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ああだったのなら

 昨日も悠の家に泊まり込んで課題を進めていたのだが、あまり集中することはできなかった。古野濱が湧哉のしてきたことを知っていたことが気になって仕方がなかったのだ。集中できない湧哉を悠がたきつけることで何とか進めることができたが一昨日ほどの成果は出なかった。

 奥崎は今朝も仕事を頼まれたらしく、湧哉と悠は記念館へは行かず直接学校へ向かった。

 クラス内は昨日と同様に二組に分かれて作業をしていた。各々の係に仕事が任されていることもあり実行委員としての湧哉の仕事はほとんどなかった。主には調理係の集まりに悠と参加している形となっており、決まったことを少しずつメモするぐらいだ。

 昨日出された案からしぼりこみが行われ、注文ごとのトッピングは廃止にし、決まったメニューから選べるようにすることになった。揚げ物はカツの一種類にし、キャベツとからしの入り抜きでバリエーションを作ることにほぼ決定した。残るは調理の試作だけにまとまり、今は滝が食材を取りに井ノ瀬と他数人とともに自宅にむかったところだ。

 記念館取り壊しに対する意見は集めた分は悠が昨夜のうちにすべて終わらせてしまい二人は手持ち無沙汰だった。

「ハタハター、昨日からどうしたの? 調子悪いなら言ってよ?」

「ああ、大丈夫だ」

 昨夜からこのやり取りを何度かやっている。湧哉自身は表に出ないようにふるまっていたつもりだったが、気が付くと奥崎や古野濱、阿良田の言っていたことを考えてしまっていた。昨日の話は古野濱が奥崎へ伝えたようで、これまでのことの説明は午後一番で話をすると連絡が来ている。知りたいことではあるが、自分の立ち位置がどういうのものなのかを考えると不安になるのだった。

 そんな湧哉のもとに新たな心配事が舞い込んだ。

「畑原君」

「どうしたんだ澤。そっちはもう終わったのか?」

「屋台の進み具合は順調なんだけどその……」

「なんかあったのか?」

「高坂さんと木梨さんがが来てないの。何も、聞いてない、よね?」

 そういえば二人の姿は見えなかった。昨日も最後まで現れなかった二人だったが今日も休みなのだろうか?

「その二人のことなら柳鳥に聞いたほうがいいんじゃないか?」

「聞いてみたんだけど遅れてくるって言ってるの。昨日も来てなかったし。このままだとあの二人、クラスで孤立しちゃうんじゃないかなって心配で」

 昨日話したクラスメイトの反応を見る限りではすでに孤立しているようにも感じられたが、澤はそれを何とかしようとしているらしい。高坂にあれこれと言われていたことを知っているのかどうかはわからないが、澤は二人をこんな状況に置いておくことができないのだろう。準備がすべて終わってしまう前に何とか二人を連れてきたいのだ。

 しかし、特別親しいわけでもない湧哉には彼女たちがどこにいるのかはわからない。

「もし見かけたら顔出すように言っとく。まあわざわざ学校に来ておいて顔を出さないなんてことはないと思うんだけどさ……」

「でも、もし見かけたら、よろしくね」

「ああ、わかった」

「ありがとう」

 澤は申し訳なさそうに礼を言うと湧哉たちの元から去っていった。その後姿を見ながら悠の口が開く。

「澤さんも大変だよね。こういうことにまで気を使っちゃうなんて。だからこそ委員長になったんだろうけど」

「でも、ああいう風に他人のことを無償で助けようとする人ばっかりだったら世の中簡単でいいよな……」

「今日のハタハタはやっぱりおかしい」

 何を言っているんだという悠の言葉には答えずそのまま澤の背中を見つめた。もし自分も彼女と同じだったのなら、こんなにも不安になることはなかったのにと思いながら。

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