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試食会

 湧哉は美術室を後にし、一階まで下りてきた。もちろん、学食に行くためだ。

「みんなまだいるといいんだけどな」

 昼の休憩の際にはALMの話で時間を取られてしまったので昼食をとっていない。できればここで試食のカツサンドにありつきたいのだ。

 中をのぞき込むと生徒がいるのが見えた。どうやらまだ学食で作業をしているようだ。

 湧哉が学食に入るとすぐにそれに気付いた悠が駆け寄ってきた。

「ハタハタ、どこ行ってたの?」

「ちょっと野暮用があったんだ」

「ふーん」

「昼飯まだ食べてないんだけどまだ余ってるか?」

「お腹いっぱいにはとてもならないけどクラスの人数分作ってあるから大丈夫。こっちだよ」

 カツサンドは定食の出てくるのカウンターに置いてあった。調理場にも何人かおり、作業をしている面々はエプロンと頭に三角巾を付けている。どうやら手順の確認をしているようだ。しかし、湧哉はそちらには目も向けずにカツサンドを一切れ手に取った。

「確かにこれじゃあ満腹とはいかなそうだな」

「試食だからね。これはカツをパンで挟んだ後に8等分してるけど、当日は2等分にして2切れワンセットで売る予定だって」

 悠のはなしを聞きながらカツサンドを口に放り込む。

「モグモグ、思ったより肉厚だな。3切れあればそれなりに満足感ありそうだ」

「他にも出店は出るからこれだけで満腹にしようって人はいないだろうけどね。2人で1つ買って1切れずつ食べるのがよさそうだよ」

「それもそうか。確かに文化祭で食べたのが一種類っていうのは寂しいもんな」

「それとハタハタも口の中身が無くなったら手順の確認してきたら? もしかしたら担当するかもなんでしょ?」

「ああ、そうする」

 湧哉はカツサンドを飲み込むと調理場へと入った。

「あ、畑原君。どこ行ってたの?」

 湧哉に気が付いた澤もエプロンをし頭に三角巾を巻いている。実際に調理をしていたようだ。

「ちょっと野暮用で。先に手順聞いちゃってもいいか?」

「うん。やってみた感じは教室で決めた通りになると思う。ここで揚げたカツを屋台に持って行ってパンに挟むの。ここで完成させちゃってもいいのかもしれないけど屋台で作ったほうが人が来てくれるかもしれないし」

「カツ揚げて、パンに挟んでカットして、店番。やっぱり3人は担当がほしいよな」

「今日何人か時間割いてくれるっていう子がいたから少しは楽になりそう」

「そっか。じゃあ希望は持てそうだな」

「皆、協力してくれてるのになぁ……」

 澤が何を言おうとしているのかはわかった。自分の時間を割いてくれるクラスメイトもいるが、全く顔を出さない者もいる。それが仲の良かった相手なだけに心苦しいのかもしれない。やはり澤は高坂のことが心配なのだ。

「俺がどこに行ってたかなんだけどさ」

「?」

「美術室で高坂と木梨に会ってた」

「2人、学校に来てるの……?」

「ああ。もう少ししたら顔出すって言ってたぞ。だからそんなに心配しなくて大丈夫じゃないか?」

「う、うん。そうだね。それじゃあカツサンド、2人の分もとっとかないとね」

 澤は遠慮がちに笑った。そこから教室に戻るまで澤は少し上機嫌に見えた。

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