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第十三話 作戦開始




 電脳世界の空はランダムで決定されるが、戦いに支障がきたすようなスコールや嵐などの天候はない。

 それでも、今現在飛んでいる電脳世界の空は今にも暴風雨でもきそうな、そんな暗黒な雲が広がっていた。

 そんな風景を一瞥して悪鬼隊はもう一度作戦の確認をする。今現在いる場所は無法エリアより南東の第六十七地区。このまま飛行してテロリストの拠点の真上であるビルに突撃するわけなのだが、どうも無法エリア内ではサーバー内の自動修復プログラムがなく、倒壊したビルが多数見える。

 

 まるで廃都市なのではないかと思ってしまう。


『我々の任務は正面より突撃する部隊の逆からタイミングを見計らって後ろから敵部隊に対して奇襲攻撃を取ります』


 うん、非常に容赦のない攻撃方法だ。だが、戦いに手段を用いている場合ではないということはこの場にいる全ての人間が理解していることだ。


 当然俺だって理解してここにいるつもりだ。人を殺すという意味も。だけど、勘違いしないでほしいのは、俺たちがそう命令されているわけだからではない。

 戦友の為に自らこうして動くのだ。


『敵は既に先鋒突撃部隊に対して多数の攻撃部隊を差し向けているらしく、その規模は把握出来ていません。ですが、どんな自体になっても臨機応変の対応をお願いします。どうか、ご武運を』


 ブリーフィングが終了し、目的地まで距離が短くなってきた。作戦開始時刻までもう少しであろう。

 すると、全ダイバーに向けて通信が入ってきた。


『諸君、私の名はロサンゼルスサーバー、イーグルチームの隊長であるヴァレリア・シュバルツだ。今回の作戦に志願してくれたことを一人の人間として快く思う。フェンリルをここで逃すことになればこの後、多くの無関係な自国の民間人が犠牲になるかもしれん。だからこそ、この戦いに勝ってくれ。以上だ』


 なるほど。決めるときは決めてこいということか。俺たちだって最初からそのつもりである。

 誰も死のうなんて考えている奴は一人もいない。ただ、いつものように戦い、いつものように帰るだけだ。


「それじゃぁ、一丁派手にやりますか」


 拳を握り締める。殆ど実戦などしたことはないが、確かにあの時に手応えはあった。残りは俺の気持ち次第ということであろう。


「千早君、いけそうだね?」


 後ろから有紗に声をかけられた。前回の出撃のような不安そうな表情からは今の彼女からは一切見られず、自信と希望に満ち溢れていた。


「ああ、そっちもやる気満々だな。まぁ、落ち着いて一つ一つの物事を処理していこう。そすれば自ずと見えてくるものもあるだろう」


「うん、その通りだね。頑張ろっか」


 と、次の瞬間輸送機が大きく揺れた。何事かと思って外を見ると何処か遠い場所から光が飛んで来る。


「対空射撃だ!掴まれ!」


 輸送機は地上からの対空射撃を逃れようと旋回し始めるが、既に両翼とコックピットが被弾しており、ゆったりと地上へ落下していくただの箱へと成り下がってしまった。

 俺たちは瞬時に固定椅子に座ってベルトを締める。同時にガクガクと激しい揺れが中にいる俺たちを襲う。

 輸送機はそのまま墜落していき、廃墟と化したビル群へと突っ込んでいった。激しい衝撃とともに先端部分が瓦礫を押し退け、道を作っていくが、それでも翼がもがれ、機体は激しく損傷したまま止まった。


