レファレンスNo.3 1 ―Side:A― ◆
注:この話は、主人公以外の視点で進みます。
六年前の出来事を、私はきっと一生忘れないだろう。
あの日――六年前のあの日、私は彼女に救われた。
こんなことを彼女に言ったら、彼女は「そんな大層なことはしてないよ」と照れながら笑うだろう。彼女はそういう子だから。
でも……、例え彼女にとっては何気ない行動だったとしても、私は間違いなくその行動に救われたのだ。
彼女は一人で俯いていた私の心に、暖かな光を届けてくれた。優しい風を吹き込ませてくれた。
彼女があの時かけてくれた言葉、差し伸べてくれた手の温かさは、今でもはっきりと思い出せる。
彼女の手を取ったその瞬間から、灰色だった私の風景は鮮やかに色づき、心躍る日々が始まったんだ――。
明るくて温かい、日溜まりのような彼女につられて、どんどん明るくなっていく自分がいた。彼女と共に笑い合い、毎日を純粋に楽しむ自分がいた。
周囲の人達は、『私が彼女の面倒を見ている』とか『私は彼女のお守り役』とか言うけれど、決してそんなことない。
むしろ逆。いつも彼女が、私の手を引いてくれるんだ……。
それだけに、今でも時々思うことがある。
もし彼女と出会わなかったら、私は今、どうなっていただろうって……。少なくとも、今の私にはなれなかったことだけは確かだ。
そしたら私は――今ほど自分やこの世界のことを好きになれなかったんじゃないかな……。
――そして、そんな私だからこそ、何となくわかってしまったのだ……。
今、私の目の前で心細げに泣いているあの子達……。あの子達はきっと、六年前の私と同じなんだと思う。
あの子達が今いるのは、暗くて凍てついた孤独という名の海の底……。
不安に押しつぶされないよう、あの子達はギリギリのところで踏みとどまっている。
(……だとしたら、私はあの子達をこのまま見て見ぬ振りでやり過ごすなんて――絶対にしたくない!)
あの日、彼女が私にしてくれたように、私もあの子達の力になってあげたい。
それに、もしここであの子達を見捨ててしまったら、私はもう胸を張って彼女の隣にいられなくなってしまう気がする。
ただ……、私では彼女のようにうまくはできないかもしれない。だって私は、彼女のように強くないから……。
(でも――そんな私にだって、できることがきっとあるはず)
今まで私は、彼女の隣でずっと彼女を見てきた。彼女の光をいつも間近で感じてきた。
だからこそ、彼女の強さは、そして彼女の優しさは私の中にも確かに息づいている。
「よし……。――行こう!」
私の心にいる彼女が、笑顔で背中を押してくれている。
私に向かって「頑張れ!」ってエールを送ってくれている。
心に宿った彼女の――掛け替えのない親友の笑顔に力をもらい、私は大きく一歩を踏み出した――。




