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異能学園の斬滅者 ~創刀の剣士は平穏を守らんとす~(旧クオリアン・チルドレン)  作者: お芋ぷりん
第二章 停滞へのカウントダウン編

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第十六話 攻防戦

 




 宗士郎達生徒が校庭に出現した魔物の対処をしていた――丁度その頃。


 学園長室では、学園長である宗吉が複数の携帯端末を代わる代わる耳に当てて対応に追われていた。


「――魔物の発生地点を早急に特定するんだ! 魔物が現れたというのに、今まで警報や騒動がなかったのは明らかに変だ……魔人族が手引きしているかもしれない! 頼むぞ!」


 それからしばらく対応する事、数分。


 指示を出し終わった宗吉はようやく全ての端末を机に置いて一息吐いた。


「やれやれ……急な授業参観の次は魔物か。あまりにもタイミングが良過ぎるとは思わないかね、和心君」

「ふぁい?」


 額に伝う汗をハンカチで拭ってから、宗吉はソファーでちょこんと座る狐人族の和心に視線を向ける。話し掛けられた彼女は左手に皿、右手のフォークで突き刺した羊羹を口で咀嚼しながら首を捻った。


「あまり、焦ってないね……美味しいかい?」

「もきゅもきゅ、ごっくんっ……はいでございます! それで、学園長様はこれが仕組まれたものと踏んでいるのですか?」

「うん。どちらも偶然と思いたいけど、生徒の親御さんが現れた途端にコレだから」


 宗吉は窓際で外の様子を見ながら眉間に(しわ)を作った。


「魔人族が力を行使する際に必要とする魔力を感じなかったのでなんとも言えませんが、私は鳴神様達を信じていますので」

「それを聞いたら娘達も喜ぶよ。所で君は姿を隠さなくても平気かい? 隠形も使えると聞いたのだが……!」


 宗吉が緊急事態だというのに、玩具を前にしてはしゃぐ子供のように目をキラキラとさせた。和心は出してもらっていたお茶を啜り、


「隠形はもしも妖力を感じ取られると面倒で出来ませんが、変化(へんげ)なら――可能でございますよ!」


 右手で印を結び、その姿を地球に存在する普通の狐へと変えた。それを見るなり、宗吉は和心に拍手を送った。


「おおー!!!」

「隠れられる所で後は気配を消せば、魔人族に見つけられる事もないのでございます!」

「それじゃあ奥の部屋で身を隠すといい。いざとなれば、部屋の巻き物の裏から『修練場』まで抜けられるからね」


 狐となった和心は四足歩行で歩いて、開けられた部屋へと身を隠した。その際に宗吉が、何かあった時の為、和心にブザーの付いた箱を手渡す。


「何かあったらコレを押すばいい。押せば、私のメイドが君を逃がすのに尽力してくれる」

「はいでございます!」


 宗吉は和心の元気良い返事を聞き届けると元の部屋へと戻って、再び外で戦う生徒達を見守るのだった。





「俺達の学園を――」

「私達の家族を――」

「「守るんだ!!!」」


 学園の広大な校庭では、一年から三年生までの学園生徒が入り乱れて魔物の討伐に当たっている。それぞれが持つ異能、感覚武装(ディヴァイズ)の力で時に一人、時に複数人で魔物を相手取り仕留めていく。


 それは宗士郎達も例外ではなく、二年の中では特に秀でた宗士郎・響・亮が最も多く魔物を討伐していた。


「オラァ!!!」


 亮の異能――炎上籠手ブレイジング・ガントレットが文字通り火を噴く。


 オークの胸部に打ち込んだ亮の燃える右拳がオークの体内をマグマのようにドロドロに溶かし、反対側の背中から爆炎が噴き出た。


 打ち出された爆炎は消えるどころか、オークの背後にいた魔物共々灰塵と化す。


「久々の大捕り物だぁ! 派手にいかせてもらうぜぇ!!!」

「おわっ!? 危ないだろ!?」

「アアンッ!? んだ、響じゃねぇか。どうしたよ?」


 魔物を燃やす亮の炎が飛び火し、響の制服を少しばかり焦がす。


「どうしたもねえよ!? 他の仲間を巻き込んだら危ないだろうが!?」

「なぁに、ちゃんと調節はしてる。それに、さっさと倒しちまわねぇと桜庭の方が限界な気がしてなぁ」

「お前……気付いてたのか」


 校庭の中心で障壁を張り続けるみなもの顔を見て、亮が気を病んだ。


 その表情には疲労の色が見える。障壁に寄り付かないよう生徒達が魔物を遠ざけているが、それも時間の問題かもしれない。


 学園に着くまで、みなもが外敵から身を守る為に異能を使っていた為にクオリアが残り少ないのだ。根本的な問題を解決しなければ、みなもと保護者達は戦火に巻き込まれる事になるだろう。


