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ラジエルライブラリの司書見習い  作者: 日野 祐希@既刊9冊発売中
レファレンスNo.2 見習い司書の元気の素探し
27/68

レファレンスNo.2 1 ―Side:D― ◆

 ――青白い月明かりに照らされた、とある部屋。


 白い壁に囲まれ、消毒のにおいが染みついたその部屋で、一人の女の子が寝ている。

 サラサラした黒い髪を肩のところで切りそろえた、可愛らしい女の子だ。


文香(ふみか)ちゃん……」


 その女の子を枕元から眺めつつ、ぼくは彼女の名前をつぶやいた。

 そのまま首を(めぐ)らせて、視線を彼女の足の方へ動かしていくと、そこにはギプスに包まれた左足があった。

 彼女の痛々しい姿を見て、ぼくの心がチクリと(うず)く。


「文香ちゃん……」


 もう一度、彼女の名前をつぶやく。

 思わず涙ぐんでしまったせいで、二度目にこぼれたぼくの声は少しだけ震えていた。


 彼女は、ぼくにとって無二(むに)の友達。

 ぼくに命をくれた、かけがえのない大切な人だ。

 だって、彼女がぼくを大事にしてくれたから、ぼくはこうして心を持つことができたのだから……。


 彼女がいっしょにいてくれるだけで、ぼくの心は温かくなった。

 彼女が声をかけてくれるだけで、ぼくの心はときめいた。

 彼女が笑っている姿を見せてくれるだけで――ぼくの心はいつも満たされていた。



 ――でも、今の彼女はその笑顔をぼくに見せてくれない。



 今の彼女は、毎日毎日、虚ろな目で窓の外ばかりを眺めて過ごしている。

 受け入れがたい現実を前に、彼女は意気消沈して心を閉ざしてしまったのだ。

 今の彼女には笑うだけの――いや、自分の周りの世界を見るだけの元気さえもない……。


(……だけど、ぼくの力だけでは文香ちゃんの心を(いや)してあげられない)


 だって、彼女はぼくが動けることもしゃべれることも知らないのだから……。

 彼女にとって、ぼくはただのぬいぐるみ。

 今のぼくにできることは、常に彼女の(そば)にいてあげることだけ……。



 ぼくは――本当に無力だ……。



「誰か、ぼくに力を貸してください……。ぼくにできることだったら、どんなことだってします。だから……だから、お願いします。――文香ちゃんに元気をください……」


 空に昇る満月と満天の星々に向かい、ぼくはそうつぶやいた。

 この思いが、誰かの耳に届くことを願って……。


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