第六十五話 価値を決めるのは己であり、近しい人
――深く……より深く。
水底に……意識の深層に落ちていくような感覚。
冷たくあれど、凍える事はない……だが、何故か寂寥感に胸が締め付けられる。
「俺、は……確か、元春を斬って、それから……」
それからの記憶がない。あの後、どうなったのだろうか。残してきた仲間の事を心配する。
現状を完全に把握する間もなく、やがて、ゴトンと水底へと落ちた。すると、そこから水面を覗けば、誰かの姿が感情と共に流れ込んできた。
「これは……記憶、か……?」
誰かの顔は霞がかかったように見えないが、その分を流れ込んできた感情と次第に聞こえてきた声が補ってくれた。
『ア、アナタッ! 元春が光に……高熱を出して……!?』
『落ち着けッ、落ち着くんだ。少なくとも、この地域にいる子供達全員が同じ現象に見舞われている。今はなんとか乗り切るしかない!』
二人の、若い夫婦が焦燥に塗れた様子で一人の子供を抱いている。
やはりというべきか、会話の内容からもわかるように子供は元春だった。年は小学生低学年か高学年くらいの。
そして、これは過去だ。
『日ノ本大地震』が起き、日本中の子供達が神々しい光に包まれ、高熱状態になった時。宗士郎も含め、妹や幼馴染みも同じ現象に苛まれた十年前のあの日だ。
「(心配、しないで……おとうさん……おかあ、さん)」
両親の心配する声が聞こえていたのだろう。元春の家族を想う感情がなだれ込んできた。そのまま水面の映像が波紋が起きて変わり、今度は元気に走り回る元春が映し出された。
『良かったっ、本当に……良かった……!』
『ああ、峠は越えたようだ。元春はもう安心だ。しかし、あの光はなんだったんだ?』
『もうっ、いいじゃない。元春が元気になったんだから』
『それもそうだな!』
元気になった、という事はあの日から一、二週間後だろう。まだ異能の存在に気づいていない。両親も、おそらく元春も。
また、水面の映像が変わった。
『そういえば聞いた? ニュースで僕達と同じ現象になった子供達が、火とか風を操ったり、身体を固くしたりしたらしいよ』
『えっ!? それって、エック◯メンじゃん! 俺もなれる! スッ◯マン! スーパーパワーッ! フゥ〜〜!』
まだ幼いが、元春。それと近所の子供だろうか? 和人ではない誰かが異能の事を伝聞している。
この時の元春はいつか自分も異能の力が開花するはず、そう期待に胸を膨らませている。まだ見ぬ夢があったのだろう。
多少、勘違いしている点もなきにしもあらずだが。
そして、また波紋が広がり、映像が変わった。
場所は校庭。それも翠玲学園中等部。翠玲学園は中高エスカレーター式を採用しているから、今も変わらない風景だ。
元春が見つめるのは、
『見てくれ! 俺の異能で作ったスライム爆弾! 爆発するとスライム塗れにするっ優れものだっ!』
『そんなつまらない事をする暇があったら、もっと技を磨け。刀剣召喚ッ』
『そうだよ、響さん。前みたいにいつ魔物が出てくるかわからないんだから』
『これだから、響は。人間の恥ね』
『ちょ!? みんな酷くない!?』
中等部、前期課程の宗士郎と馴染みのメンバーだった。全員、それぞれのやり方で異能の質を高めている。
「この頃から元春は俺達を知っていたのか。っ、この感情は……」
元春の視線は羨望を孕んでいた。
流れ込んでくる気持ちはただ、
『羨ましい』
人が持つ、ごく普通の感情だった。
基本的に異能は高熱に侵されてから、一、二週間の峠を越えると発現する。つまり、この時点で異能力者か非異能力者かわかる。
元春は後者、非異能力者だった。
異能が発現するのに条件があったのか。それとも神に選定されなかっただけなのか。
ただ、ひたすらに元春は異能力者を羨ましがった。そして、それは次第に嫉妬の感情が入り混じるようになる。
