復活の氷龍
青い石像が蒼い龍の身体になるまで、それほどの時間はかからなかった。
ぱきん、というガラスが砕けるような音とともに復活したのは、氷を司る美しい龍だった。
古代龍はそれぞれの属性を司ると言われている。
炎、水、大地、そして風。
あいつは水を司る龍の一つ、氷龍なのだろう。
水龍の進化種であり、氷、水、そして霧の魔法を操る強力な種族だ。
そこに存在しているだけで、夏の大地が真冬になったかのような冷気に覆われている。
俺たちは動けなかった。
あまりにも偉大な存在を前にして、動くことすら許されなかった。
いや、正直に言えば見惚れていた。
長い歴史の中で失われた、その美しい姿に。
他のみんなも同様だろう。
恐怖してはいるものの、その姿を見る目には熱が籠もっている。
今の状況も忘れて、ただただ氷龍の姿に見入っているのだ。
そしてあいつはそんな俺たちを見て何を思ったのか。
ゆったりとした動きで起きあがる。
見下ろす俺たちの姿は羽虫か何かぐらいだと思っているかもしれない。
足一つでも動かせばすぐにでも踏み潰せる程度のものだ。
「この世界の景色を見るのは何千年ぶりか……懐かしい……」
初めて聴く氷龍の声は、女性のものだった。
いや、女性というよりは酷く幼い女の子。
声だけならばまだ十歳にも満たない幼女のそれだった。
「気の遠くなるほど闇の中の屈辱に耐えてきた。封印が解けるまではあと千年ほどかかると思っていたが、予想外の子供がいたおかげでこうして復活が出来た。感謝するぞ、炎の子供よ」
「………………」
炎の子供、というのは俺のことだろう。
「そなたの炎は妾の怒りと通じるものがあった。お陰で意識を覚醒できた。そこから妾自信を復活させるのはそれほど難しいことではなかった」
「……つまり、俺が君の復活を手助けしてしまった、ということか?」
偉大なる存在を前にして『君』というのはあまりにも不遜だと思ったが、この幼い声を聴いていると、どうしても小さな子供を相手取っているような気持ちにさせられてしまう。
馬鹿にしているわけではないのだが、不思議な親しみを感じてしまうのだ。
もちろん、敵であることには変わりないし、ピンチであることも変わらないのだが。
「そういうことになるな。お主は人よりも妾達に近い存在であろう? 身体は人間のよだが、その魂は強烈な炎で構成されている」
「まあ、一応は精霊の血筋だからな」
「なるほど。アストリア。炎の娘か」
「知っているのか?」
「妾がまだ封印される前のことだが、炎の娘が人間に恋をした、という話は伝わってきた。お主はその子孫だろう?」
「あー……うん。そういうことになるのかな……」
自分が炎の精霊の血を引いていることは知っていたけれど、まさか祖先にそんな背景があったとは……
てっきり祝福を受けたり、力を与えられたりした末裔だと思っていたのだけれど、まさかの直系子孫ですか……
自分で自分の出生にびっくりだ。
そんな場合ではないのは分かっているけれど、精霊でも恋をする、というその事実になんだか微笑ましい気持ちにもなってしまう。
「ふむ。人間は憎むべき敵だが、解放の手助けをしてくれた恩を忘れるつもりはない。ここで大人しく逃げるというのなら、妾は止めぬよ」
「……マジで?」
「もちろんだ。もっとも、数日命が延びるだけだろうが……」
「……それってどちらにしても死ぬんじゃないか?」
「うまく逃げ回れば生き残ることも可能だろう。妾も人間すべてを滅ぼしたいわけではないからな。復讐の対象はあくまでも妾を騙し討ちにしたグリオザークという国の人間だ。まあ国そのものは滅ぼすかもしれないが、他の国に関しては手出しをしてこない限り襲ったりはしない」
「あははは……まいったなぁ。それ、俺の祖国なんだけど」
「そうなのか。それはご愁傷様」
「……ちなみに、俺の家族もそこにいる」
「そうか。それで?」
うーん。
俺、絶対に馬鹿なことをしようとしているよな。
グリオザークが復讐の対象だと分かっているのなら、ローゼが絶対に出てくる。
彼女ならばこの氷龍に対抗できるかもしれないが、それでも無傷では済まないだろう。
下手をすると命がけになるかもしれない。
それが分かっていて、ローゼを死なせるかもしれないと分かっていて、どうして引き下がることが出来るだろう。
俺がここで逃げ出した所為でローゼが死ぬかもしれない。
そんなことには耐えられない。
そんなことをすれば、俺は自分のことを許せなくなる。
「だから、俺はここで逃げるわけにはいかないんだ」
「そうか。自分の命だ。使い方を選ぶはお主の自由だ」
「うん……」
ああ、やっぱり俺はここで死ぬんだろうな。
