あっちもこっちもロリ天国❤
まあ色々と大変なことがあったけれど、俺たちは何とか生き延びることが出来た。
リオの腕も大したことはなく、アリシャの高位回復魔法で完全回復だ。
もう少し治療が遅れていたら不具合が残ったかもしれないが、やはりパーティーに回復役がいるとかなり助かるということがわかった。
アリシャには大感謝だ。
しばらく頭が上がらないかもしれない。
無事に戻った俺たちは核石を交換所で換金したり、手に入れた素材を売り払ったりして、それなりの金をゲットした。
折れた剣の新調はまたワールド・エンドに行く時にしようということになり、ひとまず落ち着くことにしたのだが……
「うぐぅ……」
みんなが回復したと思ったら、俺だけ熱を出してぶっ倒れてしまった。
医療施設のベッドでごろごろしてすでに三日。
熱はまだ下がらない。
どうやらこれは炎精転化の反動らしい。
やはり人間の身であれだけの無茶をすれば当然のごとく反動があるわけで、こうやってそのツケを支払う羽目になったのだ。
「しんどそうだな……」
「そう思うならどいてくれ……」
高熱で寝込んでいる人間の上に馬のりする幼女。
俺の契約従僕ということになっている氷龍のカスミだ。
今は可愛らしい幼女の姿だが、本来の姿を知っているだけに素直に可愛らしいとは思えない。
「そんなことを言っていいのか? ほら」
身を乗り出してから俺の額にふれてくる。
小さな手が額にふれて、そこからひんやりとした冷気が伝わってくる。
「うぅ……冷たくて気持ちいい……」
「ふふん。妾のありがたみが分かったか?」
「………………」
ありがたいけど重いんだよなぁ……
看病するなら横に座ってしてくれないかなぁ……
寝込んでから三日目になるけど、まだまだ熱は下がりそうにない。
最低でもあと二日は寝込むことになりそうだ。
身体はだるいし、頭は朦朧としているし、なんか最悪だ。
まあカスミ相手に無事に戻ってきたのだからこの程度で済んで御の字と言えなくもないけれど。
カスミも二人きりの時しか出てこないし。
こうやっているとまるで妹ができた気がして悪い気分じゃない、というのも複雑なところだ。
ロリババアなのに……
「やめるぞ……」
「あ、ごめん。続けてお願い」
やっぱり思考は筒抜けらしい。
カスミにロリババアは禁句だな。
ついつい考えてしまう癖を何とかしなければ。
「それにしても、暇だなぁ……」
寝込んですぐの時はリオやアリシャたちがお見舞いにきてくれたけど、今はみんな忙しくて来てくれない。
ワールド・エンドに潜っていた分の授業遅れを取り戻さなければならないのでみんな忙しいのだ。
……俺は寝込んでいる分、回復してから更に忙しくなるのだろうが。
そう考えると気が重いなぁ。
認めたくはないけれど、カスミがいてくれることで退屈や寂しさを紛らわせることができている。
こんな物騒なお子さまに癒されてどうするよ……
「む……誰か来たな。引っ込むぞ」
「うん。先生かな……でも点滴はまだ残ってるし……」
「子供のようだぞ」
「子供?」
ここは個室で、俺の見舞いに子供が来るとは思えない。
カスミはそのまま消えてしまう。
自らの次元空間に戻ったのだろう。
病室の扉が開く。
「ん……しょっと……」
「?」
カスミよりもさらに小さな手だった。
八歳ぐらいだろうか。
カスミが子供と言いたくなるのも分かる。
「ええと……」
ほかの入院患者の子供か、もしくは弟妹か。
とにかく間違えて入ってきたらしい。
顔はフードですっぽりと覆われて分からないけれど、女の子のようだ。
「よかった。無事そうだな」
「へ……?」
女の子の口元がニヤリと吊り上がる。
そのままフードを外すと、銀色の髪と青色の瞳が出てくる。
「んなっ!?」
「ふふん。驚いた?」
「ロ……ローゼ!?」
「あたり~」
「な、何でっ!?」
「あ、この姿なら目立たないように変身魔法薬を使った。ほら、これ」
ローゼが懐から瓶を取り出す。
赤色の飴と青色の飴が入っていた。
「これは年齢を自由に操作できる飴でね。一粒ごとに五歳ずつ調整できる。赤が成長、青が若返り」
「そ、そんなものがあったのか……」
「ふふーん。あったのだ~」
ローゼはなぜかご機嫌だ。
小さな身体で俺の膝によじ登ってきて、そのまますっぽりと収まってしまう。
