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世界最強の極悪貴族は、謙虚堅実に努力する~原作知識と固有魔法<虚空>を駆使して、破滅エンドを回避します~  作者: 月島 秀一
第五章

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第二十話:皇帝ルイン・ログ=フォード・アルヴァラ

 魔女の舞踏会に現れたのは、皇帝ルイン・ログ=フォード・アルヴァラ、23歳。

 身長175センチ、銀色のミディアムヘア。

 細く整った眉・大きな蒼い瞳・綺麗な鼻筋、気品と威厳の備わった美しい顔立ちだ。

 体は適度に鍛えられており、ほっそりとしつつも力強さを感じられた。

 純白の布地に金と(あお)意匠(いしょう)が施された、皇帝専用の魔法礼服(まほうれいそう)(まと)っている。

 ちなみに彼は、公式の実施した『意地悪したくなる男キャラランキング』で、ぶっちぎりの第一位を取った『輝かしい経歴』の持ち主だ。


 ルインがメインホールに足を踏み入れると同時、大勢の貴族たちが一斉に動き出した。


「皇帝陛下、ご機嫌(きげん)(うるわ)しゅうございます!」


「お姿を拝見でき、みなが喜んでおりますわ!」


「やはり陛下がいらっしゃると場が締まりますな!」


 みな一様に皇帝を褒め称え、ご機嫌を取ろうとしていた。


(まぁ、無理もないか)


 何せ皇帝は、帝国の頂点に君臨する『絶対王者』。

 ルインに気に入られるかどうかで、その家の未来が決まると言っても過言じゃない。


(彼に気に入られれば、立身出世が約束されるけど……)


 万が一にも不興を買えば、あっという間に干されてしまう。

 そうなったら最後、これまで付き合いのあった貴族たちは、蜘蛛の子を散らしたように逃げて行き――お(いえ)没落(ぼつらく)


(王国であろうと帝国であろうと、『貴族の社会』はどこも同じだね)


 ボクがそんなことを考えていると、皇帝は凛とした表情で、赤い絨毯の上を悠々と歩み出した。


「エドゥアル、腰はもう大丈夫なのか?」


「陛下のそのお言葉で、すっかり良くなりました!」


「ミランダ、昨夜キミの領地で作られたワインをいただいてね。実に芳醇(ほうじゅん)な味わいだったよ」


「陛下のお褒めを(はげ)みに、いっそう精進いたしますわ!」


「ゲール、また子どもが生まれたそうだな。後日、祝いの品でも持たせよう」


「陛下のお心遣いには、感謝の言葉もございません!」


 皇帝は大貴族の中へ()ざり、積極的にコミュニケーションを図った。


(民との距離が近いように見えるけど……それはまやかしだ)


 両者の間には、大きな(へだ)たりがある。


 皇帝は龍涙(りゅうるい)のピアス・黄金郷(おうごんきょう)籠手(こて)・妖精の首飾りなどなど、強力な『魔法の装備』で全身を固めている。

 これは精鋭級(エリートクラス)以下の攻撃を全て無効化できるほどのモノだ。


 さらにその背後には、四人の近衛(このえ)を――『皇護騎士ロイヤル・ガーディアン』を控えさせている。

 彼らは人種・信条・性別・血統・爵位(しゃくい)()らず、単純な武力のみで選抜された精鋭中の精鋭。


(貴族たちの輪に入り、無防備な姿を晒しているように思えるけど……)


 実際のところは、ガッチガチの厳戒態勢(げんかいたいせい)なんだよね。


(――さて、ここからが本番だ! しっかり気合を入れよう!)


 皇帝が魔女の舞踏会に滞在するのは五分ほど。

 宮殿内をグルリと回り、簡単な挨拶を述べた後、すぐに帝城(ていじょう)へ戻ってしまう。

 彼と接触できる時間は、正味(しょうみ)三十秒もあればいいところだ。


 それからほどなくして、ボクと皇帝の目が合ったそのとき、


「「「「……ッ」」」」」


 二人の間を分かつように、皇護騎士ロイヤル・ガーディアンが割って入った。

 顔を真っ青に染めた彼らは、太刀(たち)長槍(ながやり)・魔法書・ぬいぐるみ、それぞれの得物(ぶき)をこちらへ向ける。


(……はて、魔力は完全に消しているはずだけど……?)