再び、雫落ち、波紋が広がるように映像が変わった。
『落ちこぼれのお前達はいる価値なんてねぇんだよぉ!』
『……ぅぅっ』
『……っ』
今度は高等部、後期課程の時だ。
元春と和人がまだ酷い考えを持っていた亮に蔑まれ、暴言を吐かれている。
そんな事はない……そう口にしたくとも、元春は自分の心の弱さに甘え、自覚し、口答えをしなかった。
だが、この時から元春は亮に殺意を抱くようになった。
『いつか、いつか、見返してやる。見下されるだけの存在じゃないって……いつか…………!』
異能力者である亮に対して、そう思うようになってしまったのだ。
「……!? これは……っ」
グラリと暗転し、突如映像が激しく切り替わり始める。舞台は小道具を素早く片付けるかのように消え、再び舞台は整い始める。
先程と違い、ゆっくりと見て感じる事が出来ず、絶え間なく映像が変わり、感情が流れ込んできた。
『なんで、俺には異能が発現しなかったんだ……』
『なんで、俺だけこんな目に。俺が何をしたって言うんだ。ただ、異能を授かったか授からなかっただけの違いなのに』
『落ちこぼれ、か……俺は本当に役立たずなのか……? 違うっ、俺にも……俺にも何か出来ることがあるはずなんだ!』
『今更改心したって遅いんだよ!? 今まで耐え続けた俺はっ、俺達はどうなるんだよ!?』
悔しさ、辛苦、葛藤、憤り。
湧き水が半永久的に湧いて出るように、マイナス方面の――元春の万感の思いがまるで毒のように宗士郎の心を侵食していく。
食い破るような痛みを覚え、四苦八苦。
「っ、はあ……はあっ……」
ふと、気付けば感情の波も映像の切り替わりも、不思議と潮が引くように終わっていた。
「……っ、これは元春の記憶であって、記憶じゃない。精神干渉の一種か、いや、元春は暴走状態。無意識のはず……」
整理する間もなかった今の状況を整理する。
おそらくは先の戦い、元春のオーラ――クオリアの暴風と宗士郎のクオリアの刀身が交わり合い、結果偶然的に意識がリンクしたのだ。
クオリアは脳科学から引っ張った言葉らしいが、詳しくは覚えてない。だが、異能が感情などの振り幅に関係するとされているなら、ぶつかった際に感情が伝わったのも頷ける。
一方的な精神世界の超越、または連結。超えたり、繋がったのならば、何故元春の意識がここに存在しないのか?
この現象を解明するのは骨が折れそうが、ただ一つ言えるのは、
「元春の気持ちが痛い程伝わってくるな」
感情が呼吸をするように流れ込んでくるという事。幸か不幸か、今この現象に見舞われた事を天に感謝しよう。
「?」
そろそろ戻って、元春を斬らなければ。そう考えていると、何やら背中が、というより背中に接している地面がやけに冷たい事に気がつく。
海か水の底のように感じるこの精神世界。全身が冷たく感じるというなら、説明がつくのだが、ふと違和感に気付いた。
「なんだ……? ここだけ砂じゃなくて、黒い鏡のような……」
今気付いた水底は一面砂で埋め尽くされていたのが、背中の部分だけマジックミラーのような物がある。今は上が明るく、マジックミラー側が暗い……はずなので、中は見えない。
だが、無性に気になった宗士郎はその鏡を叩き割った。精神世界だから、これくらいはできるだろうと。
「!? ぐうぅぅ!?」
瞬間、おぞましい程の負の感情が濁流のように押し寄せてきた。〝負〟の意識程度ではない、怨嗟が募りに募った、もはや一つの集合体――〝邪悪〟そのものだ。
何故、元春の意識からこれ程までの悪を感じるのか。何故、元春の意識から他人の意識を感じるのか。
その答えは、自ずと分かる事になる。
途端に映像と感情が怒涛の勢いで流れ込んできた。
『――見下していたのも操られたのも俺の意思が弱かったせいだっ! 俺がっ、俺がちゃんと自分を持っていれば、最初からこんなことにはならなかったんだ!!!』
