シスコン VS バカ
まだまだおバカな掛け合い続きます。
赤い騎士を倒したことで俺たちは上級コースで受講することになった。
上級コースの講師はユーリ・バルロットという名前だった。
バルロット先生は上級コースを受講する生徒十人それぞれに視線を移す。
その中の二人は俺とヴァルだ。
「まずは剣術の授業を選んでくれたことを嬉しく思う。君たちはその中でも特に見込みがある生徒だ。これから鍛えていけば一流の剣士、もしくは騎士になれる可能性が高い。そのために努力を惜しまず、厳しい訓練にもついてきてほしい」
「はい!」
「頑張ります!」
「どんな厳しい訓練でも絶対について行きます!」
などなど、生徒たちの方も張り切っている。
赤い騎士を倒しただけあって、新入生の中でもこの八人はかなり使えるようだ。
だいたいヴァルと同じぐらいだろうか。
ヴァルも猪突猛進なところを直せば結構強いと思うんだけどな。
そこは今度の課題としておこうか。
……性格的にそれが矯正出来るかどうかは微妙なところだけど。
「よし。ではまず一人、わたしと模擬戦をしてもらう。まずはどの程度の実力を持っているのか見せてもらいたい。誰か希望者はいるか?」
バルロット先生が生徒たちに問いかけると、三人が手を挙げた。
血気盛んな少年らしい張り切り具合だ。
俺はあんまり目立ちたくないので手は挙げなかった。
「はいはーい! オレがやりたいですっ!」
そして一番元気よく返事をしたのはやはりヴァルだった。
手を挙げてぶんぶんと振りまくり、全身から目立ちたいオーラが噴き出している。
「………………」
性格は正反対だと思うんだけど、どうしてこいつと友達でいようと思ったのだろう……
と、今更ながら自分の心境に疑問を抱くのだった。
「元気がいいな。名前は?」
バルロット先生がヴァルに問いかける。
「はいっ! ヴァルクリス・エーデルハイトでっす! 最強の剣士目指して頑張ります!」
「ほほう。エーデルハイトというと、アーシアのエーデルハイト子爵家か?」
「知ってるんですか?」
「有名な騎士の家系だろう? 君の両親もここの卒業生のはずだ」
「はい。両親の薦めでアカデミーアに来ました」
「そうか。頑張って精進しろよ。じゃあ模擬戦はエーデルハイトにやってもらおうか」
「やったーっ!」
大はしゃぎで木剣を手に立ち上がるヴァル。
「つーか貴族だったのか……」
ぜんぜん貴族っぽくないのでかなり意外だった。
「貴族っつってもバリッバリの脳筋家系だからなー。あんまり上品な振る舞いには縁がないんだよ」
俺のぼやきに答えるヴァル。
貴族というよりは騎士の家系と言いたいのかもしれない。
騎士として手柄を立てて、その結果として貴族の仲間入りをしたのかもしれない。
そういうことなら貴族の振るまいが身についていないのも納得がいく。
俺もあんまり人のことは言えないけどさ。
一応はシルヴィス伯爵家の養子でありながら、俺は貴族そのももの振る舞いは苦手だ。
他人の前で偉そうに振る舞うのはどうにも性に合わないのだ。
……まあ、ローゼと結婚する羽目になったらそんなことも言ってられないのだろうけど。
ヴァルはさっそく前に出て、バルロット先生と対峙する。
「ほう。いい気迫だな」
猪突猛進、気合全開のヴァルを見て、バルロット先生が面白そうに笑う。
「はいっ! 気合十分っすっ!」
「よし。じゃあかかってこい」
「はいっ!」
木剣を持ったヴァルはさっそく駆け出す。
「………………」
やっぱり猪突猛進だ。
駆け引きも何もない、真っ正直な攻撃。
あれなら俺でも簡単に避けられる。
バルロット先生も簡単に受け止めていた。
避けるのではなく正面から楽々受け止めることでヴァルの気合いを削いでいるのだろう。
「ぐぎぎぎぎ……!」
力一杯押しているつもりなのだろうが、地力が違いすぎる。
受け止めているバルロット先生の剣はびくともしない。
まるで鋼鉄の壁にでも剣を押し当てているかのような堅さだ。
