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第27話 真実を知る覇緒(逸見覇緒視点)

 ……電話で姉御に呼ばれたわたしは、学校が終わったあと急いで姉御の通う高校へと向かっていた。


 速攻で来いと言っていたけどなんの用だろう?


 それを考えながら急いで高校へ向かう。


「あ、姉御ーっ!」


 校門に姉御の姿を見つけて叫ぶ。


「はあ……はあ……な、なんすか速攻で来いって? も、もしかしてカチコミっすか? わたしはうしろで応援しているのでがんばってくださいっすっ!」

「違う。ちょっとこっち来な」

「えっ? も、もしかしてヤキ入れっすか? 勘弁してくださいっすっ!」

「違うよ。お前わたしをなんだと思ってるの?」

「ちょー男らしい男の中の男……あいたっ」


 頭を軽くひっぱたかれる。


「こんなにかわいいJKに向かって男の中の男とはなんだ」

「うう……やっぱりヤキ入れじゃないっすか……」

「いいから来い」

「あ、はいっす」


 言われた通り姉御について行く。

 やがてやってきたのは校舎裏だ。


「こ、校舎裏でヤキ入れっすか?」

「違うっての、と」


 校舎の角で足を止めた姉御はそこから少しだけ身を乗り出して先を覗く。


「なんすか? 誰かいるんすか?」

「……ちょっと見てみな」

「えっ? はい」


 なんだろう?


 なにかおもしろいものでもあるのかなと思いながら、わたしも角の先を覗いた。


「あっ」


 そこにいたのは難波先輩と久我島先輩だ。

 2人でなにか話しているようだが……。


「……お前、覇緒ちゃんを利用して逸見建設の不祥事を探る気だろう?」

「えっ?」


 わずかに聞こえてきた久我島先輩の言葉にわたしは驚愕する。


「難波先輩がわたしを利用して? そんなまさか……」


 久我島先輩はなにを言っているのだろう? 難波先輩がそんなことするはず……。


「知っているんだ。お前の父親が難波組の組長で、難波組が御子柴建設の依頼で逸見建設の不祥事を探っていることは」

「誰に聞いたか知らねーけどよ。余計なことに首を突っ込むと痛い目を見るぜ。だいたいそれでもお前には関係ねーだろ。もしもあの女に気があるんだったら、不祥事を聞き出して1回ヤッたあとにお下がりとしてくれてやるから安心しろよな」

「そ、そんな……」


 難波先輩の言葉を聞いてわたしは膝から崩れ落ちそうになる。


 大好きで憧れていた難波先輩と付き合えるかもと舞い上がっていた。しかし実際は利用し、そして遊ぶために近づいて来ただけだった。


 それを知ったわたしの心は張り裂けそうになり、この場から逃げ出そうとしたが、


「待て。最後まで見ていくんだ」

「う、うう……で、でも姉御わたし……」

「いいから」


 わたしは姉御に止められてしかなく留まり、言う通り2人を見続けた。


「は、覇緒ちゃんは大切な後輩だ。関係無くは……ぐあっ!?」

「あっ!?」


 久我島先輩が難波先輩に殴られる。そして……。


「あの子には近づかないでくれ。頼む」


 地面に手をついて難波先輩に土下座をする。


「はあ? 馬鹿じゃねーの? たかが後輩のためにそこまでするとかてめえ頭おかしいだろ。こんなことしたっててめえがあの女とヤレるわけでもねーのによ」

「あの子を傷つけたくないだけだ頼む」

「うるせえってんだよっ!」


 土下座をしている久我島先輩のお腹を難波先輩が蹴り上げる。しかし久我島先輩は土下座をやめず、


「た、頼む幸隆。覇緒ちゃんにはもう近づかないでくれ」


 わたしのために必死で頭を下げ続けてくれていた。


「どうして……わたしのためにあんなこと……」

「おにいはああいう男なんだよ」

「ああいう男って……?」

「誰かのために身体を張れるんだ。ああしてさ」

「け、けど、わたしただの後輩っすよ? 特別な関係ってわけでもないですし、あそこまでしなくても……」

「わたしもそう思うよ。放って置けばいいって思った。けどそれができないんだよおにいは。お前がクズ男に利用されて傷ついたらかわいそうだから、なんとかしてやれないかって考えてさ。だけどおにいあんまり頭良くないから良い方法思いつかなくて、だったら身体張るしかないって頭下げてんだよ」

