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第89話 始まる朱里夏VS金翔会(風間香蓮・難波朱里夏視点)

 ――金翔会。

 そこのボスであるわたくし、風間香蓮の執務室へ部下の藤田が駆け込んで来る。


「か、会長大変ですっ!」

「なにかしら? うるさいですわねぇ……」


 金髪の長い髪をかき上げ、わたくしは焦り顔の部下を眺める。


 わたくし風間香蓮は政治結社金翔会の2代目会長だ。

 大学卒業後に初代会長の父親が亡くなり、遺言により2代目を襲名。その後、10年間に渡って金翔会のボスを務めてきた。


「そ、その、国島建設の社長の息子から、ガキをボコってほしいって依頼されてうちの人間を2人送ったんですが……」

「ああ。なにかしら? ターゲットの堅気と揉めたとか? ふん。だったら被害届けでもなんでも好きに出させたらいいですわ」


 金翔会は警察の上層部にいる人間も客にしているのだ。庶民の被害届など容易に握り潰せる。


「いえその……うちの人間が2人とも返り討ちに遭わされまして」

「はあ?」


 金翔会で正規に雇っている連中は暴力のプロだ。

 ガキに返り討ちされるなんてあり得ないことだった。


「そのガキにやられたましたの?」

「いえ、やられた奴の話に依りますと、ガキに面倒な知り合いがいたようでして」

「面倒な知り合い?」

「難波朱里夏です」

「……っ」


 その名を聞いた瞬間、左目が痛みに疼く。


 奴に左目を取られてもう5年は経ったか。

 あのときのことを思い出すたびに、左目が疼いて怒りが舞い戻って来る。


「確か衆議院議員真柴さんからも、息子さんが奴に1億要求されているとかでなんとかしてほしいと訴えがありましたわね」

「ええ」


 奴が少年院から出て来たことは知っていた。


 どうやって奴を潰してやるか?

 ここのところはそればかりを考えていた。


「どうします? 警察に働きかけて適当な理由で難波をムショに放り込むこともできますが」

「それじゃあわたくしの気が済みませんわ」


 刑務所に放り込むなんて甘い。

 この左目を奪った代償はもっと高くつく。


「藤田、あの女のチームにいた連中が今どこでなにをしているかはすでに調べてありますわね?」

「は、はい。調べてありますが……」

「そう。それじゃあ準備は完了ですわね」


 わたくしが考えたあの女への復讐。

 それは仲間想いなあの女には苦痛となるだろう最高のショーになるものだった。



 ―――難波朱里夏視点―――



 五貴君のバイト期間が終了し、自宅へと帰って来たあたしはすることもないので部屋に籠ってベッドでゴロゴロしていた。


「五貴君は良い男だと思うけど……」


 天井を見つめながら五貴君のことを考える。


 チン〇がでかい。

 なかなかに男気もある。


 しかし側にいるあの女が面倒だ。五貴君を自分の男とするにはどうしてもあのデカチチと戦わなければならないことになる。


 あのデカチチは強い。あれと戦って勝つのは至難だ。仮に勝ったとしても、あの女をボコボコにしたあたしを、五貴君は許さないかもしれない。


「やっぱ諦めたほうがいいのかなぁ……」


 チン〇がでかくて、そこそこ男気のある男なんて探せば他にもいるだろう。

 あんな面倒な女が側にいる五貴君に固執しなくたって……。


「はあ……」


 とりあえずそのことは置いておくとして、今は他に考えることもある。


 金翔会の風間だ。

 5年前は警察が来て仕留め損ねたが、次こそはあの女のタマを取る。


 奴を仕留めない限り、あいつの手下に殺された果歩の魂は浮かばれない……。


「お、お嬢っ! お嬢っ!」


 と、そのとき部屋の扉をドンドンとうるさく叩かれる。


 この声は水木だ。


「なに?」

「あの、たった今、お嬢の知り合いっていう女が屋敷に放り込まれてきまして……」

「放り込まれた?」


 来たならわかる。

 しかし放り込まれたという水木の言葉に違和感を持った。


 あたしは部屋から出て水木について玄関まで行く。と……


「あ、姉ちゃん……」


 玄関に倒れているボロボロに傷ついた女を幸隆が見下ろしていた。


「しゅ、朱里夏姉さん……」

「……愛華っ」


 暴走族時代のチームメンバーでひとつ後輩の女だ。

 当時と違ってだいぶ普通の女らしくなったが、リーダーだったあたしが見間違えるはずはなかった。


「さっきうちの前を通り過ぎた車が放り込んでいったんだ。この女、姉ちゃんの知り合いか?」

「うん。救急車は?」

「呼んだよ。誰だか知らねーけど、こんなところで死なれちゃ迷惑だからな」


 それを聞いて安心したあたしは愛華の側へと屈む。


「誰にやられた?」

「わ、わかりません。急に襲われて……」


 ボコってここへ放り込んで来たということは、あたしに恨みがある奴だろう。それが誰かを考えると、心当たりが多過ぎて見当もつかない。


「これ……渡すように言われました……」

「これは……」


 封筒を渡され、中を開く。

 中には一枚の手紙。それと複数の写真が同封されていた。


 手紙には指定の場所へ来るように書いてある。写真には……。


「これは……っ」


 元チームメンバーの写真だ。

 隠し撮りされたその写真。そしてボコられてここへ放り込まれた愛華。


 金翔会……風間がなにを言いたいのか、あたしはすぐにわかった。


「そ、そこに書かれている通りにしないとチームメンバーだった人間全員を殺すって……。朱里夏姉さん、あいつら絶対にヤバい連中ですよ……。言う通りにしたらたぶん朱里夏姉さんは……」

「あんたは気にしなくていいよ」


 あたしは手紙を握り潰して放る。


「ちょっと出掛けてくる」


 そう言ってあたしは玄関を出た。

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