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Heroes Guild Online  作者: ムムム
新メンバー
99/100

新メンバー4 ニードルタイガー

 森の奥に大きく開けた場所がある。

 その場所の中央にその魔物は存在していた。


 鮮やかな青色の体毛のその虎は臥して寝ているようだがその時点で俺たちの腰の位置と変わらないほどの高さに頭頂部が有り立ち上がればどれだけの高さになるかは判らない。

 だがそんなニードルタイガーを象徴付ける特徴はその背に無数に生えている針だ。

 頭部から首筋、背中にかけて隙間なく生えていた。


「ハリネズミの虎バージョンってところね」


 ミニッツの感想はその見た目をそのまま表していた。デカイという部分を除けば。


「テスター時代では最高ランクは4までだったわ。そのランクのプレイヤーが30名集まって何とか討伐って強さね」


 つまり今の自分たちよりランクが上のプレイヤーで倍の人数をそろえなければ勝てない相手か。

 そういえば虎は自分の縄張り内であればどんなところでも寝ると言う。

 それは虎が天敵の居ない絶対強者だからこそ出来ることらしい。

 今目の前に居るニードルタイガーも広場のど真ん中という自然界の動物なら危険な場所として避ける場所を昼寝の場所としている。それだけでもこの森で一番強い存在は自分だと主張しているようだ。


