ゴブリン砦討伐
三日後、ソイルの歓迎会をする為に全村民13名に招集が掛かった。
本当は全村民と言えば17人なんだけど、元脳筋パーティーのメンバーにあたる父親たち4名は出稼ぎと言う名の冒険者ギルドからの指名依頼に行っている。
昔はブランさんも出稼ぎに行っていたそうなんだけど、依頼が終わっても次の依頼を受けまくってなかなか出稼ぎから戻って来ないで遊びまわっているのに業を煮やした国王に出稼ぎ禁止令を出されたそうで今はお留守番だ。
13人の村民を前にしてソイルが紹介される。
「こいつはロックの息子でセモリナの婿、俺の息子になる予定のソイルだ。よろしく頼むぜ!」
ブランに背中をバチンと叩かれふらつくソイル。
自己紹介をしろと言うことらしいが、息子や娘経由で噂は伝わっているらしく存在は伝わっているらしい。
ソイルを見て早速井戸端会議を始める奥さんたち。
「あー、あれねー」
「ロックさんとこの勘当されたダメ息子らしいよ」
「なんでも幼馴染との試合に負けて逃げて来たんだとか」
ちょい、そこの奥さん連中!
噂話が聞こえてるから!
僕も昔なら顔を真っ赤にして怒ったんだろうけど、今は成人済みの大人だ。
軽く冗句を挟んで自己紹介する。
「アンダーソン家を勘当された駄目息子のソイルです。よろしくお願いします」
すると奥さん連中は井戸端会議をヒートアップする。
「やっぱ勘当されたのね」
「なにやらかしたのかしら?」
「痴漢よ、きっと痴漢したんだわ!」
「見るからにムッツリな顔してるわね。旦那がいない間に襲われたらどうしましょ?」
ちょい待て!
なんだよその痴漢て!
さっき試合に負けて逃げて来たって言ってて、ここに来た理由を知ってる筈じゃないか。
それに、てめーらおばちゃんを襲うわけ無いだろ!
憤慨してると村長が庇ってくれた。
「こいつはセモリナとキスどころか手も繋いだことのない童貞だからな。その点は安心しろ」
おばちゃん連中はそれを聞いて大人しくなったが今度はブレイブが騒ぎ始めた。
「あいつ童貞だってよ。童貞!」
「あんただって童貞でしょ!」
「いだっ!」
ブレイブはローズさんに思いっきり頭を叩かれてた。
ブランさんが真面目な顔をして話を進める。
「こんなソイルなんだけど、新しい村の家族となるのを祝って、記念にみんなでゴブリン砦の殲滅祭りをしたいと思う」
それを聞いて驚いてるおばちゃん。
「村長、ゴブリン砦に手を出したらまた村が襲われたりしない?」
「今回は完全にゴブリンを一匹残らず根絶やしする予定だから報復の心配はない」
「でもどうやって?」
「ソイルが砦に乗り込んで大暴れして、逃げてきたゴブリンを砦の外で取り囲んだ俺たちが倒すんだ」
村民全員で砦に乗り込むと思ったら違った。
ソイルだけが乗り込むこととなった。
でも大丈夫なのか?
ゴブリンは弱い魔物だけど群れとなると数の暴力で強敵へと豹変する。
そんな強敵の棲み付く砦にソイルが一人で乗り込んで大丈夫なんだろうか?
ブランさんはまたしてもソイルの背中を叩く。
背中を叩くのはブランさんなりの激励らしい。
「その為に盾のマスタリースキルを取ったんだろう。お前の盾の腕前は俺のお墨付きだ。安心して乗り込んで来い」
盾スキルがあっても僕一人で大丈夫なんだろうか?と不安気な表情を浮かべるソイルであったがセモリナさんが笑顔を見せる。
「わたしがサポートに入るから安心して!」
どうやらセモリナさんが手伝ってくれるようだ。
それなら安心だ。
ソイルはほっと胸を撫でおろした。




