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世界最強の極悪貴族は、謙虚堅実に努力する~原作知識と固有魔法<虚空>を駆使して、破滅エンドを回避します~  作者: 月島 秀一
第五章

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第四十二話:最優先目標

【☆★おしらせ★☆】

あとがきにとても大切なお知らせが書いてあります。

どうか最後まで読んでいただけると嬉しいです……!


 漆黒に染まった闘技場。

 そこに超然(ちょうぜん)と君臨するのは、『虚空の王』ボイド。


(色欲の魔女リゼに、『負けイベの敵』に無傷の完勝……。よしよし、ボクのレベリングは順調だね!)


 自分の仕上がり具合に満足した彼は、<虚空落とし>を解除する。

 それと同時、周囲に()み込んだ黒が、霧のように消えていった。


 魔女の姿は、どこにもない。

 虚空界(こくうかい)の果て――『虚無(きょむ)』へ飛ばされ、根源的な消滅を迎えたのだ。


 一方、闘技場や観客たちは、まったくの無傷だった。


「あ、れ……私、生きてる……?」


 ニアは恐る恐る目を開け、


「……どうやら助かったようだな」


 エリザは安堵(あんど)の息をつき、


「まさに神話の大魔法! さすがはボイド様!」


 アクアはキラキラと瞳を輝かせ、


「化物め……っ(確信した、奴は(まぎ)れもなく『次代の厄災』。これは帝国存亡どころか、世界滅亡の危機だ……ッ)」


 皇帝はグッと奥歯を噛み締める。


 ボイドは神域(しんいき)の魔法技能によって、<虚空落とし>の攻撃対象をリゼに限定。

 その結果、ニアたちはもちろん、帝国にも被害を出していない。


(さて、そろそろかな……?)


 ボイドが上空を眺めていると――黄金の時計塔が再び出現し、神々しい鐘楼(しょうろう)()が鳴り響く。


 次の瞬間、聖なる雷が(ほとばし)り、無傷のリゼが降り立った。


(<黄金の未来>、相変わらず無茶苦茶な魔法だね)


 色欲の魔女が死亡した際に自動(オート)で発動。

 因果に干渉して、自身の死という最悪の未来を破却する。

 一日に一度のみ・自分の意思で発動不可・復活後24時間は魔力ゼロなど、極めて重い制限(デメリット)こそあるものの……。

 原作ロンゾルキアで極めて珍しい、完全な死から立ち戻れる魔法だ。


「はぁ……やられちゃった」


 リゼはため息をつきながらも、どこかスッキリした表情で微笑む。

 全てを出し切ったうえでの敗北、千年の(つか)えが取れたかのようだ。


「色欲の魔女が認めるわ。ボイド、あなたは間違いなく、厄災ゼノの転生体(てんせいたい)よ」


「ふむ……まぁ『転生体』ではあるか」


 ボイドの場合、普通の転生ではなく、日本からの『異世界転生』だが……。

 別にネタバラシをする意味もないので、口を閉ざしておくことにした。


「『弱肉強食』は原初の理。煮るなり焼くなり、好きにしてちょうだい」


「ほぅ、(いさぎよ)い女は好ましいな」


「ふふっ、褒め言葉として受け取っておくわ」


 お互いの視線が交錯(こうさく)し、『勝者の権利』が行使される。


「色欲の魔女リゼに命じる――俺の(・・)家族に(・・・)なれ(・・)


「……えっ……?」


 彼女は雷に打たれたかのように固まった。


「家族って……つまり、そう(・・)いう(・・)こと(・・)?」


「あぁ」


本気(・・)、なの……?」


「俺はいつだって真剣だ。それにお前が言ったのではなかったか? 『弱肉強食は原初の理』だと」


「それは、そうだけど……っ」


 自分以上の『絶対強者』に詰められた魔女は、強引に婚約を迫られたと誤解した彼女は、


「……ふ、不束者(ふつつかもの)ですが、よろしくお願いします……っ」


 雪のように白い(ほほ)を赤く染め、おずおずと首を縦に振った。


「こちらこそ、よろしく頼む」


 ボイドは自らの『独特な表現』によって、新たな爆弾を背負い込んだことに、まったく気付いていない。


(ふふっ、起源級(オリジンクラス)の固有を二つも手に入れたうえ、新しい大ボスコレクションまで増えたぞ! 第五章の『特殊クリア報酬』は、めちゃくちゃ豪華だね!)