「パワーはなかなかだが、攻撃が単純すぎるな。もう少し考えてやらないと見切られるぞ」
「オレ、バカなんで考えるのは苦手っすっ!」
「……堂々と言い切るようなことじゃないと思うんだがなぁ」
同感。
まあバカだとは思っていたけど自覚はあったんだ。
自覚が無いことよりいいことなのかどうかは微妙だけど。
自覚があって直す気がないのなら自覚が無いよりもタチが悪い気がするし。
「戦闘は駆け引きでもあるんだぞ。他はともかく戦闘での頭脳プレイぐらいは身につけておいた方がいい」
「了解っす! フェイントとかそういうのですねっ!」
「そうそう。もしくはそれが無意味なぐらいに圧倒的な強さを身につけるか、だな」
「そっちの方が好みなんっすけどねっ!」
「だがそれには英雄レベルの力量が必要になるぞ」
「英雄! それこそ目指すべきものっす!」
「夢がでっかいなー」
壮大すぎる夢を見るヴァルを微笑ましそうに眺めるバルロット先生。
がむしゃらな攻撃を片手で受け止めながら、まっすぐなヴァルを好ましく思っているようだ。
「じゃあ今後が楽しみだな」
「え?」
「今はまだひよこだけど、いずれは鷹になるかもしれない。期待させてもらおうか」
「うおわっ!?」
受け止めていた木剣を一撃で弾く。
弾くと同時にヴァルは身体ごと吹っ飛ばされた。
「ぎゃふんっ!」
頭から地面に落ちて情けない声を上げる。
あれはあ痛そうだ。
「正面から力ずくっていうんなら、これぐらいの膂力は身につけないとな」
まだ身体が出来ていない子供とはいえ、剣一本で身体ごと吹っ飛ばすとは……
バルロット先生はパワータイプの剣士なのかもしれない。
俺でもあそこまで鮮やかにヴァルを吹っ飛ばすことは無理だ。
ローゼならそれこそ小指一本で吹っ飛ばしてしまいそうだけど。
ローゼはパワーよりも技術タイプの剣士だけど、肉体のリミットを一時的に解放する手段を持っているので、瞬間的なパワーだけなら俺の数倍ということもある。
人差し指一本で五メートルほど吹き飛ばされたこともあるのだ。
あれには感心するよりもかなりビビったけど。
しかしバルロット先生はそういう技術的なものでも限定的なものでもない、純粋な膂力でヴァルを吹っ飛ばしたのだ。
すげー力だなー、と思いつつも、だからといって技術的な部分が未熟というわけではないのだろう。
アカデミーアで上級コースの講師をするぐらいなのだから、全体的なパラメーターが優れているはずだ。
俺は相手を見ればだいたいの実力は分かるつもりだけど、あまりにもかけ離れすぎていたり、力を隠していたりすると見抜けない場合も多い。
バルロット先生も実力はまだほんの少ししか見せていないだろうし、俺とはかなりかけ離れた実力の持ち主だろう。
手合わせしてみたいという好奇心もあるけれど、やっぱりこの場で目立つのは遠慮したかった。
目立つことの厄介さはローゼを見ていてうんざりするほど知っているからな。
俺ぐらいの年齢だともう少し自分の力を誇示したり目立ちたがったりするものらしいけど(たとえばヴァルみたいに)、あまりにも大きな存在が身近にいると、そんな身の程知らずなことを考える余裕すらもなくなるらしい。
まあ張り切って空振りして恥ずかしい思いをするのは遠慮したいので、俺としてはそんな性格にならずに済んでありがたいと思っているけれど。
「いてててて……すげー力っすね……」
ヴァルもダメージから回復したらしく、むくりと起きあがる。
「エーデルハイトもなかなか悪くないぞ。これから鍛えていけばもっと強くなれる。まあ頑張れ」
「ういっすっ! 頑張りまっす!」
元気よく返事をしたヴァルはビシッと敬礼して俺のそばに戻ってきた。
「さてと。じゃあ後は各自で模擬戦でもしてもらおうか。授業の残り時間も少なくなってきたし」
ちょうど十人いるので、二人ずつで模擬戦が出来る。
俺は誰と戦おうかな、と辺りを見渡したところで、ヴァルに首根っこを掴まれた。
「ぐあっ」
絞まってる絞まってるっ!
