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放っておけない

 湧哉は悠と記念館での意見集めをまとめていたが、30分ほど経った頃澤は1人で戻ってきた。細かい打ち合わせは滝の家族と井ノ瀬が行うらしく今は電話で話をしているそうだ。

 こちらはと言えば屋台係の数人が近所のスーパーへ段ボールをもらいに出かけて行ったが残りのメンバーは何をするでもなく各々好きなことをしていた。調理係は役割も決まったので特にすることがない思われたが、女子数人がいくつかメニューを考えて始めたことをきっかけに皆であれこれと意見を出し合っているようだ。

 湧哉は戻ってきた澤に悠に書いてもらった調理係のメモを渡した。

「今のままじゃどうしても空きが出ちゃうみたいなんだよ。門紅はもう少し時間が経てば予定が決まってくるからそれからでもいいとは言ってたんだけどさ」

「もしも引き受けてくれる人がいたら助かるけど、誰もいなかった時は私がやるから大丈夫」

「でもせっかくの文化祭なのに働きづめじゃもったいなくないか?」

「行事ごとの時には誰かが働いてるものだし、特に珍しい事じゃないよ」

「……。まあ言ってることはわかるけどさ」

 澤は笑顔で答えたが、湧哉にはどこか形式化されたようなものに見えた。

 文化祭と言えば学生にとっては年に一度のイベントだ。湧哉のように自分で何かしたいことがあるわけでなくとも出し物を見たり屋台をぶらついたりするのは楽しみのはずだ。湧哉は去年の文化祭ではそれどころではなかった分、猶の事そう思っている。しかし、このままのスケジュールでいくと澤は2日間ともそんなこともできずに過ごすことになってしまいそうだ。澤のいうことはわかるが言い方を変えれば自分が犠牲になっているとも言える。

「もし誰も名乗り出なかったら俺も手伝うわ。いくらなんでも1人じゃ無理があるだろ?」

「でも、畑原君もやることあるんじゃ……。実行委員だからって責任感じてるなら私がお願いしたんだから気にしなくても―――」

「たぶん当日はそんなに用事ないからさ」

 澤はどうしようかと迷っているようだが湧哉は更に詰めていく。

「それに畑原は実行委員のくせに澤に仕事押し付け過ぎだって言われるのも嫌だしさ。門白にもそんなこと言われたんだわ。澤に全部押し付ける気じゃないだろうなーって」

「……。うん、それじゃあ、お願い、しようかな」

 澤は先ほどと同じように笑顔だったが、今度は張りつめていたものがほどけたようだった。

「それじゃあ、私も頑張らないとね。屋台係のメモはある?」

「あ、それはもらうの忘れてたな。頼んではあるんだけど」

「じゃあもらってくるね」

 誰に頼んだのかも聞かずに澤は屋台係の集まりの方へ行ってしまった。湧哉の手助けで少しは気が楽になったのか雰囲気も声色も幾分か明るくなったようだ。

「ハタハタってさ―――」

 湧哉と澤のやり取りを聞いているだけだった悠は澤が立ち去ってから口を開いた。

「―――結構優しいとこあるよね~」

「は? なんだよ急に」

「奥崎先生にはなんか気を使ってるし、僕のことは手伝ってくれるし、澤さんのこともしっかりフォローしてる。無視しようと思えばどれもできたことなのにさ」

「任されたのに何もしないんじゃ後味悪いだろ。それにいつでもこうしてるわけじゃないしな!」

「そっか」

 悠はそれで納得したような口調だったが湧哉が照れ隠しで答えたんだとわかっていたんだろう。そのことは湧哉も理解しているようでそれからしばらくそっぽを向いていたのだった。

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