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ラジエルライブラリの司書見習い  作者: 日野 祐希@既刊9冊発売中
レファレンスNo.3 見習い司書とつながる絆
57/68

レファレンスNo.3 8-1

「こんにちは」


 午後一時、五分前。ガチャリという扉の開く音に続き、葵ちゃんのよく通るきれいな声が閲覧室に響いた。

 さすがは葵ちゃん。時間はきっちり守るね。

 ちなみにわたし達、ただ今物陰(ものかげ)(かく)れて葵ちゃんの動向を観察中(かんさつちゅう)であります。これぞ、サプライズの第一段階なのです!


「あれ? 誰もいな――」


「せーの!」


 ――パンッ! パンッ! パンッ! 


 葵ちゃんが首を傾げた瞬間、三つの破裂音(はれつおん)が閲覧室内に()り響く。

 物陰から飛び出したわたし、キンタ君、アンちゃんの三人でクラッカーを鳴らしたのだ。


「いらっしゃい、葵ちゃん!」


「アオちゃん、いらっしゃい!」


「まってたよ、アオちゃん!」


 わたし達はクラッカーを持ったまま、諸手(もろて)を広げて葵ちゃんを出迎える。

 けど、葵ちゃんの方はびっくりしすぎたのか、二重のぱっちりした目を大きく見開いて立ち尽くしていた。


「みんな、クラッカーなんか鳴らしてどうしたの? びっくりしちゃったよ」


 葵ちゃんがあっけにとられた表情のまま、どういうことか聞いてくる。本当にわけがわからないといった様子だ。

 うふふ。サプライズの第一段階、大成功!


「安心して、葵ちゃん。それは、この子達が教えてくれるから」


 キンタ君とアンちゃんの後ろに回って、彼らの背中を押す。

 すると、二人の背中から緊張している気配が伝わってきた。


「……頑張れ、二人とも」


 二人の耳元で、そっとエールを送る。

 わたしの後押しにうなずき合う二人。そのまま一歩進み出て、葵ちゃんに話し始めた。


「あたしたちね、もとのじだいへ帰るまえに、アオちゃんへおれいがしたかったの」


「そしたら、しおりお姉さんが『みんなでパーティをしよう』ってさそってくれたんだ。それで、みんなといっしょに朝からじゅんびしたんだよ。みて、アオちゃん」


 キンタ君達が閲覧室の中を指し示す。 

 いつもは落ち着いた雰囲気の閲覧室も、今日は色鮮やかでポップなパーティ仕様だ。

 色とりどりの折り紙で作った輪飾(わかざ)りが(かべ)(いろど)っている。

 そして、チェック柄のテーブルクロスを()いた応接用のテーブルには、わたしが家や書庫から持ってきたパーティ用のゲームが置かれていた。


「きょうはいっぱいあそぼう、アオちゃん!」


「さいごにたのしいおもいで、いっぱいつくろうよ!」


 そう言って、キンタ君とアンちゃんが葵ちゃんの手を取る。

 自分の手に重ねられた二人の手を、呆然(ぼうぜん)(なが)める葵ちゃん。

 そのままゆるゆると顔を上げ、葵ちゃんは二人に向かってこう問いかけた。


「――二人とも、私のために準備してくれたの? こんなに頑張ってくれたの?」


「うん! だって、アオちゃんによろこんでもらいたかったから!」


「あたしたち、アオちゃんのわらっている顔がみたいんだもん!」


 ニッコリ笑って、葵ちゃんの問いかけに答えるキンタ君とアンちゃん。

 二人の笑顔を見て、呆然としていた葵ちゃんの顔が、みるみるうちにほころんでいった。


「ありがとう、二人とも。とってもうれしいよ。――そうだね、今日はいっぱい遊ぼう。いっぱい思い出作ろう」


 葵ちゃんが優しく二人を抱きしめる。さらによく見ると、感極(かんきわ)まったのか、その目にはうっすらと光るものが見て取れた。


(よかった。キンタ君とアンちゃんの思いが、ちゃんと葵ちゃんに届いて……)


 目の前で繰り広げられる光景を、わたしは横から温かく見守る。――見守っていたのだけれど……。

 グスッ! くっ、三人を見ていたら、思わずわたしまで感動してしまった。心の汗が目にしみるぜ!


「おっ! 役者はそろったようだな」


「そのようですね。グッドタイミングでした」


 わたしが目から溢れ出た心の汗をぬぐっていると、聞き慣れた声が耳を打った。

 司書用の大きなキッチンに行っていた立川さんとエノク君が戻って来たようだ。


「立川さん、エノク君、お帰りなさい!」


 声のした方を振り返ると予想通り。書庫の扉に前に立川さんとエノク君が立っていた。

 二人とも手には大きなバスケットを持っていて、そこから発せられる甘くていいにおいが、鼻腔(びこう)を優しくくすぐった。

 さすが、立川さんが腕によりをかけただけのことはある。においだけでほっぺたが落ちそうだ。

 うん! これはおやつが楽しみだね!

 とはいえ、おやつの時間はまだ先。お菓子は一端(いったん)横に置いとくとして……、これでパーティの参加者が全員そろったわけだ。

 よし! それじゃあ……。


「それじゃあ、これよりパーティを始めます! 司会はわたし、神田詩織です。皆さん、どうぞよろしくお願いしますね!」


 全員がソファーに座ったところで、わたしがパーティの開会を宣言する。今回のパーティの言い出しっぺとして、私が司会進行を任されたのだ。


「いいぞ、見習い!」


「詩織ちゃん、かっこいいよー!」


 わたしの開会宣言に、みんなは大きな拍手(はくしゅ)声援(せいえん)で送ってくれる。なので、わたしもペコペコと軽く会釈(えしゃく)しながら、みんなに応えた。


「どもども。ご声援、どうもありがとうございます。では、早速進めていきますね。まずは――プログラムナンバー1、ゲーム大会です! みんな、張り切っていってみよう!」


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