首絞まってるからっ!
首元ごと絞めるなよっ!
「フェリクスはオレと戦うんだよ!」
「えー……」
先ほど手酷くやられたばかりだというのに、まったく懲りていないらしい。
ダメージなど全く残っていないらしく、元気いっぱいで木剣を構えてくる。
さあ戦え、すぐ戦え、と鼻息荒く急かしている。
「他にも相手はいっぱいいるじゃん。別に俺じゃなくてもいいと思うんだけど」
「いいや。オレはお前がいい。お前じゃなきゃ嫌だ! オレにはお前しかいないんだっ!」
「……ちょっと言葉に気をつけようか。物言いが激しく誤解を招く有様になってるぞ」
男にそんなことを言われても嬉しくない。
どうせなら可愛い女の子に言われたい。
ローゼだと逆に怖いから遠慮したいけど。
「いいから早く戦おうぜ!」
「へいへい……」
バカ相手に細かいことを指摘しても無駄だった。
理不尽な気持ちになりつつも、この単純さは嫌いではないので俺も素直に木剣を構える。
「じゃあいつでもいいよ」
どうせ猪突猛進な攻撃だろうから軽くいなすつもりでそう言った。
「余裕そうだな。ムカつくぜ」
俺のそんな態度が気に入らなかったらしく、ヴァルはちょっとだけむくれている。
「そんなこと言われても……」
確かに余裕はあるけど、バカにしているつもりはない。
猪突猛進で攻撃をいなすことも避けることも簡単だけど、だからといって油断していい相手ではないと思っている。
単純なりに攻撃力はかなりのものだ。
バルロット先生は力ずくで吹っ飛ばしたけれど、俺に同じことは出来ない。
攻撃の流れを利用して反撃するのがベストだろうと思っている。
「そっちから仕掛けて来いよ。お前がどんな攻撃をするのか見てみたいし」
「………………」
攻めよりは受けの方が得意なんだけど、ヴァルは引き下がってくれそうにない。
やれやれとため息をついてから俺は木剣を構えて攻撃を開始する。
「じゃあ行くよ」
「おう。叩きのめしちゃるっ!」
「………………」
無理だと思うけどなぁ、と思ったがもちろん口には出さない。
そんなことを言えばまた逆上させてしまう。
単純で短気で真っ直ぐなところは嫌いじゃないけど、でも自分にそれが向けられるのはちょっと疲れるんだよな。
俺はローゼに教わった通りのステップを駆使して一瞬でヴァルに肉薄する。
「んなっ!?」
俺の動きが見えなかったのだろう。
目で見えてはいても動きは追えなかったはずだ。
ヴァルは驚きを隠せずにぎょっとする。
一瞬で片を付けてやろうと、ちょうどヴァルの死角から木剣を振り上げるのだが……
「あ」
「ぐおっ!」
受け止められてしまった。
ヴァルの頭をしたたかに打つはずだった俺の木剣は、かろうじて受け止められてしまっている。
ギギギギ……と厳しいせめぎ合いになっているが、それでも俺の攻撃を受け止めている。
「驚いた。絶対入ると思ったのに」
まだまだ視覚に頼り切っていると思っていたヴァルなので、見えないところから攻撃を仕掛けたのだ。
この木剣は訓練用なので特殊な魔法がかかっており、たとえ頭や首を遠慮なく打ったとしても、寸前で障壁が展開されて大怪我はしないようになっている。
突きの攻撃でも同じことで、身体には刺さらず、激しい衝撃で吹き飛ばされる。
安全には配慮してあるので、どんなところにでも思いっきり攻撃が出来るというわけだ。
俺もそれを知っていたので頭を狙ったのだが……
「へへーん。どうだ、悔しいか?」
受け止めている木剣はカタカタと震えていて、今にも押し切られてしまいそうなのに、強気な態度だけはどこまでも崩れない。
「うん。驚いた」
俺は素直に頷いておいた。
驚いたのは本当だし、ちょっと見直したことも本当だ。
確かに猪突猛進な単純バカではあるけれど、戦闘勘は本物らしい。