「当たり前だろうがぁ、奴は俺のライバル。ここで死なれちゃ困るんだよ」

「ぷぷっ、素直じゃない奴。素直に心配だって言えばいいのに」

「うるせぇ!? とにかくなんとかしねぇと……」


 とはいえ、現段階は乱戦状態にある。


 生徒の親達が来ている事もあり、ほぼ全生徒が戦いに参加している。高威力技で雑魚をまとめて葬り去るのはアリと言えばアリなのだが、いかんせん周囲に人が多過ぎて使えない。


「ここは、みなもちゃんに修練場まで退いてもらった方がいいかもな」

「確かに良い案だがぁ、ほぼ反対側だぞ? 距離もある」

「ほら、そこは俺達でカバーすれば良い。根性でなんとかなるだろ!」

「お前なぁ……っとぉ!?」


 根性論を唱える響に呆れていると、背後から感じた気配に亮はその場を素早く退く。


 直後、先程までいた場所に剛腕突き刺さり、土埃が巻き起った。


「ゴガガガガガッ!!!」


 剛腕を放ったのは、牛頭の巨人――危険Aのミノタウロス。全長は三メートル前後、隆起した筋肉の鎧を身に纏い、肩にスレッジハンマーのような鈍器を担いでいる。


 明らかに自分達の二倍以上の体躯の怪物を前にして、響達は怯む事なくミノタウロスの両眼を睨み付けて笑った。


「ヘっ! ……まあ、なんにせよ」

「まずはコイツを片付けてからだなぁ!」


 と、各々がギラギラとした目線を送った瞬間……。


 ジャリィィィンッ――!!!


「なっ!?」

「――ゴ、ゴガ……!?」


 響と亮の間に迸った激しい剣閃。


 愕然とする二人を置いてけぼりにして、ミノタウロスの巨躯が下から上まで断ち切られ、血飛沫(ちしぶき)を上げて地面を揺るがした。


「喋る前にまず行動、な」

「宗士郎! やるならやるって言えよ! 危ないだろ!?」


 ミノタウロスの命を絶ったのは、宗士郎だった。『戦闘服』である黒い軍服が、魔物の返り血を大量に浴びている事からかなりの敵を斬ったと見える。


「亮、桜庭を保護者と一緒に修練場に逃がすって話だったよな?」

「え、無視?」

「あぁ。魔物を喰い散らかす前に、桜庭が持たねぇだろうと思ってなぁ」


 怒る響をスパッと無視し、宗士郎は亮と話を進める。


「なら俺が先導する。お前等は率先して魔物を討ち倒してくれ」

「了解だぁ、行くぞ響ぃ」

「いや、待て。新手が来たぞ、それも複数」


 話が纏まった直後、響が宗士郎達を止めた。


 その視線の先、上空から魔物が校庭に降り立つ。その数、五体。少ないからといって、油断してはいけない。その魔物共はどの個体も危険Aクラスなのだから。


「チッ……ゴキブリみてぇに増えやがって。ウェルダンで勘弁してやらぁ」

「中身までこんがり焼く気満々かよ!?」

「案の定というか、恰好の的の桜庭達に向かっていってるな……!」


 宗士郎がギリッと奥歯を噛み締める。


 新たに湧いて出た魔物は周りで戦う人間を構いもせず、真っ先にみなも達の元へ足を進めている。


「お前等、俺に捕まれ。奴等の元まで飛ぶ(転移する)ぞ」

「それって酔う奴だろ!? ま、待て……心の準備が……!?」

「面倒な奴だなぁ。宗士郎、構わずやれ」

「ああっ――!」


 深呼吸する響に呆れが差し、宗士郎は亮の言う通りに二人の腕を引っ掴む。そして、技の起動の為に必要な取替え先の刀をみなもの障壁の斜め上に創生して、位置を入れ替えた。


「オエッ!?」

「き、汚ねぇなぁ!?」


 直後、一瞬の浮遊感と共に宗士郎達の視界に映るのは、先程現れた魔物共の進軍。


 少しだけ胃の中の物を戻した響に、亮が悪態をつく。そういう亮も気持ち悪さがこみ上げてきているので、それ以上には怒れない。


「行け!」


 そんな二人の事はお構いなしに、宗士郎が空中で身を捻ると響、亮の順で魔物共に向かって投げ飛ばした。


「おわぁぱぱぱぱ!?」

「扱い悪過ぎるぜぇ、全くよぉ!」


 闘氣法で強化してでの投法だ。


 まるでスカイダイビングにも似た空気抵抗に響の顔が歪みに歪み、少しの恐怖を抱いた亮は両手に爆炎を唸らせる。ようやく吐くもの全て出してスッキリした響も亮に次いで、拳に空気を閉じ込め、爆弾付与(マインストール)で圧縮・付与させて、空気を爆弾へと昇華させる。


