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逆転策

 集の去った後、会議の準備があるからと井ノ瀬もどこかへ行ってしまった。用事も済ませ職員室に残っている理由もないので湧哉と澤はその場を後にしていた。井ノ瀬にあった後はそのまま校舎を出るつもりで来たのでそのまま下駄箱へと向かう。

 井ノ瀬の言っていた今回の急な会議。この会議で話が進めば取り壊しの話は一歩進むことになるだろう。それは奥崎への向かい風が強くなることを意味する。そんな中で奥崎はこれからどうするのだろう? どんなに思いが強くても、一人の力ではどうしようもないこともある。だからこそ湧哉を行使していたというのに今はそれすらもない。奥崎の話を聞き、多少なりとも彼女に同情していることは湧哉自身も認めるしかなかった。だが、教師である奥崎ですら動かすことに必死になっているこの現状を一生徒である湧哉にどうこうできるはずもない。

(視聴覚室の時みたいに乱入するか? ……いやいや、さすがにそれはまずいだろう。それをやったら俺が完全に悪者だ。そもそも会議を止めてどうなる話でもないだろうし……)

 などと考えている横で、澤は湧哉の様子を窺っていた。職員室で突然慌てだしたかと思えば、集の登場に戸惑い、彼が去ると今度はおとなしくなり一言も話さない。不可解な行動をとる湧哉に少々困惑しているようだ。

「畑原君、何か悩み事があるなら相談に乗るけど」

 そんな中でも気遣いができるのはさすがは委員長の鏡と言ったところだろうか。

 一人で考えていても結果は変わらないので湧哉は少し話してみることにした。

「澤はさ、旧校舎のこと知ってるか?」

「旧校舎は知ってるけど、それがどうかしたの? 取り壊されたんでしょ?」

「実はその一部が残ってる残ってるんだ?」

「え、そうなの?」

「ああ。それが記念館として残ってるんだけど取り壊すって話があるらしいんだ。それを何とかできないかなーってわけ」

「うーん……」

 いろいろと端折っているがこれで大丈夫だろうか? 澤は頭をひねっていたがすぐに答えをみつけたようだ。

「学校の事なら生徒会に申請してみたら? 議題に上げてもらって審議してもらえばもしかしたら止められるかもしれないよ」

「生徒会かぁ……」

「ダメかな?」

「たぶんダメじゃないかな……。地域がどうとかいう話らしいし」

「ち、地域……!?」

 地域行政まで関わっているとなると生徒会くらいの規模では話にならなそうだ。そもそも生徒には内密になっている事案だ。取り上げられても却下されそうだ。

 澤は学内での話かと思っていたらしいが、湧哉が話を省いたせいでうまく伝わらなかったらしい。話が大きくなったことに驚いていた。

「そうなると生徒会じゃダメかもしれないね……。うーん、それじゃあ署名を集めるっているのはどう?」

「署名?」

「地域の事なら町の人にお願いして署名してもらえばいいんじゃないかな? この地域の人にどれくらい記念館のことが浸透してるかに寄るけどね」

「それ、行けるかも」

「本当!?」

 悠の話ではこの町に住んでいる人の中には渡ヶ丘高校を出た者が多くいるらしい。連絡が付くかはわからないが、一万人もいるのだ。取り壊しに反対の人もいるだろう。それが集まれば大きな力になるはずだ。

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