理屈ではない何か。
目では追えなくても勘で受け止める。
いざという時に自分を助けてくれるのはそういう戦闘勘なのだ。
戦士にとって最も必要な資質を、ヴァルは間違いなく持っている。
ヴァルは確かに強くなるだろう。
それを素直に教えてやるのも癪だったので、俺も余裕の態度は崩さないでおく。
「確かに驚いたけど、でもこのままだと俺が押し切れると思うぞ」
木剣に更なる力を込めると、ヴァルの木剣が押されていく。
「そうは、いくかっ!」
木剣だけで受け止めるのは無理だと判断したのだろう。
ヴァルは体勢を崩してから蹴りを放ってきた。
「わっ!」
鳩尾を狙ってきた蹴りを直撃される前に飛び退く。
木剣と違って保護魔法がかかっているわけではないので、当たれば悶絶間違いなしだ。
剣術の戦闘で体術を駆使してくるのはある意味卑怯なのだが、本当の戦闘でそんなのんきなことは言っていられない。
むしろそこで躊躇いなく蹴りを出してくるヴァルに感心した。
「ぐあーっ! 絶対当たると思ったのにっ!」
不意をつけると思っていたのだろう。
ヴァルは悔しそうに地団駄を踏んでいた。
そんな様子がおかしくて俺も噴き出してしまう。
「あはは。甘い甘い」
からかうのが楽しくなってきて挑発してみると、むきーっと猿のように逆上した。
やっぱり面白い。
「その余裕じみた態度がすっげームカつくっ! ぜってーぎゃふんと言わせてやるーっ!」
「おう。出来るものならやってみろ」
「やってやらあっ!」
逆上したヴァルは猪突猛進で攻め込んでくる。
闇雲に剣を振り回しているわけではなく、一応は正統派剣術の流れになっているのだが、やっぱり単純な攻撃になってしまっているので、避けることも受け止めることもそこまで難しくはない。
大振りの剣をステップで避けて、切り返してくるのを軽く受け止める。
突き技はまたもやステップを駆使して紙一重でひょいひょいと避けていく。
この突き技はなかなか速くて鋭いので、ちょっと冷や汗をかかされた。
確かにヴァルは結構強い。
実力を十分に発揮すればあの赤い騎士だってもう少し余裕を持って倒せていただろう。
今後の課題はもう少し駆け引きや戦術を学べば本当に一流どころになれるだろう。
「このっ! 避けてばっかいないで攻撃してこいよっ!」
「別にいいけど、攻撃したらすぐに決着がつくと思うぞー」
「むきーっ! つけさせるかボケーっ!」
「じゃあやってみようか」
「おう! 来やがれっ!」
言われた通りに容赦のない攻撃を仕掛けることにする。
不意打ちはもうやらない。
見えない攻撃は勘で避ける可能性があるからだ。
きっちり見える位置から、見えていても防げない攻撃を意識して仕掛ける。
真正面から切りかかるが、その攻撃に可能な限り重さを乗せる。
「がっ!」
ヴァルはさすがに受け止めたが、それでも辛そうだった。
両手で木剣をしっかりと持ち、押し切られそうになりながらも必死で踏ん張っている。
もちろんこのまま力ずくで押し切るつもりはない。
手数で攻めるのが今回の戦術だ。
「ほら、まだ行くぞ」
一度木剣を離してから、再び攻撃を仕掛けていく。
嵐のような剣戟を仕掛けられたヴァルはかろうじて反応しながらも完全に押されていた。
「うっ……この……野郎!!」
「ほら、どうした? 防戦一方じゃないか」
「うるせーっ!」
今はまだ俺の方が強いけど、この攻撃に反応できているのは大したものだ。
ローゼが気に入りそうな素材だな、とも思う。
見込みのある若者を鍛えるのがローゼの趣味なのだ。
ヴァルもローゼを信奉しているし、案外うまくやるかもしれないと思うのだが、もちろんローゼを紹介するつもりなんてない。
「そろそろかな」