「FAブロックさえ成功させれば10人程度の討伐人数で勝てるようになるんだよ。ドロップアイテムの質は落ちるけどね。尤も・・・成功出来ればの話だよ」


 モンドのレムを見る目が少し・・・いやだいぶ厳しい。

 防御の専門家、それも最高峰を目指すモンドからすれば今回のレムの話は少し思うところがあるんだろうな。


「それでどうするんだ」

「基本的には正攻法。つまり真正面からの防御になります。なので出来れば防御系のバフがあれば姉さんに掛けてほしいんですが、確かないんですよね」

「一応私が持っているわ。それにアレの攻撃力を下げることも出来るわよ」


 アレと言いながらニードルタイガーをミニッツが指さす。


「え?ミニッツさんってバフもってたんすか?」


 俺も初耳だ。


「前に攻略したクイズダンジョンでのスキル報酬がそれなのよ」

「ああ、弱者の迷宮か」

「正確にはバフスキルじゃないんだけど。今回はそれを使えるわね」

「じゃあそれでお願いします」


 ニードルタイガーが反応しない様に森に隠れながら準備を始める。

 まず装備の見直し。

 レム自身もそうとう装備を固めているが今回は追加がある。


「どうぞ~ディフェンスネックレスですよ~。これに私のスキルで上乗せすれば今付けているのよりも防御を上げられますね~」

「ありがとう。借りておくわ」


 うちのチームには防具士が居ないのでできるのはこれぐらいかミニッツのバフに関していうと。


「私のスキルはフィールドに影響するのよ。敵味方関係なく防御を上げちゃうわ。だからタイミングを見てから掛けるから気にしないで・・・ちゃんと間に合わせるから」


 準備は整った。


「さあ、この天才人形士レムの艶姿!とくとご覧あそばせ!」

「姉さん艶姿は違う」


 使う言葉に不安はあるがその堂々と臆さず巨大な虎に立ち向かう姿には憧れるものがあるな。


 ちなみにPT構成はこちら。

・第一PT

リーダー 封札士 セン

メンバー 呪術師 ミニッツ

メンバー 魂魄士 ノット

メンバー 武器士 キア

メンバー 棍術士 クルクル


・第二PT

リーダー 戦盾士 モンド

メンバー 人形士 レム

メンバー 水魔法術士 スイ

メンバー 封札士 アンズ

メンバー 闇魔法術士 ローズマリー


・第三PT

リーダー 斧士 レト

メンバー 槍士 ヒナゲシ

メンバー 弓士 トイス

メンバー 剣士 クノイ

メンバー 装飾士 リンドウ


 こんな感じだ。

 この3PTをレイドPT登録して連結させる。これで共闘ペナルティは無くなる。

 見て解ると思うが重要なのは第二PTだ。

 このクエストは前提としてFAブロックを成功してもらわなくてはならない。

 その為に第二PTにはFAブロックの成功確率を高めるとともに成功後・・・のケアも必要になるのだ。


 当り前の話だがFA攻撃を受けた場合そのプレイヤーのHPはほぼゼロの状態だ。

 そしてニードルタイガーのヘイト値は一番高い状態になる。

 瀕死のところに2撃目を受ければ死に戻ることはほぼ確実だろう。

 そうならない為に二人しかいない回復要員を二人とも入れ、本職の盾職タンカーであるモンドによって素早くヘイト値を奪うようにする。

 それによってレムをフォローしようというわけだ。


「前提としてFAブロックが成功しなきゃ話にならないわよ。何度も確認するようだけど大丈夫なんでしょうね」


 スイもレムの自信に不審がる。テスター組はニードルタイガーの攻撃を実際に見ているようなのでそのような気持ちになるのだろうな。


「フフン、これを見てもまだ不安になるのかしら。おいでませ人形たちよ。起動!」


 だがそんなレムの掛け声と共に10体の人形が出現する。


「10体!そんな無茶な!」


 人形の10体操作。ハッキリ言って無茶苦茶だ。

 人形士は他のテイム職と違ってある特徴がある。

 その特徴とは―。


 召喚数に制限が存在しない。


 少し説明をしよう。

 合魔物の登場でテイム職に分類されるようになった技能職だがその呼び出す種類や呼び出せる数にそれぞれの特徴が出ている。

 従獣士は召喚コスト、騎獣士は大型を1体まで魂魄士は幽体型を1体と魂型を2体までと数の制限。

 封札士に関していえばMPコストの上限が制限になる。

 だが人形士に関していえばその制限が存在せず極端に言えば100体でも呼び出せる職業なのだ。


 では何故俺たちが10体召喚をしたレムに驚いたかというとそれは人形の操作方法。つまり思考による完全手動にある。

 人形士は確かに召喚数に制限がないが呼び出せたからと言ってそれらが十全に動かせるかというとそんな訳がない。

 ある程度マクロを作って制御はできるが人形士が操る人形はマニュアル操作なので100体呼び出せたとしてもそれらを同時に操作するのは無理な話だ。 

 なので通常ではプレイスタイルに合わせて1~3体ほど呼び出すのが普通になる。


 それなのにレムは10体同時に召喚呼び出した。異常ともいえる行為だ。

 マトモに戦えるとは思えない。


「・・・10体も呼び出すなんて、戦えるのかしら」

「さあ、広がりなさい」


 スイの心配をよそにレムは10体の人形に声を掛け5体ずつ左右に広がりニードルタイガーへの道を作らせる。


「さあ準備は出来ましたわ。ずばっと行きますわよ!」


 レムは宣言と共にニードルタイガーの前に進み出て攻撃範囲に入る。

 それを受けて今まで寝ていたニードルタイガーが起き上がりレムに向けて攻撃態勢に入る。


「ガァァァァァ!!」


 ニードルタイガーの雄叫びと共に全身の毛と針が激しく逆立ちレムを睨み付ける。


「さあ始めるわよ!」

「よくわからないけど始めていいのよね。スキル発動「フィールドパズル」」


 レムの宣言を受けてミニッツがスキルを発動させる。

 そうするとミニッツの手の中に一つの物体が現れる。あれは確か。


「パズルキューブか」

「ええ、そうよ・・・白色黄色で発動「守備領域」」


 ミニッツはあっという間にキューブの2面をそろえスキルを発動させる。

 その瞬間辺り一面に黄色い光が広がっていく。


「この光の中に居ればディフェンスが上がるわよ。敵味方関係なくだけど」


 スキルの効果を説明しながらミニッツは次の行動に入る。


「次はこれね。付与攻撃低下」


 ミニッツが自身の武器に付与呪術を掛けニードルタイガーを攻撃、当たった瞬間付与が成功したエフェクトが発生してニードルタイガーの攻撃力が低下したことが判る。


「成功したわよ、後は貴女次第」

「まかせなさい!」


 ゆっくりとだが確実に力を貯めていたニードルタイガーがレムに向かって突進攻撃を繰り出す。


「ガァァァァァァ!!」

「はぁぁぁぁぁぁ!!」


 大盾を構えたレムとニードルタイガー大きな音をたててぶつかり合った。

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