今度は俯瞰した状況ではなく、元春本人の視点。その目で捉えるのは、後悔と自責の念を抱き、拳を床に叩き付ける亮だ。
この台詞は流石に聞き覚えがあった。元春との模擬戦が終わった後、修練場の更衣室で亮と話していた時のものだ。
『(プライドの高い榎本があそこまで取り乱すなんて……っ)』
非異能力者を見下していた程に、異能力者である誇りを抱いていた亮。普段の様子とかけ離れた、元春本人以外での感情の吐露。
流れ込んでくる感情からもわかる。
本当に反省しているのだと、その時の元春は思ったようだ。
そして、亮の〝対等な友達でいたい〟という本心の発露と宗士郎とのやり取りを見て、亮は更衣室を後にしている。だが、そのすぐ後の事だ。
『――でも、元春は魔物との戦闘には連れていけない……』
宗士郎の、自分の台詞。それが楔となり、元春をその場に縫い付けた。
ただ、なんで……なんで!? と疑問と戸惑いが元春の心に釣り針のカエシの如く引っかかる。
ようやく元の関係に戻り、共に戦場を駆け巡れると思っていた矢先、宗士郎の一言が元春の期待を地に落とした。
あの時の宗士郎は元春に戦闘、精神面での不安要素があったが為に、そう口にしたのだ。だがそれは元春の気持ちを徐々に負へと向かっていく。
「俺の所為、なのか……。だが、あそこまで邪気の篭った感情が流れ込んできたのに、本当にただこれだけか……?」
鏡を叩き割った時に駆け巡った負の感情。映像の記憶を見る限り、〝負〟よりも〝正〟の感情のはず。今もなお、流れ込むのは負の濁流だ。
その疑問を指し示すかのように、元春の視線は更衣室を出たすぐの通路、否人物に向けられる。
「!? 牧原!」
元春の視線の先には学園の教師兼研究者。諸悪の根源にして全ての元凶、牧原 静流だった。静流が関わっている以上、この先の出来事で元春に何かあったのは自明の理だ。
『――ああ、なるほど…………裏切られたわけですか。ククッ……』
成り行きを具に観察していると、静流は突如、口調を変えて、不敵な笑みを浮かべた。
急変した態度に元春も、間接的に見ている宗士郎でさえも背筋がゾッとした。そのまま畳み掛けるように静流は悪意ある言葉で元春の不安定の心を抉る。
差し向けられた言葉は図星であり、また全てが虚偽でコーティングされたもの。聞きたくなかった言葉の雨に元春の身体が、心が怯えている。
耐えられなくなり、元春が膝を折った刹那。静流にアイアンクローの如く、頭部を鷲掴みにされる。激しく恐慌し、抵抗するがビクともしない。
『我と彼奴の計画の礎となるがよい…………』
一人称も変わり、さらに不気味な圧力を生み出す静流が左腕から蛇影が湧き出し、元春の体内へと侵入していく。
『あ゛がぅお゛お゛お゛お゛お゛お゛あ゛あ゛あ゛ッ?!!!?!??!』
「〜〜〜〜っ!? ぅぐぁぁああッ!?」
蛇影が侵入し、元春の心を蹂躙し始めると、思わず吐き気を催す程の苦痛と嫌悪感が宗士郎を襲った。感情と視点が一方的に共有されている影響か、元春の体験したものが宗士郎にも牙を剥いているのだ。
やがて、蛇影が侵入し終わり、元春が人形のように横たわる。静流は取り出した感覚結晶のイヤリングを元春へと付ける。
以前の静流の話なら、このイヤリングが負の感情を最大限に高める。これで反天する条件を満たした訳だが、府に落ちない点がある。何故、蛇影を忍ばせたのか、という事だ。
『…………はい、我が君。復讐する、奴らに……落ちこぼれじゃない俺の力を、奴らに認めさせる……』
静流が指示すると元春は立ち上がり、冷酷に復讐を誓う者となった。その間、元春の感情がなだれ込んでこない事に気付く。
そうして合点がいった。
なだれ込んでこないのは、元春の気持ちや感情、心が蛇影に締め付けられ、封印、あるいは上書きされたからだ。偽物の情報で覆い、その上で憎悪の感情に書き換える。