受け止める力が弱くなっているので、そろそろ決着をつけようと木剣を握る手に力を込める。
ヴァルもぜいぜいと息を切らし始めている。
体力的に限界が近づいているのだろう。
俺の方はまだ余力がある。
これも日頃からローゼに鍛えられた成果だ。
酷い時は三十分ぐらいぶっ続けて立ち合いをやらされたこともあるからな。
ほんの五分ぐらいラッシュを仕掛けたところで体力が尽きるほどヤワじゃない。
「せいっ!!」
今までよりも更に力を込めてから木剣を振り下ろす。
「うわあっ!」
受け止めた木剣ごと叩き落とした俺は、自分の木剣をそのままヴァルの首筋に突きつける。
そのときの表情はおそらく『ニヤリ』という不敵な感じになっていただろう。
「俺の勝ちだな」
「きーっ! その余裕っぷりがムカつくーっ!」
「あははは。でも勝ちだろ?」
「だな。確かにお前は強いわ」
「ヴァルもなかなか強いよ。ちょっと予想外でびっくりした」
「予想外とはなんだーっ! しっかり強そうだろうが」
「いや、バカそう」
「なんだとーっ!」
きーっ、と憤慨するヴァルに俺はまた噴き出してしまう。
なんだかおかしくて、楽しくて、この時間がとても嬉しくなってしまうのだ。
今まで同じ年頃の友達と接する機会がなかったからかもしれない。
ヴァルに手を貸して起き上がらせる。
俺に手を差し出されるのは悔しいと考えるかもしれないと思ったが、意外にも素直に手を握ってきた。
「お前にもぜってー勝つからな」
「簡単に勝たせてやるつもりはないよ。俺だって越えたい目標がいるからな。もっともっと強くならないといけないんだ」
「越えたい目標って?」
「俺の師匠」
「弟子はいつか師匠を超えるって奴か! 燃えるな!」
「……ちょっと違うけどね。いや、あんまり違わないけど」
そういう青春ファイヤーみたいなものではなく、単純に婚約破棄を目標にしているだけなのだが。
しかし青春ファイヤーの方が婚約破棄よりも健全な気がして何も言えなくなる。
「それだけ強くなれる師匠ならオレもちょっとだけ教わりたいな。やっぱり今度紹介してくれよ」
「それは無理」
「何でだよっ!」
「結構忙しい人だから」
「そうなのか?」
「うん」
伯爵だし、銀閃の騎士だし、めちゃくちゃ忙しい人であることに違いはない。
でもやっぱり独占欲の方が大きいんだろうなあ、と何となく思う。
結局のところ、ローゼには『俺だけの姉ちゃん』でいてほしいのかもしれない。
それを自覚するのはとても恥ずかしいのだが、しかし否定するにはローゼのことが大好きすぎるのだ。
シスコンにもほどがある……
「ふうん。ま、いっか」
こちらの事情を察したわけではないだろうに、細かいことにこだわらない性格なのか、ヴァルはあっさりと引き下がった。
そうしているうちに授業が終了してしまう。
午前中の授業はこれで終了。
これから昼休みだ。
「食堂でメシ食おうぜ」
「うん。腹ぺこだ」
「だよなー。動いた後はめっちゃ腹減るし」
それぞれ授業が終了して食堂に向かおうとするのだが、
「アインハルト、ちょっといいか?」
「?」
何故かバルロット先生に呼び止められてしまった。
「はい。何でしょう?」
「少し用事があるんだが、話せるか?」
「……はい」
うーん。
何の用事だろう。
目立つ真似は避けたつもりだけど。
「悪い。先に行って席を確保しておいてくれ」
「オッケー。そのかわりデザートは奢りな」
昼飯はヴァルが奢る約束だが、席を確保してもらうのだからデザートぐらいはこちらが奢るべきだろう。
「いいよ。一番安いやつなら奢ってやる」
「よっしゃ。じゃあ行ってくる」
「おう」
ヴァルを先に行かせてからバルロット先生に向き直る。
「それで、俺に何か用ですか?」
……ヒロインまだです。
も……もうちょっと……