「久我島先輩……」


 わたしのために土下座までして蹴られ続けている。その姿は痛ましく惨めに見えるかもしれない。しかし久我島先輩の姿を見たわたしの心は不思議な震えに揺れていた。


「不器用で泥くさくてまっすぐで……。それがおにいって男だ。なあ覇緒。お前あの2人を見てどっちが良い男だと思う?」

「えっ?」

「お前を利用するだけ利用して遊び捨てようとしていたイケメン男と、お前を救うためにクズ男に頭を下げてる普通の男。どっちが良い男だってお前は思うんだ?」

「わ、わたしは……」

「どっちを選んだって怒りゃしないよ。ただ、本当に良い男がわからないような奴にわたしの舎弟を名乗る資格は無い」

「……」


 考えるまでもない。どちらが素敵な男性かは、わかりきっていることだった。


「ぐあ……て、てめえ……」

「あっ」


 ひどいことを言った難波先輩を久我島先輩が殴る。


「はあ……は、覇緒ちゃんにひどいことをするのは許さない」

「はっ、俺とやる気か? 俺はヤクザの息子だぜ? 喧嘩は得意だ。てめえなんか3秒でボコボコにしてやるぜ」


 瞬間、わたしは校舎の角から飛び出して駆けていた。


「やめてくださいっすっ!」


 そう叫んだわたしのほうへ2人の首が向く。


「は、覇緒ちゃん……うっ」

「久我島先輩っ!」


 倒れそうになった久我島先輩の身体をわたしは慌てて支える。


「だ、大丈夫ですかっ?」

「うん。けどどうしてここに……?」

「おい覇緒」


 と、そのとき難波先輩から乱暴に呼びかけられる。


「お前がいるのはそっちじゃないだろ? こっちに来い」

「……」

「他の女とは別れてやるよ。お前だけの男になってやる。嬉しいだろ? 俺みたいなイケメンをひとり占めできてよぉ」

「難波先輩……」


 わたしは久我島先輩をその場に座らせ、難波先輩の前へ行く。


「くくっ、それでいい。お前は俺の言う通りに……ぐっ」


 難波先輩の頬を平手打ちする。

 驚いたような表情がわたしを見ていた。


「さようなら。難波先輩」


 別れの言葉を告げる。

 これはここだけの別れではない。もう会わないと、そういう意味を込めてわたしは難波先輩へ別れの言葉を言い放った。


「て、てめえ……女のくせによくも俺の顔をっ!」

「覇緒ちゃんっ!」


 難波先輩の腕が振り上がりわたしは目を瞑る。……しかし身体のどこにも痛みはこなかった。


「いいかげんにしろよおぼっちゃんよぉ」


 目を開くと、難波先輩を蹴り倒している姉御の姿が見えた。


「てめえ獅子真……っ」

「あたしとやる気か? あの馬鹿女からあたしのことは聞いてんだろ?」

「くっ……。くそっ」


 立ち上がった難波先輩は舌打ちをし、わたしに一瞥をくれてからこの場を去って行こうとするが、


「おおっと待てよ。こっちの用事はまだ終わっちゃいねーぞ」

「えっ? うおっ!?」


 姉御は難波先輩の服を掴み、ビリビリ破いてほぼ一瞬で裸に剥いてしまう。


「て、てめえなにを……うあっ!!?」


 そしてその状態の難波先輩をキン〇バスターの体勢で抱え上げた。

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