94日目
スープ鍋が壊れたため、本日は臨時休業とした。
妻と相談し、これ以上らぁめんが作れないと説明した。
師匠から鍋を借りるとかの対応はできないかと聞かれたが、誰かが丹精込めて育てた鍋を、よそから借りることなど、出来るわけがない。
スープを使用しない、油そばという形での提供はどうかとも聞かれたが、そもそも油そばなど、作ったことが無い。
妻が言うには、このまま閉店するのではあまりにも不義理で、次に改めて開業したとしても、あちこちに支障が出る、とのこと。
そうは言っても、これ以上納得のいくらぁめんは作れない。
もちろんチャーハンやギョウザなどは提供できるが、らぁめん無しで、素人に毛が生えた程度の中華料理など誰が食べたいだろうか。
そんなことを2人で話し合っていると。
横から、娘が、口を出してきた。
「らぁめんを作れなくて。
それでも何かを出さなくちゃいけない。
そして、お父さんの納得出来る料理しか出せないっていうなら。
らぁめんじゃない、お父さんの納得できる料理を、出せば良いじゃない。
ほら、パンケーキ、とか」
~らぁめん『七転八倒』店主 にを~
※らぁめん『七転八倒』
東京都△△区に居を構える、優しく明るい雰囲気のらぁめんや。
らぁめん屋だが、鍋が壊れたので、らぁめんはもう作れない。
もうどうでもいい。
閉店予定。
潰れるまで、あと6日。