おそらく、精神世界の黒い鏡も蛇影の作り出した錠前だったのだろう。
現実の元春が何故あんなにも、怒りを前面的に押し出し、復讐心を抱いていたのかようやく理解できた。
「!? なんだっ!?」
短いようで長かった精神世界の旅は突如、終わりを告げる。どうやら、タイムリミットらしい。
「ッ!」
舞台が崩れていく最中、その中心にいた静流の眼が、精神世界に潜り込んだ異物である自分を……瞳の奥を見ていた気がした。
それを確かめる間もなく、沈んでいた意識が水底からどんどん引き上げられ、サルベージされるように水面へと釣り上げられていった。
「――ッ!? チィッ!」
「ゥガアァァァアアアッ!!!」
サルベージされた意識は現実へと舞い戻り、元春のオーラと宗士郎の刀が反発するように吹き飛ばされる。
舌打ちをしながら、サマーソルトキックを放つように何度も宙返りを行い、体勢を整える。
「宗士郎ッ!? 斬れなかったのか……! 良いのか悪いのか。ともかく、無事でよかった!」
「だなぁ。だが、これで振り出しに……つーかぁ、バッドエンドに直行しつつあるぜぇ」
体勢を整えると、響が敵を倒せなくて残念だったのか、安心したのか微妙の相好を浮かべる。対して、亮は宗士郎の無事を喜びながらも、冷静に現状を見据えていた。
「わかってるっ。さっきのを、一か八かやるしかない」
「さっきのって、宗士郎と同じ事をか!?」
「ある意味ではそうだ。なにも、同じ武器で攻撃しろって事じゃない」
現状から察するに、先程の精神世界での時間の流れは刹那的なものだったという事だ。本当に一瞬。でなければ、今頃元春の溜まりに溜まったエネルギーが爆発し、全員御陀仏のはずだ。
さっきの斬撃で仕留める事ができなかった以上、他のどの攻撃も元春には届かないとみていい。反天の条件を満たしているイヤリングを破壊したとしても、負の感情の増幅が止まるだけで、暴走が止まる訳でもない。
命を刈り取る以外に方法があるとすれば、
「全員! 自らの異能と感覚武装に気持ちを! 〝元春を助けたい〟という想いを込めろッ!」
先と同じように、クオリアの力を信じ、元春の意識に干渉し、暴走の渦中にいる元春を救い出す――それしかない。
「はぁ!? 何言ってんだ!?」
「ボサッとするなッ! 夢見! 田村! 和人! お前達もだ!」
「「「う、うん!?」」」
マジで意味がわかんねえ!? と疑問に思う響を一喝し、背後に控えていた三人にも指示を出す。
「俺が元春までの活路を開く。お前達は確実に攻撃を当てられる距離まで詰めて、同時に元春を叩け!」
「意味はよくわかんねぇが、それで佐々木を救出できるならやってやるぜぇ!」
元春に溜め込まれたエネルギーが暴発するまで、もう時間はない。今から行うのは一種の賭けだ。先程と同じような現象を起こせる可能性は低い。
だが、不思議と心が、想い次第でなんとかなると本能で感じた。
「――行くぞ、皆ッ!」
「「おう!」」
「「「うん!」」」
裂帛の気合と共に宗士郎が元春に向かって、駆け出す。それに引かれるように仲間達も応え、走り出す。
「うぉおおおおお!!!」
雛璃を助けられなかった悔しさ、苦しみ。同じ思いは二度とするものか、と地を踏みしめ、オーラの波状攻撃を刀で蹴散らす。
「ゥガアァァァアアア!!?」
「――戻ってこいッ、元春ぅぅぅぅーーーー!!!」
「「「「「はぁあああああーーーー!!!」」」」」
言葉に感情を籠めて、それぞれの武器を手に。
切り開いた友への道を駆け抜け、宗士郎達の魂の一撃を。友を救わんとする友情の一撃を。
未だ闇に呑まれたままの友人へと叩き込んだ。
「――――ッ! ――――ッ!」
「ぅく……っ…………」
誰かの、複数の声が木霊する。
懐かしくも、温かい。だけども、拒絶した大切な友人達の声。
