表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラジエルライブラリの司書見習い  作者: 日野 祐希@既刊9冊発売中
レファレンスNo.3 見習い司書とつながる絆
51/68

レファレンスNo.3 4-3

「さて、それでは早速、本を探しに行くとしましょうか。――詩織さん、行きますよ」


「了解です、立川さん!」


 立川さんが空飛ぶ絨毯の準備を始めたので、わたしはカウンターからコンパスの入った巾着袋(きんちゃくぶくろ)を取り出す。

 道具の準備が完了し、いつも通り一礼をして書庫へレッツゴー!

 ――と思ったら、葵ちゃんがおずおずと手を上げながらわたし達に言った。


「あの、御迷惑でなければ、私も付いて行っていいでしょうか? できることなら、私も本を探すお手伝いしたいのですが……」


「ふむ……。――別に構わないぞ。書庫へ本を取りに行くのに、利用者を(ともな)ってはいけないという規則はないからな。さっき、そこの見習いが書庫を案内すると約束していたことだし、行ってくるといい」


「本当ですか、館長さん!」


「ただ、絶対にこいつらとはぐれないようにしろよ。――最悪、書庫の中で遭難(そうなん)するからな」


「はい、わかりました。ありがとうございます」


 エノク君から許可をもらい、葵ちゃんが嬉しそうにお礼を言う。

 よーし! 話もまとまったし、それじゃあ三人で、出発進行! 

 ――とは、またしてもいかなかった(何か今日は、こんなのばっかりだね)。


「アオちゃんがいくなら、ぼくもいきたいです!」


「あ、あたし、も」


 何と、キンタ君とアンちゃんも「行きたい!」と言って、手を上げ始めたのだ。

 まあ、葵ちゃんが行くと言うなら、二人も行きたいって言うに決まっているか。

 仕方がない。それじゃあ五人で……、と思ったのだけど、そこで立川さんが思案顔になってしまった。

 うん? どうしたんだろう……?


「ふむ……。そうなると、少々定員オーバーですね。――わかりました。では、私はここに残りますので、本の探索と皆さんの案内を頼みますよ、詩織さん」


 不思議に思って様子を(うかが)っていたら、立川さんが言葉とともにわたしの肩をポンと叩いた。

 えっ! ちょっと待ってください、立川さん。それってつまり……。


「ふぇ? それって、わたしと葵ちゃん達だけで行って来いってことですか?」


「はい、その通りです。頑張ってくださいね、詩織さん」


「ふぇええええ!」


 突然のことに、思わず変な声を上げてしまう。

 まさか、わたし一人でみんなを案内しながら、さらに本を探すことになるなんて、まったくの想定外だよ!

 葵ちゃん達を書庫への扉の前で待たせたまま、わたしは立川さんに向かって小声で話を続けた。


「ここは、立川さんが行った方が良くありませんか? その、色々と……」


「先程、館長も言っていた通り、詩織さんには様々なレファレンスを体験してほしいですからね。ここは詩織さんにお任せしてみようと思います。それに、葵さんも気心知れたあなたといた方が緊張(きんちょう)せずにすむでしょう」


「た、確かにそうかもしれませんが……」


 立川さんが言うことは、すべてもっともだ。

 それに、わたしだって葵ちゃん達の役に立ちたいという思いはある。それは絶対に(うそ)じゃない。


(でも……)


 立川さんに「頼みますよ」と言われた瞬間、不意に頭をよぎってしまったのだ。――デューイさんのレファレンスで、大失敗した時の記憶が……。

 葵ちゃんに情けない姿を見せたくない。期待を裏切りたくない。

 そんな絶対に失敗したくないという思いが強くなるほど、比例するようにあの記憶が頭を満たしていき、(およ)(ごし)になってしまう。


(わたし一人で、本当に大丈夫なのかな……)


 いやな記憶を振り払い切れず、思わずギュッと目をつぶる。

 すると、その時だ。

 立川さんがもう一回、オロオロするわたしの肩を軽く叩いた。


「心配しなくても大丈夫ですよ。詩織さんは、御自身で思っている以上にしっかりしていますし、努力を重ねています。そんな詩織さんが、前のような失敗を繰り返すはずありません。――ですから、まずは利用者さん達といっしょに頑張ってみてください」


 わたしの心情を察した立川さんが、安心させるように笑いかけてくれる。

 さらに、すべてお見通しといった表情で、エノク君がわたしの前に立った。


「前に言ってやったことを忘れたか? 万が一、お前がミスをしたら、オレ達が全力でカバーしてやる。お前はいつも通り、利用者のことだけ考えて突っ走ってこればいい」


「立川さん……。エノク君……」


 二人の顔を見回す。彼らの顔に宿っていたのは、信頼と『やってみろ!』というエールだった。


(……うん! 二人にここまで言ってもらって、「やれません」なんて言えないよね!)


 いつまでも前の失敗を引きずっているわけにもいかない。今より前に進むためには、恐れずに一歩を踏み出さなきゃ!

 そう自分に言い聞かせ、わたしはガッツポーズをしながら、立川さんとエノク君を見た。


「わかりました。わたし、頑張ります!」


「ハハハ。意気込みすぎて、逆に緊張するなよ~」


 いつもの調子に戻って茶化すようにエノク君が言う。これも、わたしの緊張をほぐそうとしての冗談だろう。だからわたしも、「任せてよ!」と笑顔でウィンクをしながら返事をした。


「じゃあ二人とも、行ってきます!」


「はい。行ってらっしゃい、詩織さん」


「おう! 行って来い!」


 強気の笑顔で二人に頷き、わたしは書庫への扉の前で待っていた三人のところへ行く。


「お待たせ、みんな。それじゃあ、張り切って本を探しましょう!」


 三人に向かってそう言ったわたしは、力強く書庫への扉を開いた――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