第68話 伝説のアレを持つおにい
「くそっ! 先に見つかってやられたかっ!」
恐らくそうだろう。
しかし無線で聞こえた女という言葉が気になった。
「無線で女とか言ってましたけど、鉄砲玉は女性なんでしょうか?」
「女の鉄砲玉は聞いたことありませんね。殺す相手を誘い出すために女を使うってのはありますけど、そういうたぐいかもしれません」
「けど、こんな島に女がいたらおかしいし、誘い出しに使うのも変じゃない?」
「そ、それはそうですけど……」
兎極の言う通り、無人島で見知らぬ女性に誘われたら警戒して当然だ。沼倉さんの言うような誘い出し目的の女とは考えづらかった。
「じゃあやっぱり女の鉄砲玉ってことでしょうか? お嬢?」
「それはまだわからないよ。ここで話していてもしかたないし、周囲に警戒しながらわたしたちも鉄砲玉の奴を探そう」
「そ、そうですね」
と、俺たちはふたたび森の中を進む。
しかし相変わらず兎極は肝が据わっている。
拳銃を持った相手に襲われるかもしれないのに、平然とした表情であった。
俺ももっとしっかりしないとな。
震えを抑え、気合を入れて俺も森を進んだ。
……それから暗くなるまで森の中を探したが敵の姿は見つからず、クルーザーやボートがある砂浜まで戻って来た。
「残ったのはこれだけか……」
戻って来た全員を見回して沼倉さんが呟く。
3人一組8チームのうち、5チーム15人が戻って来なかった。
戻って来るのに遅れているならば無線で連絡があるはず。それが無いということは、15人とも敵の襲撃にあってやられてしまったのだと考えられた。
「チーム全員に銃を持たせていたのに15人もやられちまうとはな。どうやら敵はとんでもない手練れみてぇだ」
「無線では女って聞きましたぜ。けど女がここまでやれるとは思えないっすわ」
「女でも腕利きはいるさ。油断すんじゃねーぞてめえら」
「は、はい」
銃を持った15人がやられてしまったことで恐れたのか、怖そうな外見の人たちが皆、憔悴した表情であった。
とりあえずその日は見張りを立てて休むことになる。
緊急事態だからとクルーザーに積んである食べ物を与えられたが、なんかこれを食べてしまうと合宿の効果が薄れてしまうようで手が出せず、俺だけ食事はいつも通り変な木の実で済ませた。
バラバラになると危険ということで、皆がクルーザーの甲板に寝袋を置いて休むことに。俺の隣では兎極が寝ており、少しだけドキドキした。
今日は1日中、森の中を歩いて疲れたのだろう。兎極のほうは寝息を立ててぐっすりと眠っていた。
見張りがひとり立っているし、熟睡しても大丈夫だろう。
兎極と同じく俺も疲れているので、いつの間にか眠りへと落ちていた。
……寝入ってからどれくらいの時間が経ったのだろう?謎の浮遊感を感じ、俺は目を開く。
「んん……?」
目を開くと空が移動する光景が見えた。
……いや違う。誰かが俺を寝袋ごと担いで移動していたのだ。
「んーっ!」
口にはタオルのようなものが詰め込まれていて声が出せない。
身体は寝袋ごと縄で縛られているらしく、身動きも取れなかった。
前方には俺の脚側を抱えて静かに歩く男。
後方には頭側を持って歩く男がいた。
頭側を持つ男には見覚えがある。
確か俺が捨てたキノコを食べてモノを元気させ、襲い掛かってきた男だ。
敵を探しに行ってそのまま戻って来なかったチームのひとりだったはず。
それがなんで俺を担いでいるのか?