 この過剰な反応はおそらく、『第六感』的なアレだろう。

 皇護騎士ロイヤル・ガーディアンたちは、原作ホロウの危険度を『本能』で察知したのだ。


(みんな優秀だね)


 今すぐ家族に迎えたいくらいだ。


「陛下、今すぐお下がりください……っ」


「……この男は危険、濃密な血の匂いがする」


「『極悪貴族』ホロウ・フォン・ハイゼンベルク、想定の遥か上を行く邪悪さだ……」


あの(・・)虚飾(きょしょく)のダフネス』が、早々に身を引いた理由がわかりました。これ(・・)はあまりに危険過ぎる……ッ」


 うーん、凄い言われようだね。


(ボクって一応、『客人』なんだけどなぁ……っ)


 苦笑を浮かべながら、肩を(すく)めると、


「まったく、私に恥を()かせるな」


 皇帝は近衛たちを一蹴し、


「「「「へ、陛下!?」」」」


 堂々とこちらへ歩み寄った。


「はじめまして、ハイゼンベルク公爵。お隣はエインズワース公爵かな? よくぞ我が国へおいでくださった」


「皇帝陛下、此度(このたび)は魔女の舞踏会へお招きいただき、感謝の言葉もございません」


 ボクが小さく頭を下げると、ニアもそれに(なら)った。

 舞踏会のような場で、過度な礼を取り過ぎるのは、(かえ)って無粋というもの。

 華やかな空気を乱さぬよう、ほどよい敬意を払うのが作法だ。


「うちの騎士たちが申し訳ないことをした。どうにもこの者たちは、警戒心が強過ぎるようだ」


「とんでもございません。主人を守るのは騎士の務め、立派な近衛(このえ)をお持ちですね」


「ははっ、そう言ってもらえると助かるよ」


 ボクとルインは(ほが)らかに語り合う。


「ハイゼンベルク公爵、いや……ホロウ殿とお呼びしても?」


「光栄です、陛下」


「ではホロウ殿、お噂はかねがね聞いているよ。『天喰(そらぐい)を討ち取った英雄』だと」


「まだまだ若輩(じゃくはい)の身、天運(てんうん)に恵まれただけです」


「なるほど、先代のダフネス殿も大変な相手だったが、当代は殊更(ことさら)手強(てごわ)そうだ。どうかお手柔らかに頼むよ(人類史(じんるいし)に残る偉業を成し遂げながら、ひとかけらの(おご)りも見られん……。(よわい)15にして、地に足が付いている。やはり俺の直感は正しかった。ホロウ・フォン・ハイゼンベルク、こいつは危険(・・)(・・)


 皇帝の蒼い瞳が、細く鋭く尖る。

 原作ホロウに次ぐ、作中第二位の知性を――『ルイン(ブレイン)』を起動したのだ。


「そう言えば、一つ気になっていることがあってね(ホロウは極めて高い武力を隠し持つ。実際に俺は、ウロボロスに暗殺の依頼を出し、『時忘れの姫(ティアラ)』を放たせたが……失敗に終わっている)」


「なんでしょう」


「王国には『天才軍師』アイリ殿がおられるはずだが……。天喰(そらぐい)討伐戦では、何故ホロウ殿が指揮を()ることに?(しかもこの男は、驚異的な知性を誇る。事実、天喰との戦いで軍師としての才覚を発揮し、王国軍に歴史的な勝利を(もたら)した)」


「実は、彼女とチェスを交えましてね。そこで運よく勝利した自分が、軍師に取り立てられたのです」


「ほぅ、ホロウ殿はチェスを(たしな)まれるのか(そのうえこいつは、邪悪な野心を秘めている。俺の招待状(さそい)に乗って来たことからも、それは明らかだ。魔女の舞踏会を利用して、帝国貴族と繋がりを持ち、勢力拡大を目論(もくろ)んでいるのだろう)」


