがったのか!」
ソイルの目の前には怒り狂う巨大なゴブリンが立ちはだかっていた。




