終幕 ラジエルライブラリの司書見習い
葵ちゃん達へのレファレンスが終わって数日。四月も間近に迫り、外では桜も咲き始めた今日この頃。
ラジエルライブラリ第32番閲覧室ではいつもと同じように、立川さんとエノク君、そしてわたしがお仕事に励んでいた。
「これで……よし! エノクくん、この間のレファレンスの報告書、できたよ」
「ん? もうできたのか。報告書をまとめるのもずいぶん早くなったな。感心、感心。――では、早速読ませてもらおうか」
「了~解。それじゃあ、はい! 確認よろしく!」
書き立ての報告書をエノク君に手渡す。
すると、ちょうど同じタイミングで、紅茶とお茶請けをお盆にのせて立川さんが戻ってきた。
「お待たせしました。館長、詩織さん、お茶の用意ができましたよ」
「おっ! ナイスタイミングだ、立川。――よし! それならお茶をいただきながら、この報告書を使ってミーティングでもするとしよう」
「わかりました。では、すぐに並べてしまいますね」
「あ、立川さん、わたしも手伝います」
立川さんからお茶請けのクッキーがのった大皿を受け取り、テーブルの真ん中に置く。その間に、立川さんは丁寧かつ素早い手つきで紅茶をサーブしていった。
紅茶とお茶請けも並べ終わり、三人でテーブルを囲んでミーティングを開始! ……しようとした、その瞬間だ――。
――コンコンッ!
不意にドアをノックする音が、閲覧室内に響いた。音がした方向は――入り口の方のドアだね。ということは……。
「あれ? もしかして利用者さんが来たのかな?」
「ええ、そのようですね。では館長、ミーティングはまたの機会ということで」
「うむ、そうだな。――さあ二人とも、利用者に失礼がないよう、気を引き締めろよ」
閲覧室内の空気を切り替えるように、エノク君がパンパンと手を打つ。
そのままエノク君は、館長然とした態度でわたしを振り返った。
「見習い、今回もしっかり励めよ。失敗を恐れず、立川とともにベストを尽くせ!」
「任せてよ、エノク君!」
勢いよく立ち上がりながら、『待ってました!』と言わんばかりの口調でエノク君に応える。
「よし、良い返事だ! では、行って来い!」
「了解!」
エノク君に送り出され、わたしは利用者さんを出迎えるためにドアの前へと駆け出す。
ゆっくりと扉を開き、わたしは立川さん直伝の親しみを込めた笑顔で利用者をお迎えした。
「ようこそ、ラジエルライブラリへ!」