こうしていると姉というよりも小さな妹を抱き抱えている感じだ。
……すげー違和感。
「さすがにあたし自身の姿で来ると目立つだろうと思ってさ」
「そりゃあ目立つだろうけど、身分証明はどうしたんだよ」
「そこはちゃんと通してきたよ。ローゼリッタ・シルヴィスの名前でね」
「……大騒ぎにならなかったか?」
「大丈夫。ちゃんと口止めしてきたから。お忍びだって言い含めたし」
「よくもまあ大人しく言うことを聞いてくれたな」
「うん。握手とサインで契約成立」
「……あくどい」
「何か言った?」
「いや、何も」
さすがにファンの多い英雄様である。
元手なしで口止め料の支払いを終えていた。
「敷地内に入ってから変身したから、誰にもあたしだと気づかれていないと思うよ」
「それはよかった」
「うん。まあ弟が心配で駆けつけてきたんだけどね。思ったよりも元気そうじゃない」
「結構やばかったけどね」
「まさかあの石像が本物の氷龍の封印だったなんてね。迂闊だったよ。あたしもまったく気づかなかった」
「ローゼの所為じゃないよ。俺たちが気づいたのも偶然に近いからさ」
「でもその所為でフェリクスを危ない目に遭わせたから気にせずにはいられないよ……」
「ローゼ……」
心配そうに見上げてくるローゼ。
やっぱり心配かけてしまったんだな。
それだけは申し訳なさでいっぱいになる。
「ほんと、無事でよかった」
「うん。心配かけてごめん、ローゼ」
ぎゅっと抱きついてくるローゼを俺も抱き返す。
「とまあ一安心したところで、詳しい話を聞きたいわね」
「うっ!」
にんまりと笑うローゼ。
どうやらそれを聞きたくてやってきたらしい。
まあ当然か。
まだまだ未熟な子供にすぎない俺たちが伝説の古代龍を打倒したのだから、その方法を知りたくない訳がない。
実際、詳しい話を聞こうとした人間は他にもいた。
アリシャたちにもかなりの人が話を聞きに行ったらしいが、彼女たちは途中で氷漬けになってしまっていたので、決着までは見届けていないのだ。
そうなると俺のところにやってくるのは必然なのだが、病人に負担をかけることを良しとしないドクターが身内と友達以外面会謝絶の措置を取ってくれたのだ。
これにはかなり助かった。
しかし身内であるローゼがやってきて問いつめられてしまうのでは逃げられない。
「ええと……実はかくかくじかじかで……」
と、俺は一部始終を話すのだった。
俺が持つ炎の魂に反応して封印が解けてしまったこと。
みんなで戦ったけれどやっぱり簡単には勝てなかったこと。
リオの毒血攻撃でかろうじて動きを鈍らせたこと。
それからこれだけは内緒にしてほしいと頼み込んでから、炎精転化のことも話した。
それを聞いたローゼは興味深そうに頷いた。
「ふうん。なるほど、ね。やっぱりアストリアの血を引いているとそういう特殊なことが出来るわけだ。血筋的にはかなーり貴重だよね、それ」
「うぅ……だから内緒でお願い。こんなことが知られたら俺だってただじゃ済まないって分かってるし」
この世界、特殊能力においてはかなりの好奇心を発揮するし、かなり酷いことも平気でやってくる。
その能力をその個人だけにとどめるのは世界の損失だという大義名分を掲げて、特殊能力者を捕獲、さらには能力を発現、量産する為に人体実験まで繰り返すのだ。
もちろん公的機関は表だってそんなことを許してはいないが、非合法機関や、国の暗部あたりなら平気でやる。
ローゼが英雄的な力を持った特殊能力者であるにも関わらず無事に過ごせているのは、彼女の知名度と、伯爵という地位によるものだ。
下手に手を出せば大火傷では済まない、と相手に理解させているのだ。
肉体的にも社会的にもずたずたにされると理解しているからこそ、ローゼには手を出せない。
戦闘能力ではもちろんのこと、銀閃の騎士としての知名度と国王の信頼厚い伯爵としての権力を利用すれば、非合法組織や暗部組織の一つや二つ、かるーく潰してみせるのがローゼの恐ろしいところである。
しかもやると決めたら容赦しない。
過去に秘密裏にローゼを捕獲しようとした組織はあったようだが、そのことごとくが組織ごとローゼに潰されたし、構成員は非戦闘員も含めて皆殺しにされた。
人体実験のような非人道的なことはローゼにとって一番許せないことらしく、ああいう手合いにはどこまでも残酷になるのがローゼのやり方だ。