「というわけだから、やっぱりお前等は逃げろよ。俺は家族の為にここで逃げるわけにはいかないけど、お前等はそうじゃないだろう?」
「嫌ですわ。友人を置いて逃げるなんて、冗談ではありませんわ」
「そうだよ。エーデルハイトの騎士教育は友達を見捨てるような情けないものじゃあないぜ」
「絶対最後まで一緒にいますっ!」
「………………」
誰も逃げてくれない。
つまり、みんなここで死ぬ覚悟を決めてしまったということだ。
珍しいことじゃあない。
ワールド・エンド探索の死亡率は決して低いものではないのだ。
学生が在学中に死ぬことだってある。
戦いに生きる以上、どの人間もその覚悟だけはしているのだ。
だから死を前にしてもここまで落ち着いていられる。
死ぬことよりも、生き延びたことでより大きなものを失うことこそを恐れている。
俺だってそうだ。
絶対に死にたくはないけれど、それでもここで逃げ出してローゼにすべてを押しつけるようなことだけは出来ない。
そんなことをするような俺に生きる価値はない。
みんなのことだって死なせたくはないけれど、覚悟を決めた仲間にこれ以上の逃走を勧めることは侮辱にあたる。
俺の所為でみんなを巻き込むのは心の底から申し訳ないけれど、こうなったら腹をくくるしかない。
死ぬ覚悟は出来ているけれど、生き延びる意志は決して捨てない。
最後の最後まで足掻いてみせる。
「覚悟は決まったか?」
律儀なことに、俺たちが戦う準備をするまで待っていてくれたらしい。
この氷龍、根はかなりいい奴なのではないだろうか。
人間に騙し討ちにされたと言っていたところから、自ら災厄を振りまくような悪意ある龍ではないようだし、なんだか戦いづらい。
まあそんなことも言っていられないのだけれど。
「ああ、決まったぜ」
俺は腰に差していた剣を構える。
ヴァルも同様にして、そしてアリシャは杖を構える。
リオは手持ちの毒の中でも最強のものを取り出して、刃に塗りこめる。
当たれば動きを止めることぐらいは出来るかもしれない。
この状況で自分の血液を使わないのは、万が一にも俺たちを巻き込むことを恐れているのだろう。
飛び散った血に触れるだけでも命を落としかねない。
俺は大丈夫だが、アリシャとヴァルは確実に死ぬ。
「みんな、準備はいいか?」
「いつでもよろしいですわよ」
「おうよっ!」
「大丈夫ですっ!」
気合いは十分。
みんな戦いに意識を切り替えている。
これなら何も怖くない。
「よし、じゃあ行くぞっ!」
まずは俺から斬りかかる。
浅い傷でもつけられれば御の字だと思っていたのだが……
「………………」
氷龍の胴体に斬りつけた俺の剣は半ばから折れてしまった。
やっぱり並の素材で造った剣じゃ歯が立たない。
うう……こうなると分かっていたら遠慮せずにローゼの名剣をもらってきたのに……と今更後悔しても遅い。
折れた剣を持ったまま一旦退く。
その間にアリシャが呪文詠唱を完了していた。
「来たれ雷帝! 雷の暴槌!!」
空に黒い雲が現れ、そしてそこから鉄槌のような雷がいくつも落ちる。
天候まで操作するその技量にはただただ驚かされる。
以前見せてもらった最高呪文よりもさらに強力なものだ。
おそらく、あれからさらに修練を重ねて身につけたものだろう。
魔法使いとしての技量なら間違いなくアリシャが上回っている。
この呪文ならかなりのダメージを与えられるかもしれない、と期待していたのだが……
「……大した呪文だが、妾には効かないぞ」
直撃を受けたはずの氷龍は水の膜を張ったまま平然としていた。
薄い膜にしか見えないのに、それだけで雷の暴槌を完全に防いだらしい。
「そんな……あれを受けて無傷だなんて……」
アリシャがショックでへたり込んでいる。
無理もない。
あれほどの呪文を扱える魔法使いは地上世界にもそれほどいないはずだ。
あれはアリシャの血筋と才能のすべてを注いだ現在における最強の呪文だ。
それを無意味だと言われたようなものなのだから、呆然としてしまうのは当然だ。
もちろんあれほど強力な呪文だ、単純に魔力を消費しきってしまったというのもあるのだろうが。
「その幼さでこれほどの呪文を操ることが出来るのは見事だと言っていこう。だが、相手が悪かったな」
「………………」
つまり古代龍相手に通じるものではない、ということか。
俺たちの力など、所詮その程度だと。
無力感に身体を浸食されて、このまま動けなくなってしまいそうだ。
ここで諦めるわけにはいかないのに。
絶望に心が負けてしまいそうだ。
「他の龍ならばある程度のダメージを与えられただろう。しかし水を操る妾だと相性が悪い。知っているか? 何も含まない純粋な水、というものは雷を全く通さないということを」
「っ!!」
そうだった!
