理沙 花言葉と君と温もり
昨日の最終回っぽいタイトルでは終わらないと言ったな?
あれは本当だ
二人で歩く帰り道、公園を横切ると、綺麗な花に視線を奪われる。
「ねえ、由実、このお花かわいくない?」
赤くて、たんぽぽにも似た雰囲気のお花に近づく。
「そうだねぇ、でも触っちゃだめだからね?」
由実の注意は、1秒だけ遅かった。
「ったぁ……」
茎に触れた途端、針の山に触れてしまったように痛くなる。
「もう、理紗ってば大丈夫!?」
痛がる手を手に取った由実に、――指を吸われる。
「う、うん、ありがと・・・」
痛みじゃなくて、驚きと恥ずかしさで、頭がいっぱいになっていく。
いつだったか、由実が怪我したときにこんなことしたときがあったな、なんて思い返す。
「これね、あざみっていう花なんだよ?」
「へぇ~」
ちょっと待ってね、とスマホを取り出して調べる由実。
「花を取ろうとして痛くてびっくりして『びっくりする』っていうのの昔の言葉が元になってるんだって」
「へー、そうなんだー」
昔の人もこんな風になっちゃったのかな、なんて思いをめぐらせるなんて、うちらしくないかも。
きっと、二人でいるからなのかな。幸せな時間を、噛みしめていたいから。
「花言葉とか、あったりするのかな……」
「あるみたいだよ?」
「へぇ、どんなの?」
そう言うと、由実はちょっと躊躇する様子を見せていた。
「『触れないで』」
胸が締め付けられるように痛くて、体が急に重くなる。
何で、急にこんなこと言われなきゃいけないの?
もう、由実と一緒にいられないの?
ふと、体に温もりが触れる、抱きしめてくれる由実の体は、甘いにおいを纏ってる。
一瞬で冷やされた心は、由実の熱で温まる。
「もう、理紗?ただの花言葉だよ?」
そう言われて、はっと気づく。
ほっと、体が軽くなる。へたり込みそうな体を由実が支えてくれる。
「もう、由実、おどかさないでよぉ……っ」
ほっとした途端に溢れた涙を、そっとぬぐってくれる由実の手。
誰よりも優しくて、心の内からうちの事を暖めてくれる。
「もう、私は、もっと理紗に触れてほしいんだよ?」
「由実ぃ……っ」
ああ、もう、大好き。
抱きしめあって、触れられる喜びを分かち合う。
そのまま、キスしてしまいたくなる。唇を、由実に近づける。
戸惑ったように由実は目線を逸らして、それからこっちに向き直った。
「誰もいないし、……しても、いいよ?」
止まりかけた体を、もう一度由実に近づけていって、そのまま唇を重ねた。
一瞬で離して、顔を見合わせると笑顔が見えた。
帰り際、百合の花が二つ寄り添うように咲いているのを見つける。
「うちらみたいだねぇ」なんて笑うと、「そうだね」って笑い返して、うちの肩に寄りかかってきた。
あと5話くらいなのでお付き合いください。
できれば感想ください。




