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第177話 おにいと同じ力を使うミハイル

「……ああ、所詮はおもちゃだな。使えねぇ。くっくっくっ」


 仲間がやられたというのに、ミハイルは楽しそうに笑っていた。


「あとはお前だけだ」

「ああ」


 俺の言葉を聞いたミハイルが笑顔のままこちらを見る。


「おとなしくするなら手荒なことはしない。警察に……」

「皆殺しだ」

「なに?」

「全員、俺が皆殺しにしてやるんだよ。くっくっく」


 前と同じく、薬を飲んで肉体を強化するつもりか。

 しかしここには銃を持った組員もたくさんいる。皆殺しなんてこと……。


「なんだ……?」


 笑っていたミハイルが一転して、冷めた表情になる。


 諦めたのか?


 そう思ったとき、


「えっ?」


 瞬きをした直後、俺は殴り飛ばされて地面へ転がっていた。


「あ……がはっ……」


 なにが起こった?


 俺も意味もわからず痛みに呻いていた。


「おにいっ!」


 兎極がこちらへ駆け寄って来て俺を抱き起こす。


「一体……なにが?」

「俺がてめえを殴った。それだけのことだ」


 ミハイルが俺を見下ろしながらニヤリと笑う。


 殴った?

 しかしなにも見えなかった。


「と、兎極? なにがあったんだ?」

「わたしにもほとんど見えなくて……。あいつが消えたと思ったらおにいが吹っ飛んでいたことくらいしか……」


 どういうことだ?

 ……いや、単純に考えればミハイルがものすごい速さで動いた。そうとしか答えは見つからなかった。


「俺はよぉ、四宮に改造を受けたんだ」

「し、四宮春桜に……?」

「ああ。どういう改造をされたか知りたいか? くっくっくっ」

「……っ」


 無言で睨む俺を嘲笑いの表情で見下ろしながら、ミハイルは自分の頭を指差す。


「てめえと同じ力を頭に仕込んでもらった」

「なっ……」


 俺と同じ力。

 四宮春桜が言うには、俺の頭には特殊な物質が存在しているということだが。


「まあまだ実験段階らしいけどな。問題はねぇ。くっくっ、同じ力でもてめえはこの力を自由に使えない。けど俺は自由に使える。この違いはでかいぜ」

「くっ……」


 ミハイルが本当にあの力を持っているのならば、俺が勝つのは難しいだろう。

 けど、あの力に対抗できるのは俺しかいない。


「ほう、やるか?」


 立ち上がった俺をミハイルは楽しそうに見てくる。


「おにいダメっ!」


 対峙しようする俺とミハイル。

 それを止めるように兎極があいだへ立った。


「おにいにあの力は使わせないっ! わたしがおにいを守るっ!」

「と、兎極……」

「そう。五貴君はあたしが守る」


 朱里夏さんも側へ来てミハイルと向かい合った。


「ダメだ2人ともっ! こいつは俺が……」

「くっくっくっ。最初からそのつもりだぜ」

「なに?」

「てめえの女を目の前で嬲り殺す。そうでもしなきゃ俺の気はおさまらねーんだよ」

「お、お前……っ」


 わかっていたことだが、やはり救えないクズ野郎だ。

 こんなことを言われて2人を戦わせるわけには……。


「おいミハイルっ! あたしを舐めるんじゃねーぜっ! あのときとはちげーんだっ!」

「お前のことは知らないけど、五貴君の敵ならぶっ殺す」

「あっ!? ふ、2人とも待てっ!」


 俺が止めるも聞かずに2人がミハイルへ向かって行く。が、


「あぐっ!?」

「がっ!?」


 俺がやられたときと同じように一瞬で2人も吹っ飛ばされる。


「ひゃははははっ! 生意気な女を痛ぶるってのは楽しいぜぇっ! このまま手足をもいで孕みダルマにしてるってのもいいなぁっ! げひゃひゃひゃひゃっ!」

「て、てめえ……」

「ううん? くくっ。きたか」


 俺が睨むとミハイルは一層、楽しそうに笑う。


「てめえは殺すっ! 俺がっ!」


 兎極と朱里夏さんの危機を悟った俺の中にあの力が湧いてくる。


 こいつは……ミハイルはぶっ殺す。

 もはやそれしか考えていなかった。


「そうこなくっちゃなぁ。あのとき俺をやったてめえを殺さねーと、わざわざ改造されてまで力を手に入れた意味がねぇからよぉ」

「……」


 同じ力なら強さは五分。

 しかし勝算がひとつだけあった。


「くっくっくっ。同じ力なら勝てる可能性は半分と考えたか? 違うね」

「なんだと?」

「俺にはてめえを確実に殺す切り札があるんだよっ!」

「!?」


 ミハイルが懐から取り出したのは小さな瓶。

 それを呷って一気に飲み込む。


「げひゃひゃひゃひゃっ! きたきたきたーっ!」


 瞬間、ミハイルの身体があのときのようにでかく筋骨隆々となる。


「最強の肉体に最強の能力っ! これでてめえが勝てる可能性は微塵も無くなったぜっ!」

「……」


 俺はなにも言わない。

 ただ無言でミハイルを見つめていた。


「どうした? ビビって声も出ねーかっ! げひゃひゃっ!」

「……馬鹿な奴め」

「なんだと? ふん。意味の分からないことを言いやがって。てめえなんか一撃で粉砕して肉塊にしてやるぜっ!」


 太くなった腕をミハイルが振り上げる。……しかし、


「ぐ……がはっ!?」


 同時にミハイルは盛大に血を吐く。


「な、なんだ……?」

「まだ気付かないのか?」

「なに?」

「俺の力はただでさえ肉体への負荷が大きいんだ。身体をデカくして力が増せば、その分、負荷も大きくなる。力を使い始めてしばらく経ったお前の身体はすでに限界が近かったはず。そこに俺の勝算があったんだが、まさか自滅するとはな」

「ば、馬鹿なぁぁぁっ! そ、そんなはずは……ぐあはぁっ!!?」


 ミハイルの全身から血が噴き出す。

 そしてそのまま倒れて動かなくなった。

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