「はい。と言ってもまぁ、趣味程度のモノですが」


「もしよかったら今度、お相手願えるかな?(圧倒的な武力・稀代(きだい)の知性・底知れぬ野心……。ホロウ・フォン・ハイゼンベルクは、俺と同じ『王の器』だ。いずれ我が覇道(はどう)の――『世界征服』の障害となるだろう)」


「是非、喜んで」


 (なご)やかな会話が、終わりの空気を(かも)す頃、


「さて、私はこの辺りで失礼しようかな。何分、公務が溜まっているものでね(とにかく、ホロウに王位(おうい)を継がせてはならん。多少の醜聞(しゅうぶん)(かぶ)ってでも、今ここで仕留めるッ!)」


「貴重なお時間をいただき、ありがとうございました」


 皇帝はクルリと(きびす)を返し、自身の横髪を右手でサラリと()いた。


(おっ、『合図』だ!)


 次の瞬間、宮殿の天井――巨大なステンドグラスが割れ、黒いローブを(まと)った男が乱入する。


「「「きゃぁああああああああ……!?」」」


 大貴族たちが悲鳴を上げる中、


「――ハッハァ゛!」


 招かれざる客は、凶悪な魔力を放ちながら、一直線にこちらへ向かってきた。


「陛下、お下がりくださいッ!」


「おいおい、なんだこのふざけた魔力量は!?」


「誰だか知らないけど……あいつ、無茶苦茶強いね」


「命に代えても、皇帝陛下をお守りするのだ……!」


 何も知らされていない皇護騎士ロイヤル・ガーディアンたちが臨戦態勢を取る中――皇帝は一人、邪悪に微笑む。


(くくっ、ホロウ・フォン・ハイゼンベルク、貴様の覇道(はどう)はここで終わりだッ!)


 一方のボクは、冷静に思考を回す。


(さて、これが魔女の舞踏会における『死亡フラグ』――大魔教団の奇襲だ)


 黒いローブに身を包んだ彼は、天魔十傑(てんまじゅっけつ)第五天(だいごてん)ザラドゥーム。

 有する固有は、起源級(オリジンクラス)の<森羅万消(しんらばんしょう)>。

 右手で触れたあらゆる現象を消し去るという、極めて強力な戦闘に特化した魔法だ。


(皇帝は法外(ほうがい)な金でザラドゥームを雇い、ボクを抹殺しようとしている……)


 さて、この死亡フラグをどう(さば)くか。


(虚空は――駄目だ)


 こんな大衆の面前で使えば、ホロウ=ボイドだとバレてしまう。


(強力な魔法は――リスクが高過ぎる)


 手加減を苦手とするボクが、強い魔法を使った場合、うっかりこの場にいる人たちを皆殺しにしてしまうかもしれない。


 つまり現状は、両手両足を縛られた状態、所謂(いわゆる)飛車角(ひしゃかく)落ち』だね。


(いろいろと窮屈(きゅうくつ)だけど……)


 原作知識を持つボクは、『完璧な秘策』を用意してきた。


(原作ホロウの死亡フラグをへし折りつつ、皇帝に強烈なインパクトを与えるには、いったいどうすればいいか?)


 答えは簡単。

 圧倒的な『基礎ステータスの暴力』で、蹂躙(じゅうりん)すればいいのだ!


「ホロウ・フォン・ハイゼンベルクゥ、その首ィ……もらい受けるぜェ!」


 ザラドゥームは天高く跳び上がり、まるで獣のように襲い掛かってきた。


 勢いよく振り下ろされるのは、森羅万象を消し去る魔手(ましゅ)


 対するボクは、右腕を魔力で強化し、


「――が、は……っ!?」


 ザラドゥームの胸部を深々と貫いた。

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― 新着の感想 ―
ぬいぐるみ が 武器扱いイィィィ ( ⊙๐⊙)ィィィィイ?
ああー、ホロウと違って頭でっかちタイプかー。完全な頭脳派なんだね。だから、自分の護衛が過敏に反応しちゃう理由にも思い至らないのか。
皇帝くんが"意地悪したくなる男"になる理由がわかった気がする 策士策に溺れるタイプなんだな
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