俺の炎精転化のことが知られれば、今度は俺がいろいろな組織に狙われることになってしまう。
それは勘弁して欲しい。
俺一人なら何とでも切り抜けるつもりでいるが、人質をとられるのが何よりも怖い。
ローゼが人質になるようなことはないだろうが、リオやアリシャ、ヴァルを好きに押さえ込める人材はいくらでもいるだろうし。
「分かってるよ。バラすつもりはない。公的な報告書にはメディシス家の女の子が持つ毒血だけでも十分な説得力があるしね。そこに追い打ちをかけたと説明すればそれで大丈夫だと思うよ」
「うん。それを聞いて安心した」
「あたしも大事な弟をそんな目に遭わせるつもりはないから大丈夫」
「うん」
「もしそんな不届者がいたら容赦なく踏み潰してやるしね」
「あははは……」
笑顔で言うから怖いよな、この姉ちゃんは。
「でもこれで可能性は上がったかもね」
「え?」
「だから、フェリクスの隠し技のことだよ。古代龍も倒せるんだから、それがあればいつかはあたしにも勝てるかもしれないよ」
「む……」
「あのときはぜーったいに無理だって思ってたんだけどね~」
「ぜーったいにかよ……」
「でも良かったじゃない。可能性が出てきて」
「む……」
ローゼとの婚約破棄が出来る可能性。
ローゼはよかったねと言ってくれる。
俺が望む恋ができるかもしれないことを祝福してくれている。
その気持ちはすごく嬉しいはずなのに……どうしてこんなに寂しい気持ちにさせられるのだろう。
「あの、さ……ローゼ」
「ん?」
俺の膝に座ったまま、幼い顔を上げてくるローゼ。
いつも知っている大人びた表情ではない。
まるで本当に八歳になってしまったかのような、愛嬌のある表情だ。
見た目っていうのはなかなか侮れない。
「俺はローゼに勝つことを諦めるつもりはないよ」
「うん」
「でもさ、今回苦しい戦いを乗り越えて、分かったこともあるんだ」
「ふうん。どんなこと?」
「一人じゃ何も出来ないってことかな」
「………………」
「仲間がいて、支えてもらって、助けてもらって、すごく頼りになったんだ」
「うん」
「それだけじゃなくてさ。仲間が殺されそうになった時、俺は絶対に嫌だって思った。だから限界以上の力を発揮できた」
「そっか」
「そのとき分かったんだ。大切な誰かを守ったり、支えたり、守られたり、支えられたりするっていうのは、すごく当たり前のことなんだって」
「そうだね。それはとても大切なことでもあるよ」
「でもローゼは?」
「ん?」
「ローゼはいつも一人じゃないか。誰かを守ったり支えたりすることはあっても、逆はないんじゃないか?」
「そんなことはないけどね……。あたしだって騎士団を率いるときはみんなに助けられてるって思ってるし」
「…… ・……」
でもそれは個人的に支えてもらったり守ってもらったりしているわけではない。
ローゼの存在は大きすぎて、そんなことをするのは畏れ多いと考えている騎士の方が多いはずだ。
だから本当の意味で、ローゼはずっと一人だったんだと思う。
一人きりで戦ってきたんだと思う。
でもローゼは強いから、それでもやってこられた。
これからもローゼは一人きりでやっていけるのだろう。
強くて優しくて誇り高い英雄。
ローゼリッタ・シルヴィス。
そんな彼女を支えたいと、守りたいと思うのはやっぱりおこがましいだろうか。
「俺はやっぱりローゼにはちゃんと好きな人と結婚して欲しいって思う。だからローゼに勝つことは諦めたくない。でもさ、それと同じぐらい、いつかはローゼを支えられるようになりたいって、守れるようになりたいって思うんだ。力が足りないのは分かってるけど、でも俺は仲間にそうしてもらって嬉しかったから……」
だから、ローゼにも嬉しい気持ちになってほしい。
そう思ったんだ。
「………………」
ローゼはじっと俺を見上げている。
「ええと、駄目、かな……?」
「………………」
くるりと身体の向きを変えて、そして頭を撫でられた。
「いやあ、子供子供だと思ってたけど、いつの間にかいっちょ前のことを言うようになったなぁ。さすがは男の子」
「うぐ……こ、子供扱いすんなよ!」
「うん。そうだね。じゃあちょっとだけ男扱いしてあげようかな」
「え? え?」
小さな手で頬を挟まれてから、ローゼの顔が近づいてきた。
「え……ええっ!?」
近い近い近いっ!