「秘剣――概閃斬ッ」


 二人を投げ飛ばした宗士郎は一瞬の溜めの後、必殺の斬閃を抜き放つ。


 空を翔ける不可視の一撃は迫ってきていた魔物の一体の首をいとも容易く刈り取る。


「オォア!!! 炎狼の咆哮(バーン・ロア)ァ!」

「穿てッ――滅龍砲(アボリションカノン)ッ!」


 それに負けじと亮と響がそれぞれの得意技を裂帛の気合と共に放出。


「ッ~~!?」

「ギャビィアァアアア!!?」


 燃え盛る狼の化身は敵の顔面に喰らい付くと同時にその身を焼き尽くし、爆縮されたエネルギーの塊は滅びの光線となって眼前の敵胴体を吹き飛ばした。


「よし!」

「うしッ!」


 予想通りの戦果に響と亮が歓喜する。


「おい、油断するな!?」


 満足していた二人に宗士郎の警告が飛んだ。


「――ゴガガガガガッ!!!」

「なっ! サイクロプス!?」


 そう、残り一体。


 討ち漏らしていた一つ目の巨人が武骨な棍棒を振りかぶっていた。


 危なげに着地した二人が転がって棍棒をやり過ごすと、サイクロプスを睨み付ける。


「っぶねー!? 何すんだこのデカブツ!」

「響! 次が来るぞ!」


 ミノタウロスと同じ程の体躯にもかかわらず、その攻撃は意外に速い。サイクロプスが狙いを定めた響に棍棒を何度も振るう。


「おわ!? うぉ!? ひぃいい!?」

「響!? ぐっ! 大人しくしてろッ」


 ギリギリ回避し続ける響を見て宗士郎が駆け付けようとするも、狙い澄ましたかのように複数体の魔物が宗士郎に纏わりつく。


 攻撃するでもなく、ただ宗士郎の邪魔をするゴブリンやオーク共の動きは、まるで知性を備えた獣のようだ。


「チィ!? 響が邪魔で狙いが付けられねぇ!」


 宗士郎に続いて響を助けようとしていた亮も、サイクロプスが射線上に響が入るように立ち回るので、歯痒く思った。


「――はーっはっはっはっは! マッスルゥ~~パワァァァァ!!!」

「!?」


 するとそこで、謎の叫び声と共に颯爽と現れた筋肉ダルマ、もといムキムキの生徒がその拳をサイクロプスの頬にぶち込んだ!


 とてつもなく鈍い音を立てて倒れるサイクロプス。


 目の前で起きた光景に呆ける響と亮。


 生身でサイクロプスを殴り飛ばしたマッチョ男子は振り返って、響に言葉を投げ掛けた。


「大丈夫か! 後輩!?」

「あ、ハイ……えと、ナイスバルク」

「サンキュゥ!」


 爽やかに笑って歯をキランとさせる先輩らしき生徒を前にして、響の口から自然とその言葉は漏れ出た。急な賛辞にもかかわらず、彼はサムズアップして響の背中をバシッと叩いた。