雷系呪文最大の弱点!
純水は雷を通さないのだ。
それがどれほど強力なものであろうと関係ない。
どれほど薄い膜だろうと完全に防御してみせる。
水に特化した一部の魔法使いのみが扱える純水防御法!
氷龍であるこいつがそれを使えるのは当然ではないかっ!
「迂闊だった、な……」
「頑張った方ではあるがな。そろそろお終いか?」
雷帝の血筋を引いている所為か、アリシャの魔法は雷に特化している。
もちろん他の魔法も使えるのだが、それは一般的な魔法のみで、人並み以上に強力なものはまだ使えない。
それはアリシャ自身が雷属性特化型を志している所為でもある。
しかし今回はそれが裏目に出たということだ。
「まだまだあっ!」
今度はヴァルが氷龍に斬りかかる。
しかしその攻撃はやはり通らない。
俺と同様、ヴァルの剣も並の素材で出来ているのだ。
あいつの肌を貫くには剣そのものの強度が足りない。
「こ、これならーーっ!!」
そしてリオも襲いかかる。
恐がりのリオが精一杯の勇気を振り絞って氷龍へと向かっていく。
リオの小太刀も並の素材で出来ている普通のものだが、それでも俺たちと違うところは、その表面に毒が塗ってあることだろう。
「ぐっ!?」
その刃が肌に触れた瞬間、氷龍が苦しそうに呻く。
刃が肌に通らなくても、その毒が肌表面を浸食しているのだ。
それは命を削るほどのものではないのかもしれないが、確実に動きは鈍っている。
効いているのだ。
さすがは毒の娘。
刃は通らないと判断して、触れただけで効果を発揮する毒を選んだのだろう。
とにかく動きが鈍ったこのチャンスを無駄にするわけにはいかない。
肌が刃を通さないのなら、通りそうな部位を狙うまでだ。
「炎熱剣!」
折れた剣を持ったまま、魔力の刃を具現化する。
魔力そのものを刃にする魔法で、本来ならば素手の状態で具現化できるが、今回はこの剣を元にして刃を形成している。
一度は命を預けようと信頼した剣なのだ。
出来ることなら砕け散る最後まで付き合ってもらいたい。
「飛翔!」
体の大きさが違いすぎるので、飛翔魔法を使って空を飛ぶ。
狙うはあいつの頭。
眼球だ。
「はああああああああーーっ!!」
炎熱剣をまっすぐに突き出してから一気に狙う。
飛翔に最大加速をかけてから、そして氷龍の眼球に炎熱剣を突き立てた。
「ああああああーーっ!!」
のけぞったまま悲鳴を上げる氷龍。
巨大な身体を捩りながら、必死で俺を引き剥がそうとする。
しかし離れるわけにはいかない。
飛翔を使えば落下することはないが、これだけではダメージが足りない。
こいつを倒すにはもっと確実な攻撃が必要だ。
「フェリクス! 無茶すんなっ!」
離れようとしない俺を心配してヴァルが言う。
しかしその言葉には頷けない。
「いけるっ! これならっ!」
さらに力を込めれば炎熱剣は眼球だけではなく脳にまで到達する。
もう少し魔力を込めて刃を拡張すれば!
