カーテンコール すべてはあなたの笑顔のために! ☆
――そこは、世界のどこからでもいける場所。
――そこは、世界のどこにも存在しない場所。
――そこは、あらゆる知識が詰まった場所。
――そこは、探し物をかかえた者が、最後に頼る場所。
神秘と秘密を司る天使の名を冠したその場所。――古今東西ありとあらゆる書物を集めたその図書館の名は、ラジエルライブラリといった。
* * *
――かつて、その図書館に選ばれた一人の幼い少女がいた。
成長し、再びこの図書館を訪れた彼女が選んだのは、ラジエルライブラリの司書見習いになるという道だった。
司書見習いとなった彼女は多くの人に支えてもらいながら、悩みをかかえる利用者達と真正面から向き合い始めた。
そして……、
彼女がいたから、一人の幽霊は恋人の真っ直ぐな思いと巡り合うことができた。
彼女がいたから、一人の女の子は明日に向かう力を取り戻すことができた。
彼女がいたから、二人のお化けは悔いを残すことなく、大好きな恩人と笑顔で別れることができた。
何より……彼女は身に着けた司書としての知識と決して変わらない優しい心で、見事に彼らと大切な親友の笑顔を守ってみせた。
これらはすべて、彼女がいなければ――彼女でなければ起こらなかった奇跡であり、彼女が迷える利用者の灯となった、揺るぎない証だ。
――そう。彼女は確かに、司書見習いとしての第一歩を、ラジエルライブラリに刻み付けたのだ……。
だが、彼女の歩みはそこで止まらなかった。
一歩は二歩になり、二歩は三歩になり……。
彼女は前へ前へと進み続けた。
そして、彼女が司書見習いになった日からちょうど十年後――。
「久しぶり、セファーラジエル」
「やあ、しおり。いらっしゃい」
貴賓室のようなその部屋で、彼女はおよそ十六年ぶりにその本と再開を果たした。
「長い間待たせちゃって、ごめんね。でも……約束通り、ここまで来たよ」
「うん……。――本当に立派になったね、しおり」
交わす言葉は少なくとも、そこに込められた思いは計り知れない。
司書見習いになった時から、ここへ来ることを夢見続けた彼女。
彼女が初めてこの部屋を訪れた日から、彼女が再びここへやって来る日を待ち続けた本。
二人のあふれんばかりの思いが、この部屋に満ちていた。
「おい、セファーラジエル。そろそろ……」
彼女達の傍らに立つ少年――図書館長が儀式を進めるようにうながす。
「ああ、ごめんね、エノク。あまりのうれしさに儀式中だってことを忘れていたよ。――では、改めて……」
ゴホンと一つ咳払いをする本。
すると途端に、本から厳かな気配が放たれ始めた。
「第32番閲覧室司書見習い、神田詩織」
「――はい」
名前を呼ばれた彼女が、本の前へと進み出る。
「神田詩織……。汝を、ラジエルライブラリの司書として認める。――どうか、この図書館の司書として迷い人達の灯となってくれ」
「――その任、確かに拝命いたしました」
胸に手を当てた彼女が、本に向かって恭しく一礼する。
今ここに、新たなラジエルライブラリの司書が誕生したのだった――。
利用者と本をつなぐ者、ラジエルライブラリの図書館司書。
彼らは今日も人知れず、探し物をかかえる迷い人の灯となっている。
これは、そんな存在になることを夢見た一人の少女が紡いだ……いや、そんな存在になった彼女が紡ぎ続ける、絆の物語――。
〈了〉
『すべてはあなたの笑顔のために! ~見習い司書、頑張ります!~』はこれにて完結となります。
完結までお付き合いいただきましたこと、謹んでお礼申し上げます。
どうもありがとうございました。




