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ラジエルライブラリの司書見習い  作者: 日野 祐希@既刊9冊発売中
レファレンスNo.1 見習い司書、初めてのレファレンス
17/68

レファレンスNo.1 6-6

 ――かえでさんが『思い出の本』を読み始めて、30分ほどが経った。


 この30分の間、誰一人として言葉を発していない。かえでさんは本を読むのに集中しているし、エノク君と立川さんは静かにかえでさんを見守っている。

 誰もしゃべらない所為か、部屋の空気が重く感じられ、時計の針の音がやたら大きく聞こえた。


「ねえ、エノク君。かえでさんが『思い出の本』を読み終わるまで、わたし達は特にすることないよね。だったら、ちょっと書庫の中を探検してきてもいい?」 


「ふむ……。まあ、いいだろう。ただし、コンパスは忘れずに持って行けよ。あと、空飛ぶ絨毯は使わず、閲覧室の近くにいろ。まだ、レファレンスは続いているのだからな」


 空気の重さと部屋の静かさに耐えられなくなり、こっそりと隣に立つエノク君に耳打ちする。

 そんなわたしの顔をジッと見たエノク君は、仕方ないという顔で席を外す許可をくれた。

 どうやらわたし、自分で思っていた以上に疲れ切った顔をしていたみたい。


「ありがとう。それじゃあ、行ってくるね!」


 エノク君に感謝しつつ軽く手を振る。

 わたしはかえでさんの邪魔(じゃま)にならないよう、静かに書庫への扉を開いた。



          * * *



(――ふう。何となくあの場に居づらくて、書庫に出てきちゃったな~)


 体験とはいえ司書見習いなのに、レファレンス中の雰囲気に耐えられなくなるなんて、情けないな~。

 まあ、閲覧室にいてもわたしにできることはないし、居ても居なくても同じか。


「ふーん。こうして一冊一冊見ていくと、今時の日本の本もちゃんとあるんだなぁ~」


 適当に本棚の間をぶらつきながら、並べられている本を見て回る。

 どうやら、この辺りには日本語の本が多いらしい。外国語がダメダメなわたしとしては、有り難い限りだ。


「うわっ! この本なつかしい~!」


 偶然、小さな頃に好きだった絵本を見つけたので、久しぶりに読んでみる。

 こういうなつかしい本を読んでいると、小さい頃のことが思い出されて、ほっこりした気分になるね。


(ふう……。久しぶりに読んだけど、やっぱりこの本いいな~)


 最後まで読んで「ほう……」と一息。

 読み終わった絵本を棚に戻し、探検を再開だ。


 その後もわたしは、おもしろそうな本を見つけては手にとって読んでみる、ということを繰り返した。

 こうやって図書館の本棚を見て回るのも、たまにはいいものだよね。

 思いがけず、おもしろい本にも出会えるし。


「――あっ! もう3時間も経ってる。そろそろ戻った方がいいかも……」


 ふとタイマーを起動しておいた携帯を確認すると、思った以上に時間が経っていた。

 どうやら、本を読むのに夢中になり過ぎていたみたい。


(かえでさん、そろそろ思い出の本を読み終わったかな……?)


 かえでさんのことが気になったわたしは、コンパスを頼りに閲覧室へ戻った。


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