 清寂の後、俺は息を吐きつつ言った。


「つぅぅ・・・」


 最後の衝撃によって椅子の留め具は破壊され、完全に俺の体はほうり投げられていた。


「くぅ・・・千早君、大丈夫?」


 見れば有紗が俺の上に倒れており、ムクッと体を起こして俺の無事を確認する。見れば工藤隊長や七宮先輩たちも無傷のようで立ち上がる姿がよく見える。


 有紗も俺の上から退き、立ち上がった。


「あーあー、目的地までの足がなくなっちゃった」


 そんな風に工藤隊長がぼやいた。確かに幾らここが目的地周辺であったとしも歩いて行くとなると話は別である。

 かなりの距離があると想定して問題はなかろう。


「まぁ、所詮は自立プログラムだから複雑な回避運動なんて出来ないよね」


「それで、どうします?隊長」


 七宮先輩が今後の俺たちの行動方針について聞いた。

 俺たちのような末端の部隊がやられたとしても作戦自体に大した被害はないだろう。だが、それよりも重大なのはいるはずのない敵の地上兵器がいるということだろうか。


 工藤隊長は目標であったビルのホログラムを展開する。


「恐らくこのビルを中心として対空防衛システムが至る所に展開中しているんだと思う。多分、私たち以外の殆どの部隊も空でやられた可能性が高い。まぁ、ミサイルで攻撃されなかっただけマシかしら。そうだと今頃空の上で散ってたから」


 確かにそれは怖いな。機銃である意味良かったと思う。


「けど、私たちみたいに生き残った部隊もいないわけじゃない。その部隊との合流も兼ねて、敢えて敵防衛戦を突破する必要がある。最終目標地点は敵拠点。何も変わらいなわ」


 工藤隊長がそれだけ言うと俺たちは各自AVSを展開させ、索敵モードのまま行軍を開始する。

 敵地上兵器は何も対空システムだけではないだろう。それを守る守備戦力なども置いていると思う。


 そうなってしまえば彼らとの正面衝突は時間の問題ではないかと思った。


「上手く、味方先鋒部隊が敵を引きつけてくれているといいんだがな。いや、変な期待は止めておこう。我々は作戦通りこれより敵陣背後から拠点であるビルに突撃。突撃後はテロリストの拘束、及び殺害にある。各自、出撃!」


 工藤隊長を先頭にして走り出した。既に先鋒部隊と敵の戦闘が開始されているらしく、向かい側より戦闘音が聞こえてきた。

 と、警報が鳴る。みれば前方からの敵のウイルスが接近して来ていた。直ぐに有紗は物陰に隠れてスナイプし、俺と隊長、七宮先輩は敵の前に躍り出る。


「はぁっ!」


 正面のウイルスを切り倒し、横からきた敵を蹴り上げて空中で貫く。少しばかり悪かった動きもここまでくれば少しは見栄えがよくなってきたようで、少しはスムーズに敵を倒すことが出来るようになっていた。

 それは有紗も同じようで先ほどから何発も敵に命中して、次々とウイルスどもを葬っていく。


 これなら何とかなるかもしれない。

 今のこの状況に少しだけ頬が緩んだ。












 戦況は良いとは言えなかった。突如現れた敵ダイバー部隊によって戦線はかなり混乱していた。

 だが、だからこそ俺が一番しっかりしなければならなかった。襲ってきたテロリストの一人の頭を掴み床に叩きつけ、拘束ベルトで拘束する。

 既に味方の損害が三割を過ぎた頃であり、第一防衛ラインでここまで苦戦していては敵

本体も中々こちらには向かってきてはくれないだろう。


「舐めるな!ただのテロリストが!」


 背後からの一人を屠り、更に同時に斜めから攻撃してきた二人は背後からの部下たちに任せる。

 作戦開始から三十九分が経とうとしていた。

 敵が少なくなってきたところで、こちらの持っている修正パッチをあてる。直ぐにバグがおさまると、正面からの敵のウイルスたちが迫ってきた。


「トマホークリーダー!そっちはどうだ!」


『こっちはある程度は片付けたぞ!だが、敵の防衛ラインより多数のウイルスを確認。真っ直ぐこちらに向かってくるぞ!総数二千体!』


「ああ、見えているよ。各自、前方ウイルスに向けて迎撃体制を取れ!」


 俺の指示により残った部下たちがAVSを構えて接近してくるウイルスを迎え撃つ。数が思った以上に多いらしく、こちらとしてもさばききることは出来なさそうだ。


 だが、このままいけば味方増援部隊が来てくる。

「クライシスリーダーより各自へ。もう少しすれば味方増援部隊が来てくれるはずだ。ここが踏ん張どころだ!」


「「「「おお!」」」」


 各自、威勢の良い声で返事をしてくれる。しかし、支援を行う味方増援部隊がこちら側にくることはなかった。










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