 彼が上機嫌に微笑んでいると――リゼがスッと身を寄せ、袖をクイクイと引っ張った。


「ねぇボイド、ちょっと気が早いかもしれないんだけど……私、小さい頃からの『夢』があってね。二人の結婚式は、海の見える小さな教会で――」


「――悪いな、今はちょっと忙しい」


「えっ?」


 ヌポン。

 リゼは乙女の純情ごと、虚空界へ飛ばされた。


 ボイドにとって、魔女のイベントは既に終わったモノ、その目はもう『次』へ向いているのだ。


「――アクア」


「はっ!」


 五獄(ごごく)の第三席は、主人のもとへ()せ参じ、その場で膝を突く。


「お前がここにいるということは、既に周知(しゅうち)は終わったのだな?」


「はぃ、全て御指示の通りに!」


「よくやった。では早速、始めるとしよう」


 ボイドは小さく喉を鳴らし、拡散設定にした<交信(コール)>を発動――自身の声を帝国全土へ届ける。


「――帝国臣民(しんみん)よ、私は(うつろ)の統治者ボイド」


 その瞬間、帝国のそこかしこで、大きなざわめきが起きた。


「既に部下から話を聞いた者もいるかと思うが、改めて本件のあらましを伝えておこう。つい先ほど、色欲の魔女が闘技場に出現し、帝都全域へ無差別攻撃を始めた。リゼが操る雷の力は凄まじく、放っておけば、この国は更地(さらち)と化していただろう。私は人命(じんめい)を最優先とし、キミたちを安全な場所へ避難させ、回復魔法による治療を施した」


「あの黒い渦……やっぱりボイド様が助けてくれたのね!」


「さっきの回復魔法は、ボイド様の慈悲だったのか……!」


「青い髪の少女は、本当のことを言っていたんだな……!」


 帝国の人々はみな、虚空の王に感謝を捧げる。


「激しい戦闘の末、私は魔女に勝利した。今の彼女は正気を取り戻し、遠く離れたところで、頭を冷やしている。このような事態は、もう二度と起こらない。諸君らの平穏な日常は、無事に取り戻された」


「伝説の魔女に勝つとは、なんという武力!」


「ボイドさま、ばんざーい!……」


「あの御方こそ、帝国の英雄よ!」


 ボイドの好感度は、留まるところを知らず、限界を超えて高まって行った。


(あんまり長く話してもだし、この辺りで締めようかな)


 そう判断した彼は、大きく息を吸い、十分な酸素を取り込む。


「我等『(うつろ)』は、悪を憎み、悪を狩る者! 善良なる人々よ、虚を求めよ! 邪悪なる者達よ、虚を恐れよ! 我等は不条理に満ちた既存の枠組みを破壊し、新たな秩序を――『新世界』を創造する!」


 演説が終わると同時、


「「「ボイド! ボイド! ボイド!」」」


 帝国全土で『ボイドコール』が巻き起こった。


(ふふっ、素晴らしい! 第五章の大ボス戦を利用して、帝国臣民(しんみん)の心を掴めたぞ! この調子なら、攻略チャートよりも早く、帝国を侵略できそうだ!)


 極悪貴族は微笑み、満足気に頷く。


 一方、


(ボイド、やはりこいつは危険だ……っ。圧倒的な武力・恐ろしき知力・類稀(たぐいまれ)人心(じんしん)掌握術(しょうあくじゅつ)、あらゆる素養(そよう)を兼ね備えた、『生まれながらの王』……ッ)


 皇帝は強い危機感を(にじ)ませつつも、


(しかし、貴様がイイ気になっていられるのも、今のうちだけだ! こちらにはまだ、『奥の手』があるのだからなァ!)


 瞳の奥に『絶対の自信』を(たぎ)らせた。


「――行くぞ」


「「「「はっ!」」」」


 ルインは言葉(ことば)(すく)なに皇護騎士ロイヤル・ガーディアンへ命じ、闘技場を後にする。


(あの自信に満ちた顔……。今晩早速、奥の手を切るつもりだね?)


 全てを見透かしたボイドは、


(さぁ、いよいよフィナーレだ! 『最優先目標』を回収し、第五章を終わらせよう!)


 哀れな皇帝(おもちゃ)へ、トドメを刺しに向かうのだった。

【※読者の皆様へ、大切なお知らせ】

「面白いかも!」

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作者のやる気が出て、執筆を頑張れる!

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