このまま近づいたらやばいってっ!
「ちょっと……ローゼ!?」
「ちゅ~」
「~~~~っ!!」
キスされた……
ローゼにファーストキスを奪われてしまった……
っていうかこれ、絵面的にやばいって!
俺が八歳の幼女とキスしてる図になってるじゃんっ!
こんなところを誰かに見られたら不味すぎるよっ!
「ふふふ~ん。ごちそうさま~」
「く……食われた……」
「美味しかったよ~」
「俺は食い物じゃねえっ!」
「あははは~。いやあ、あんまりキュンなこと言われたからついムラムラきちゃって……」
「その姿でムラムラとか言うなっ!」
幼女姿で下ネタとか痛すぎるわっ!
「でも嬉しかったよ」
「う……」
本当に嬉しそうに笑うローゼを見て、俺は何も言えなくなってしまう。
だって俺はローゼのこんな顔が見たかったんだから。
そんな顔をされたら、こっちまで嬉しくなっちゃうじゃないか。
……食われたけど。
ま、いいか。
ローゼだし。
「なんだか本気でフェリクスが欲しくなったかも。あたしもちょっと鍛え直そうかな。負けなければこのまま結婚できるし」
「……それ以上強くなってどうするんだよ」
「いやあ、あたしもまだまだ若いし。努力はやめるべきじゃないと思うのよね」
「そりゃそうかもしれないけどさぁ……」
でも俺はローゼに勝ちたいんだよ。
追いつけないほど強くなられるのは正直困る。
「それに……」
「それに?」
「俺がローゼに勝ったとしても、その時本当にローゼが欲しいって思ったら、俺から改めて結婚を申し込みたいし」
「………………」
「ローゼ?」
「いやああっ! 何その乙女回路全開要求発言! キュンしちゃうじゃない! ショタに目覚めそうじゃないっ!」
俺の上で幼女が身悶えている。
幼女姿でショタに目覚めそうって……
発言がやばすぎるよ……
「おーい、ローゼ……戻ってこーい……」
俺の膝の上で悶えるのは見るに堪えないからやめてくれないかなー……
「ん。ん。大丈夫大丈夫。戻ってきた戻ってきた」
「……ほんとか?」
まだ鼻息荒いんだけど。
「あはは~。もういろいろ期待させられそうで困っちゃうな~」
「そんなに期待されても困るけどね。俺だってこの先他に好きな子が出来るかもしれないし。そうなったらその子の為にローゼに勝とうとするだろうし」
「むむ。それはちょっと複雑かも」
「いいじゃん。ローゼだってこの先好きな男が出来るかもしれないだろ?」
「うーん。できるかなぁ。あたしより弱い男は正直お断りだし」
「………………」
それは全世界の男をお断りと言っているようなものだ。
ローゼリッタ・シルヴィスは正真正銘高嶺の花ということだろう。
ハードル高すぎだし。
「それに、今のキュン発言で結構本気でフェリクスのこと欲しくなっちゃったし」
「うぅぅ……」
気持ちは嬉しいけどなんか怖いよぅ。
「とりあえず、その幼女姿だけは何とかしてくれないかな。調子狂うんだけど」
「そう? 可愛くない? ここまで幼くなったのはすっごく久しぶりだから割と楽しいんだけど」
「その姿で迫られるとロリコンになったような気にさせられるんだよっ!」
「あははははっ! ロリコンか~。それも面白いかも~」
「俺は面白くないっ!」
「大丈夫大丈夫。まだまだフェリクスもロリショタの範囲内だから」
「ぐあっ!」
傷ついた。
今のはめっちゃ傷ついたぞっ!
「なんならもーいっかいちゅーする?」
「しないっ!」
「遠慮しなくてもいいのに~」
「遠慮してねえっ! いやがってるんだっ!」
「またまた照れちゃって~」
「照れてねえしっ!」
と、言いつつ本気で迫ってくる幼女……もといローゼ。
縮んでいても腕力と技は健在なので、体調不良の俺がいくら抵抗しても逆らえる訳がない。
じわじわとローゼの顔が近づいてくるのだが……
あっちを向いてもこっちを向いてもロリ娘……
ああ、これぞへぶん……(*^▽^*)