「く・ら・えーーっ!!」
突き立てたままの剣の柄を握ったまま、更なる魔力を込めた。
しかし……
「あ……」
腹部に鋭い痛み。
熱くはなく、酷く冷たい痛みだった。
それも当然だろう。
肌に、肉に、そして内蔵に触れているのは絶対零度の爪なのだから。
氷龍の爪が俺の背中から腹にかけて貫通していた。
俺のやろうとしていたことを見抜いた氷龍は、それをさせまいと俺よりも先に俺を貫いたのだ。
「ぐ……は……」
力が、抜ける。
魔力ももう込められない。
意識が遠のいて、暗い闇の中に落ちていく。
「見事だ、炎の子供よ。復活したばかりで本来の力を発揮できない状態とはいえ、よくぞ妾をここまで追いつめた。幼いながらもお主は間違いなく熱き炎の魂を持つ子供だ。その魂に敬意を表して、苦しませずに死なせてやろう」
決してお世辞ではない感動をその声に乗せながら、氷龍は俺にとどめを刺そうとする。
確実に殺すためというよりはこれ以上苦しませない思いやりを感じ取る。
ああ、やっぱりこいつ、悪い奴じゃないんだなぁ。
こんな形で出会わなければ友達になれたかもしれないのに……
古代龍と友達になるなんて不遜かもしれないけど、でも不思議な親しみを感じるんだ。
だから、こいつとの関係がこのまま終わることが少しだけ残念だった。
「フェリクスっ! この! そいつを離せーーっ!!」
折れた剣でヴァルが斬りかかる。
無駄だと分かっていても、俺を助けるために無謀な行為を繰り返す。
「やだ……やだ……フェリクス……死んじゃやだああああーーーっ!!」
リオが泣きじゃくりながら向かってくる。
隠密の技を駆使してから氷龍の身体を登り、そして俺のところまで到達する。
そのまま取り戻そうと飛びかかるが、
「あうっ!!」
がぶりとその腕に噛みつかれてしまう。
「リ……オ……」
氷龍がもう少し力を入れれば、その細い腕は噛み千切られてしまうだろう。
その前に離れなければならないが、リオの腕はがっちりと咥えられている。
このままリオを喰い殺すことだって出来るだろう。
「駄目……だ……」
このままじゃダメだ。
けど、俺はもう動けない。
「返……して……ください……フェリクスを……返してください!!」
しかしリオはその腕をより深く氷龍の中に食い込ませた。
「なっ!?」
驚いたのは氷龍の方だろう。
いきなり力が抜けたように口が開く。
「………………」
そうか。
メディシスの毒だ。
リオの身体に流れる血液はメディシス家の最高傑作にして最大の失敗作である制御不能の毒血!
かつて古代龍でさえその毒で殺してみせようと志した一族の執念は、ここでその真価を発揮したのだ。
「くっ! 血液が……猛毒だと……!? この娘、どうなっている!?」
メディシスという血筋を知らない氷龍はただただ混乱している。
落とされたリオはヴァルがキャッチしようとしていたが、アリシャが慌てて止める。
そして衝撃吸収魔法をリオにかける。
消耗していてもそれぐらいは出来るようだ。
そのお陰でリオの身体はふわりと地面に倒れた。
腕以外は大きな怪我もしていないようで、命に別状はない。
しかし触れるわけにはいかないので二人は近づけない。
「蘇生!」
そしてアリシャは俺に回復呪文を使う。
瀕死の重傷からも回復させられる高位回復呪文だ。
失われていく血液と体力が回復していく。
しかし俺の身体は氷龍に貫かれたままなので、その回復は死にかけることで薄れていた痛みをも復活させた。
「うぐ……」
その痛みに呻いてしまうが、これこそが生きている痛みでもある。
涙が出るほど有り難いが、弱音を吐きたくなるほど痛い。
もちろん感謝はしているのだが、それにしても痛い。
これはちょっとした生き地獄だ。
「ぐぅ……まさか復活早々こんな子供たちにここまで追いつめられるとは……」
氷龍にとっては運が悪かったのだろう。
俺という存在がいたことはこいつにとって僥倖だったのかもしれないが、その後がいけなかった。
俺たちを前にして早々に立ち去っていれば、俺たちの意志など関係なく復讐に勤しむことが出来ていたのに。
一番の不運はやはりリオがこの場にいたことだ。
最凶無比の毒娘。
下手に傷を負わせれば自身を侵食してしまう毒血。
本来の力を発揮できない氷龍にとって、リオと戦ってしまったことこそが最悪の不運だったのだ。
しかしその程度で殺せるほど甘い相手ではないことも確かだ。
リオの毒血も決定的なダメージにはなっていない。
これ以上、こいつを傷つける手段が存在しない以上、俺たちに勝ち目はない。
どうすればいい?
