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本日最後の仕事へ

 奥崎の話を聞いたことで湧哉の中にあった疑問は解消された。無茶なことをやらされたことはもちろんよく思っていなかったが、奥崎からは自分が間違っていたと謝罪があった。もう湧哉に連絡が来ることはないだろう。 奥崎と湧哉の問題はひと段落ついた、といったところか。

 だが新たな問題も生まれた。悠と記念館だ。

 旧校舎に思い入れのある悠が記念館まで取り壊されると知ったらどう思うだろう。記録はデータとして残されるが思い出はそうではない。そこにあったものがすべてなくなってしまうのだ。悠はショックを受けるだろう。奥崎もあきらめないと言っていたが現状から盛り返すのは難しいように思えた。

 いずれわかることだ。今伝える必要もないだろうと思い湧哉は教室の戸を潜った。

 もうクラスにはほとんど人が残っていなかった。今も何人か教室から出て行くところだ。今日の集まりは解散したようだ。

 湧哉の席には悠が、その隣の席には澤が座っている。湧哉が近づくと二人ともこちらに気が付いた。

「畑原君、やっと帰ってきた」

「ハタハタどこ行ってたの?」

「ちょっと小腹が空いたから購買に行ってた」

 残っていたお茶をふらつかせて見せる。学食に寄っていたことは口に出さない。何をしていたのかと聞かれれば返答に困るからだ。

 湧哉が昼食をあまり食べていなかったことは二人とも知っていたのでなるほどという顔をしていた。

「二人は何してたんだ?」

「僕たちはハタハタ待ち~」

「俺?」

「僕は今日家に来るのことで、澤さんとはこれから職員室に行くんでしょ?」

「あ……。そうだった。悪い悪い」

 奥崎との話でそのことをすっかり忘れていた。今日はまだやることが残っていたのだ。

「僕は記念館に寄ってから帰るよ。準備できたら連絡してね」

「今から行くのか?」

「資料を少し持ち帰らしてもらえることになったから。家で少し目を通したいんだ」

「わかった。じゃあこっちも終わったら連絡する」

「うん。じゃあまた後でね。澤さんはまた明日」

「また明日ね」

 悠は席を立つと自分の鞄を持ってバイバイと手を振りながら教室から出て行った。さて今度は澤の番だ。

「それじゃあ私たちも行こうか」

「俺何も準備しなかったけど大丈夫か?」

「グループ分けの結果をまとめたのを渡して少し話するだけだから大丈夫だよ。もう教室に用がなければ荷物も持って行った方がいいかもしれない」

「そうか。ちょっと待っててくれ。今準備するから」

 湧哉は持ちかえるものを鞄に詰め込んでいく。筆記用具、課題のプリント、物理の教科書にノート。それから最後にポケットから取り出した財布とお茶を投げ込んだ。

「オッケー。準備完了」

 湧哉の声に澤も自分の鞄を手にとった。二人は会話しながら教室を出て行った。

 朝のこの教室に始まり、今日は様々なことが湧哉の周りで起こった。本日最後の仕事は何事もなく終わるといいのだが……。

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