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第69話 アレを踏まれてしまうおにい(獅子真兎極視点)

 ―――獅子真兎極視点―――



「――きゃああっ!!」

「えっ?」


 どこからか悲鳴が聞こえてわたしはハッと目覚める。


 一体なにが……?


「えっ? おにい?」


 隣で寝ていたおにいの姿が無い。

 ふと周囲に首を巡らすと、見張りに立っていた男が倒れているのを見つけた。


「やられたっ! みんな起きてっ!」


 わたしの声に全員が少しずつ目を覚まして起き上がり始める。


「おにいが攫われたっ! 助けに行かないとっ!」

「お、お嬢、助けに行くってどこへ……」

「いやあああっ!!」


 沼倉さんに声をかけられるのとほとんど同時に、森のほうから悲鳴が聞こえた。


 あの声はおにいだ。


「あ、お嬢っ!」


 わたしはダッシュで森のほうへと向かう。

 そして森に入り、視界に飛び込んできたのは……。


「あっ……」


 変なガキがおにいのアレを足で踏みつけている光景だった。


「い、五貴のってこんなにデカかったんだ……。ゴクリ……」

「伝説のデカチン〇。これはもうあたしのもの。うふふ……」

「な、ななな……なにやってんだこらーっ!!!」


 周囲にも何人かいたがそんなのはどうでもいい。

 とにかく目の前でおにいのアレを踏んでいるガキのことが許せなかった。


 一瞬で頭に血が上ったわたしはガキへと近づいて胸ぐらを掴む。


「誰だてめーはっ! おにいになにしてやがったっ!」


 そう聞くも、ガキは答えない。

 わたしなど眼中にないかの如く、視線はおにいへと向いていた。


「と、兎極っ! そいつが沼倉さんを狙ってる鉄砲玉だっ! 油断するなっ! そいつは普通じゃないいし、子供でもないぞっ!」

「えっ?」


 どう見てもただのガキ。それを普通じゃないって……。


「邪魔するな」

「あ?」


 瞬間、恐ろしい速さで拳が振られる。

 仰け反ってギリギリかわすも、子供が振るうとは思えないほどに強力な一撃にゾッとした。


「こ、こいつ……」


 ガキの振るうような拳じゃない。

 まさか無線で言っていた女って……。


「動くな獅子真っ!」


 そう叫んでわたしのコメカミに工藤天菜が銃口を突き付けてくる。


「なんでてめえがこんなところにいやがんだ?」

「そんなことどうでもいいでしょ? はははっ! これでようやくあんたを……うごほぉ……」


 わたしは片手の拳を天菜の鳩尾に沈み込ませる。


「銃ってのは離れて撃つから強いんだ。こんなに近づいたら意味ねーだろ。バーカ」


 鳩尾を抑えて天菜はその場に倒れ込む。


 こいつはとりあえずどうでもいい。まずはこのガキみたいな女だ。


「お嬢っ!」


 そこへ沼倉さんがやって来て拳銃を構える。


「そ、そのガキは……」

「こいつが鉄砲玉だっ! 撃て沼倉っ!」


 そう叫んでわたしは女を前方へ突き飛ばす。


「は、はいっ!」


 直後、銃撃音が鳴って女の首は上を向く。


 やったか?


 そう思ったが、女の首は動いてゆっくりと元に位置へ戻る。


「な、なにっ!?」


 歯を剥き出して笑っている女。

 その歯には黒く擦れたような跡が残っていた。


「ま、まさかあの女……歯で銃弾を弾き返したのってのかよっ!?」


 わたしは驚きのあまり大声を上げる。


 そうだとすれば恐ろしく頑丈な歯を持った奴……。

 確かにこんな化け物みたいな奴が相手ならば、銃を持った15人の男たちが仕留められても仕方がないと思った。


「北極会の若頭、沼倉克己。あたしはお前を殺しに来たんだ」

「お、女でガキの鉄砲玉だと? どこがそんなの送って来やがったんだっ!」

「難波組」

「難波組だと?」


 難波組はもう潰れかけだ。

 そんな組が北極会の若頭を狙って鉄砲玉を送ってくるのは少し不自然に思う。


「あんな潰れかけてる組が俺の玉とってどうしようってんだ? あ? 難波熊五郎を引退させた恨みでも返そうってのか?」

「それもある。けど目的は北極会の壊滅だ」

「馬鹿言うな。難波組にそんなことできるわけ……」

「あたしひとりで壊滅させてやる」


 と、そう言って女は歩き出す。

 そのまま沼倉さんへ襲い掛かると思いきや……。


「けど今はどうでもいい」

「えっ?」


 女はおにいへと近づいて見下ろす。


「愛しのデカチン〇君。今は君のことしか考えられない」

「は? えっ?」


 女は艶やかな目でおにいを見つめる。

 そしておにいへと抱きついた。


「てめえこらぁっ!!」


 その瞬間にキレたわたしは、顔面を殴って女を砂浜のほうへと飛ばした。

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