あの人に精神を操られたあの時から、今の今まで、ずっと意識はあった。だが、身体という殻に封じ込められた意識は殻を破る事あたわず。
偽物の……己の悪感情が生み出したもう一人の自分が自分を守るように、二重人格の人が相方を守るように。意識は沈んでいても、まるで横で誰かの行動を見ているような感覚だった。
「おれ、は…………」
本当は復讐など、どうでもよかった。異能を持つ人が羨ましく、自らに異能が備わってなくとも、共に道を駆け抜ける事ができれば、それで……。
紆余曲折あって、歪みに歪んだ道は当初思い描いていた道からも遠く外れていた。キッカケはクラスメイトの榎本 亮だったが、原因は弱い自分にあった。
榎本 亮が謝り、友達になりたいと吐露した時、嬉しい反面……虫のいい話だ、今まで耐え続けてきた自分はなんだったのだと怒りに身を震わせていた。
その正負の感情の均衡が崩れた所を敵に突かれ、友達に牙を剥く事になってしまった。
「情けないっ、なあ……」
「――そんな事はない。思考を放棄せず、考え続けた元春は立派だ」
「!?」
元春の意識に介入してきたのは宗士郎だった。
「ようやく、辿り着けた。何度も呼びかけたんだぞ? 仲間達全員で」
「お、おまえ……鳴神、どうして……」
「どうしてって。助けに来た」
「俺みたいな奴を今更助けに来たのか?」
「そうだ」
「何の価値もない、この俺を?」
「違う。価値はあるッ」
「ッ!?」
宗士郎はずっと肯定したかった事を言い放つ。
「誰もが理想の自分を追い求め、そうありたいとする。それが人間だからな。だけど、理想に追いつく前の自分を否定するなよ。自分が気付かなかった己の価値を認めてくれる人がいるんだから」
「俺の……価値?」
「親友の和人。クラスメイトの夢見、田村、響、榎本。そして、お前を育ててくれた家族。もちろん、俺もだ」
異能などなくとも、特別な能力さえなくても。見てくれる人いる。気付かなかっただけで、いるものなのだ。
「ただ、過ぎ去っていく一秒一秒の時を、自分で見つめ、考え、選択し、自分の思い描いた道を生きていけばいい! 異能を持たない自分を! 弱いと思う自分を受け入れてやれ! 認めてやれ! 愛してやれ!」
光陰矢の如し――速く過ぎる時間の中で、自分という存在を、己を肯定してやればいい。
「そうすれば、誰かがお前を見てくれる! 誰かがお前を価値を認めてくれる!」
「ぁっ、ああ…………っ、ああああ!」
膝をつき、嗚咽を漏らす元春。
最初から存在価値を認めていた者、そして亮のように新しく価値を認めてくれた者がいる。
本当は気付いていた事を思い出し、心の泣き叫ぶ限り、泣きはらした。
「帰るぞ。皆が呼んでるぞ」
精神世界に残響するように響く声があった。
『元春ーー!? 戻ってきてくれー!?』
『早く、面倒な事は終わらせてゲームでもしようぜ!』
『佐々木君! 戻ったら伝えたい事があるのー! だから、戻ってきてー!』
『佐々木、君……!』
『佐々木ぃ! 俺はお前と! 皆とやり直してぇ! だから、戻ってこいッ』
「和人、響、田村、夢見、榎本……!」
聞こえてきた仲間達の声が次第に元春の意識を闇から引き上げる。
「こんなにもお前を待つ人がいるんだ、早く戻らないとな?」
「ああ!」
仲間達の声に導かれるように、宗士郎は元春の意識を掴み上げていったのだった。
弱いと思う自分は己が思う以上に価値がある。
否定せず、肯定し、自愛する。
何もないと決めつけるのではなく、今の自分を認め、その上で生きていけば、必ず誰か……自分を認めてくれる人が現れる。
感想・誤字・脱字などがございましたら、お願いします!
諸事情により、3日おきに投稿するはずの次回の話、『第六十六話』を28日に上げるのが厳しいので、一日ずらした29日に投稿します。
読者の皆様! 申し訳ございません!