「………………」

「………………」


 その時、響と亮は思った。


「「(なんてキャラの濃い奴が来たんだろう)」」


 ――と。


「響、亮! 無事か…………って、あんたは」

「おおぉ! お前は二条院のカレじゃないか! 久しぶりだなオイ!」

「彼氏じゃないですよ……権田橋(ごんたばし)先輩」

「そうだったな! ハハハハハッ!」


 魔物を片付け、響の元へやってきた宗士郎は見知った相手を見つける。その男は旧知の仲のような態度で宗士郎に接している。


「おい、宗士郎…………そのゴリ――先輩は?」

「おおっと! 俺は権田橋(ごんたばし) 陸斗(りくと)! 三年だ! よろしくな後輩!」


 聞かれた宗士郎が答えるよりも前に、マッチョ男子――権田橋 陸斗が勝手に自己紹介をした。先程、楓の名を口にした所から予想できるに、彼は楓のクラスメイトなのだ。


「お、おれは沢渡 響」

「……え、榎本 亮」

「声が小さいぞぉ! 元気よく挨拶せんか! ガーッハッハッハ!」

「糞めんどいな、こいつ」


 熱血系のキャラのような振る舞いをする先輩を前にして、響が素直な感想を口にしたが、全く気付かれる様子もない。


「気にするな、このゴリ先輩は脳筋だからな」

「お、おう……気にしない事にするわ」

「それよりもぉ! あそこにいる人達を逃がすとかなんとか言ってなかったか! うん!?」


 響が宗士郎に習い、キャラが濃い先輩を受け入れると陸斗が鼻息荒く詰め寄ってくる。


「あ、ああ……障壁張ってるクラスメイトが限界に近いから、修練場まで退避させるつもりだ」

「ならその間、俺が〝コイツ等〟と魔物と〝やる〟! お前は早く行ってやれ!」

「ヤる? はっ!? まさか、アンタ――!?」


 頼り甲斐のある事を口にする陸斗の言葉に反応した響が、わなわなと震え出して叫んだ。


「やっぱり、俺達の身体が目当てだったのかっ!?」


 身をよじる響の叫び声に周りの生徒がどめよき出す。


「違うわい!!! やっぱりってなんだ!? オイ!? いくら俺が良いオトコだからといって、そんなひがむ事ないぞ! 後輩!」

「アンタの身体に嫉妬してるんじゃねえよ!?」

「ならやはり、俺の身体が目当てなのか!?」

「うーん、ぶっ飛ばしたい…………!」


 脈絡もなく勘違いをする陸斗。


 変な方向に会話が転がるわ、話が繋がらないわで響が拳を握り締めて憤慨する。


「つまんないコントするんじゃねえよ! じゃあ権田橋先輩、この二人を頼みます」

「おお! 任せとけ!」

「オイ待て宗士郎!! こんな変態の元に親友を置いて行くな!?」


 面倒なやり取りをする響達の都合は知った事ではない。


 宗士郎は陸斗に魔物や響達の事を任せると、みなもの元へと走った。


「よし、魔物をやっつけるぞ後輩達よ!」

「近寄ったらアンタを爆散させる!?」

「同感だぁ、もしもの時は焼き尽くす!」


 先程初めて出会った先輩を前にして、既に拒絶反応すら沸き立つ響達。まだまだ残る魔物が残っている戦場では、前途多難過ぎる言動をするのだった。





「――くぅ……っ!?」

「みなも! 大丈夫!?」

「う、うん……へーき。まだまだやれるよ、お母さん」


 響達が妙な寸劇を繰り広げていた一方、みなものクオリアは残り僅かとなっていた。頬に垂れる汗を拭い、みなもは母親に朗らかな笑顔を傾ける。


「桜庭! 今から修練場まで先導する、もう少しの我慢だ」

「鳴神君……! ……わかった、頑張るね」


 そんなみなもの元へ宗士郎が駆け付け、労いの言葉をかけるとみなもは力を振り絞って奮起した。


「君は誰だい!? うちの天使に声をかけるなんて、百億光年速い!」

「アナタは黙ってて」

「あ、はい………………」


 娘への愛が爆裂しているみなもの父親が悪い虫と判断した宗士郎に睨みを利かせる。すると、母親の方が父親を諫め、宗士郎へと話し掛ける。


「たしか貴方は居候させてもらってる家の…………」

「はい、鳴神 宗士郎です。今は俺についてきて下さい、桜庭はもう限界です」

「わかったわ」


 みなもの母親から了承を得た後、他の保護者達にも事情を説明し、宗士郎は降りかかる魔物の脅威を全力で払いつつ、修練場まで彼等を引き連れていく。


 幸いにして、みなもの限界が訪れる寸前に修練場に到達できたので、無事事なきを得た。


 修練場に到着してから数分後…………。


 校庭で戦っていた響の連絡で、全ての魔物を討伐した事が知らされた。


 だが、保護者達をすぐに返す訳にもいかなかった。


 突発的な魔物の出現。またいつ魔物が現れるかも解らない中、力もない彼等を家へと帰すのは危険過ぎると判断した宗士郎は学園長である宗吉に頼み、保護者達を学園に一日逗留させる事になったのだった。





様々な脅威が降りかかるも、無事に魔物の軍勢を討伐し終えた宗士郎達。何が起こるかも解らない中、帰すのは危険なので様子見として一日、保護者達を学園で保護する事になったのだった。



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