動くことも声を出すこともできず、俺はそのまま運ばれて行くしかなかった。
クルーザーから離れてすぐ近くの森に入る。
そこで俺は見覚えのある顔に遭遇した。
「んんっ!?」
天菜だ。
銃を持った天菜がそこに立っていた。
「言われた通り連れて来たぞ。仲間を解放してくれ」
「それはあと」
どうやら他の組員を人質にされているらしく、しかたなく従っているみたいだが……。
「こいつはどうするんだ?」
「殺すの」
と、天菜が俺の眉間へと銃口を向ける。
「あんたがキレて化け物になるのは獅子真をボコったときでしょ? だったらこうして先にあんたを殺しちまえばあのときみたいなことにはならない」
「んーっ!?」
本当に殺される。
天菜の目を見てそれを察したが、
「待ちなよ」
そこに女の声が聞こえる。
暗がりから立ち上がったのは、小学生くらいの小さな女の子だった。
「朱里夏さん。こいつは殺したほうがいいです。あぶないですから」
「あたしが待てって言ってるの。言うこと聞けない?」
「う……」
天菜の表情が一瞬だけ恐怖に歪み、俺の額へ向けられていた銃口を下げる。
なんだこの子供は?
天菜が素直に言うこと聞くくらいだから、普通の子供ではないのだろう。しかし見た目はおとなしそうな普通の女の子だった。
「こいつが危険ってどういうこと?」
「キレるとやばいんですよ。だから先に殺したほうがいいんです」
「あたしより強いの」
「た、たぶん……」
「ふーん」
女の子は俺へと近づき、寝袋を両手で掴む。
「え……?」
そしてビリリと一瞬で破り千切ってしまう。
な、なんだこの力?
縄で縛られた寝袋を一瞬で破ってしまった女の子の怪力に俺はただただ驚く。
「んんーっ!」
「ああ、しゃべりたいの? いいよ」
と、女の子は俺の口に詰められているタオルを抜く。
「ふ、はあ……き、君は……?」
「あたしは難波朱里夏。幸隆の姉だよ」
「ゆ、幸隆の?」
姉がいるなんて聞いたことない。
と言うか、幸隆の姉ということは俺より年上なのか? どう見ても小学生くらいにしか見えないだけど。
「ど、どうして幸隆の姉と天菜がここにいるんだ?」
「北極会の若頭、沼倉克己を殺しに来たの」
「ぬ、沼倉さんを……」
「沼倉だけじゃない。北極会の幹部も組員もみんな殺してしのぎを奪う」
難波組はもう潰れかけと聞いた。
そんな組が北極会の幹部や組員をみんな殺すなんて無理だと思うが……。
「沼倉を殺したら次の奴を殺しに行く。けどその前にここにいる男たちと楽しませてもらうけど」
「た、楽しむ?」
一体なにを言っているのか……?
そのとき朱里夏は懐からなにかを取り出す。
それは以前に俺が島の森で採ってきたことのあるキノコだった。
「これ食べるとギンギンになるってそこの奴に聞いたの。お前も食べろ」
「えっ? い、いや……」
「拒否権は無い」
そう言って朱里夏は俺の口にキノコを押し込む。
「んーっ!!?」
喉の奥まで押し込まれ、俺はしかたなくキノコを飲み込む。すると……。
「う、おお……」
下半身に熱が籠り始め、俺のモノがビルドアップしていく。
もう痛いほどに膨れ上がり、ズボンを破ってモノが飛び出してしまう。
「ううう……」
モノが晒された俺は恥ずかしさで顔が熱くなる。
俺にこんなことをしてどうするつもりなのか?
朱里夏の顔を見ると、なぜか目を丸くして限界まで膨れ上がった俺の股間を凝視していた。
「ふぁ、ふぁほぉぉぉ……」
そんな声を出して朱里夏は身体を震わす。
「み、見つけた……」
「えっ? み、見つけた?」
なにを?
俺には朱里夏の言っていることがなにもわからない。
「で、伝説のデカチン〇を……」
そう言って朱里夏はおもむろに俺の股間へ足を伸ばし始めた。