どうすれば、このピンチを乗り越えられる?
このまま俺たちは殺されるのか?
「だがここまでだ、子供たち。よく頑張ったと褒めてやるが、それでもここで殺されるわけにはいかないからな。少し本気を出させてもらう」
その言葉通り、氷龍は本気を出した。
口から紡がれた不思議な言葉とともに氷の結晶が四つ現れ、そして俺たちにぶつけられる。
「あっ!」
「な、なんだこれ……」
「嘘でしょう? ……こんな一方的に……小さな欠片のくせに……」
氷の結晶は身体に触れた瞬間、周りごと本人を凍り付かせていく。
三人はあっという間に凍りづけにされてしまった。
「リオ! アリシャ! ヴァル!!」
物言わぬ氷の塊と化した三人はそのまま動かない。
このまま永久凍結されてしまう。
死んではいないだろうが、それでもこのまま一生目覚めなければ同じことだ。
俺はまだアストリアの加護があるから抵抗出来ているが、それでも徐々に身体が凍り付いていく。
やはり炎の魂を持っていても、人間という器に縛られている以上、本来の力は発揮できないらしい。
これが本物のアストリアであったのなら、たとえ古代龍であっても引けを取らないのに……
五大元素を司る精霊は古代龍とともに最強の存在として数えられている。
精霊も人間の前から姿を消して久しいが、今ほどその力を求めたいと思ったことはない。
炎に焦がれ、そして希う。
「ふむ。さすがに氷への耐性が高いな、炎の子供は。しかしそれも時間の問題か」
貫かれたまま氷漬けになっていく俺を見ながら、氷龍はそのまま歩を進めていく。
倒れた三人の元へ。
「何を……するつもりだ……?」
動かなくなった三人にはもう用がないはずだ。
これ以上何をするつもりなのか。
「決まっている。とどめを刺すのさ」
「っ!」
そのまま足を動かして、まずはリオから踏み砕こうとする。
「やめ……ろっ!!」
声を振り絞って止めようとするが、それ以上のことは出来ない。
力ずくで止めることも、そしてこいつを殺すことも、俺には出来ない。
「おかしなことを言う。お主も、そしてこの子たちも、命を懸けて妾に戦いを挑んだのだろう? そうであるのならば、この結果を受け入れるのは当然ではないのか?」
「うる……さい……」
返す言葉もない。
その通りだ。
死ぬ覚悟は決めていた。
リオたちだってそうだろう。
けれど、俺はちっとも覚悟なんて出来ていなかったんだ。
死ぬ覚悟は出来ていても、目の前で仲間を殺される覚悟なんて、出来ていなかった。
「もう遅い。挑んだ以上は決着をつけさせてもらう。仲のいい友人を目の前で殺すのは忍びないが、それも全ては高すぎる耐性が災いしたな。お主が凍るまで待ってやるつもりはない。絶望に苛まれながら死ぬがよい」
慈悲はない。
こいつは俺たち全てを殺すつもりだ。
「あ……ああ……」
嫌だ。
このままなにも出来ないまま、リオやアリシャやヴァルを殺されるなんて耐えられない。
こんなことなら俺が先に死んでおけばよかったのに。
ああ、でももしもそうなったらみんなが俺のような気持ちになるのだろうか。
それは、嫌だ。
死ぬって、こういうことなんだな。
殺されるって、こういうことなんだな。
覚悟は出来ていてもその意味をちっとも理解していなかった。
なんて、軽い覚悟。
こんな絶望を抱えたまま、俺も死ぬ?
嫌だ。
そんなのは嫌だ。
俺に出来ることなら何だってする。
だから、こいつらを助ける力を寄越せ。
何でもいいから。
何だってするから……
復活のあいしくるどらごんちゃんです。
一応、メス。
というか、おんにゃのこ。




